内部告発サイト「ウィキリークス」は、アメリカ大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン氏が9月11日にアメリカ同時多発テロ(9.11)事件の追悼式典で体調を崩して途中退席した件で、倒れた理由を投票形式で推測させるツイートを投稿し、その後削除した。
ウィキリークスは、クリントン氏が自身の健康問題について真実を公表していないという陰謀論を煽っている。BuzzFeedのアンドリュー・カチンスキー記者は次のようにツイートした。
これは恥ずかしいことだ、ジュリアン
.@wikileaksはツイートを消した。もちろん、公開性と透明性の観点からツイートは保存しておいた。
【ウィキリークスが削除した投稿】
ヒラリー・クリントンが土曜日に倒れたこと、その前に激しく咳をしたり、おかしな表情や動きをしていた原因として、一番考えられるのは、
アレルギーや性格の問題
パーキンソン病
メニエール病
頭のケガによる合併症
クリントン氏は11日の9. 11同時多発テロ事件の追悼式典の最中、突然退席した。会場に居合わせた参加者の一人が、苦しそうに車まで歩いてゆくクリントン氏の姿を撮影していた。その後、担当医師が軽い肺炎であると発表した。
クリントン氏は現在68歳。2015年には担当医師の所見を公表したが、そこでは彼女が現在は健康であること、以前話題になった脳震盪と血栓による後遺症は全く残っていないことが明言されていた。しかしそれでも、クリントン氏を批判する勢力は「彼女がさまざまな病気を患っている」と主張し、女性は政治の世界に残れるほど強くないという、性差別的な非難を繰り返してきた。
ウィキリークスの投稿では、クリントン氏の健康面についてさまざまな陰謀論のサイトが取り上げている4つの説が投票項目として挙げられている。例えば、彼女はパーキンソン病か多発性硬化症を患っているという実証されていない主張だ。ウィキリークスによれば、それらは「最も出回っている説のトップ4だ」という。
ウィキリークスはTwitterに投稿されたクリントン氏がよろめく動画に注目した。その動画によると、クリントン氏は「倒れる前によろめいて」おり、彼女の「足は引きずられ無反応であり意識がないことを表して」いて、「無反応のまま周りの人々に引きずられていた」と主張した。ウィキリークスを運営している「サンシャインプレス」のスポークスマンはハフポストUS版に、その動画は、報道機関が報じた内容とは異なっていたと話した。
このスポークスマンは、「将来の大統領の健康は重要な一般市民の関心事であり、ウィキリークスが暴露した政府資料の中でも言及されている」と述べた。
「AP通信、ニューヨーク・タイムス、MSNBC、CNNを含む多くの報道機関がこの件について偏った報道をしている。いろいろな角度からの動画を見たら明らかにクリントン氏が倒れ、足がぶらんとしたまま周囲に抱えられ、引きずられて待機していたSUVに乗り込んでいたのがわかる。それなのに、『彼女はつまづいた』と見出しをつけた」
ウィキリークスはまた、「クリントン氏の『命にかかわる』静脈洞血栓に関する内容を含む、クリントン氏の側近ヒューマ・アベディン氏からのメール」と称するツイートを投稿した。しかし、アベディン氏のメールを紹介した2013年のFOXニュースでは、こう伝えられていた。「今は数週間服用している抗凝血薬が効いており、発作やその他の深刻な病状が発生するリスクは劇的に低下した」
ウィキリークスは自らを、ありのままの真実を伝え、他のニュースメディアの倫理が欠如した報道を定期的に糾弾する組織だと宣伝している。
「そのツイートは私たちの基準にそぐわないと感じたため、削除された。というのも、クリントンの病気に関する問題には、この4つの項目以上の可能性があるからだ。なので、その中から一つを選ぶことは恣意的で推測となってしまう」と、サンシャインプレスのスポークスマンは説明した。
7月の民主党全国大会で、民主党幹部がクリントン氏に肩入れしていた約2万通のメールを公表して以来、ウィキリークスは、アメリカ大統領選挙で重要な役割を担ってきた。このメールでは、民主党幹部がバーニー・サンダース上院議員の大統領選挙運動を批判していることが明らかになり、同委員会のデビー・ワッサーマンシュルツ委員長が辞任に追い込まれた。
ウィキリークスの創設者で編集長のジュリアン・アサンジ氏は、共和党の大統領指名候補のドナルド・トランプ氏とクリントン氏のどちらかを選択するのは、"コレラと淋病" のどちらが好きかと訊ねるようなものだ、と述べている。しかし、性的暴行容疑 (彼は容疑を否認)をめぐる身柄引き渡しを回避するため、2012年6月からエクアドル大使館で生活しているアサンジ氏は、特にクリントン氏への嫌悪感を口にしている。アサンジ氏は、クリントン氏が内部告発者に対して非協力的で、また、アメリカを彼の言う「終わりなき愚かな戦争」に駆り立てるエスタブリッシュメント(既得権益層)の一部だ、と考えているようだ。
ウィキリークスのTwitterアカウントは、クリントンを攻撃する話題に集中している。8月、ウィキリークスはクリントン氏が民主党全国委員会(DNC)の情報漏洩に関わったとみられるDNCの職員が死亡した銃撃事件に関与していたという根も葉もない情報を流し、クリントン氏を有罪判決に持ち込める情報の提供に2万ドル(約200万円)の報酬を申し出た。
一方ネットユーザーたちは、ウィキリークスがトランプ氏に対しては執拗に攻撃していないと気づいている。「もし #WikiLeaksが自分のことをジャーナリストだと思っているのなら、クリントンの健康問題について投稿するのに、トランプの人種差別やファシズムについては投稿しないのは、批評として公平なやり方ではない」と、あるジャーナリズムの教授は指摘している。
ウィキリークスは、「追跡するに足るクリントン氏の健康状態に関する情報は持っているが、トランプ氏の人種差別に関しては何も言うことはない」と返答した。
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
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