シリア・アレッポの「救急車の少年」を「悲劇のポルノ」にしてはならない

オムラン君の写真を漫然と見つめるのではなく、行動をとるきっかけや動機となるようにしよう。

【閲覧注意】この記事には、子供の負傷した写真や遺体写真が掲載されています。

すでにあなたのニュースフィードはシリアのアレッポで爆撃され、血と埃にまみれて呆然とする男児の顔で溢れているかもしれない。私のニュースフィードもそうだ。彼は「救急車の少年」と呼ばれている。

ぼーっと眺めているだけでいいのだろうか? こうした凄惨な画像を自分も投稿し、怒りを表明せずにはいられないだろう。

フォトショップで埃と血を取り除くと、この少年は自分の子、あるいは甥、孫、すぐそこの近所にいる子と同じような感じだ。

アレッポ(シリア)-8月17日:救急車の後部座席に一人で座っている負傷した5歳のシリア人少年オムラン・ダクニシュ君。オムラン君は2016年8月17日、ロシアまたはアサド政権軍によるアレッポ近郊のカテージの空爆で負傷した。

少年の名前はオムラン・ダクニシュ君。CNNのキャスターが涙を流しながらこの悲劇を伝えた。年齢は5歳。髪型はかわいらしいマッシュルームヘアだ。ニューヨーク・タイムズによると、アレッポにあるオムラン君の自宅は17日夜に空爆で破壊され、捜索隊に救出されるのに約5時間かかったという。

救急車の椅子の上で、オムラン君は頬の血をぬぐい、しばらくその血をまじまじと見つめていた。そして、座っていたオレンジの椅子にこっそりと血を付けた。「普通の」子供が誰も見ていないときに鼻をほじってクッションにこすりつけるような感じだ。

オムラン君はアレッポ・メディアセンターの活動家グループが撮影した動画で、一度も言葉を発していない。その動画は19日朝の時点で300万回再生されている。

アレッポ(シリア)-8月17日:救急車の中で座っている負傷した5歳のシリア人少年オムラン・ダクニシュ君(中央)と姉(右)。二人は2016年8月17日、ロシアまたはアサド政権軍によるアレッポ近郊のカテージの空爆で負傷した。

ニューヨーク・タイムズによると、オムロン君は17日に治療を受けた15歳以下の子供12人のうちのひとりで、この数字は「特に珍しいもの」ではないという。

だが、この動画は人の心を打った。

総じて、目が釘付けになるような心をつかむ写真がなければ、シリア危機から遠く離れた場所にいる私たち読者は、関わりを持つことが困難だ。

それはよしとしよう。

オムラン君の写真は数日間で急速に拡散されている。シェアをして怒りを表し、悲しむ。そうした感情を持つことになる。

言葉にならない事件が起こると、それを表現する象徴的な写真が数多く出回る。そのため、今回の一件も週末までには「悲劇のポルノ」としてしまい込まれる可能性がある。

怖ろしい話や画像は多いが、私たちはほとんど気に留めることもなく、それらを消費している。

でも、だからどうだというのか?

SNSで一時的に話題を集めるだろうが、その後は忘れ去られる。

悲しいが、そう表現せざるをえない。シリア危機以前にもこうしたサイクルを見ている。

2015年9月、身も凍るような写真がシリアの絶望的な状況を世界に知らしめた。

アイラン・クルディという名の3歳の男の子が、トルコの観光客の訪れる海岸で、遺体となって発見された。母親、そして兄と共に溺れ死んだ。5年に及ぶシリア内戦から脱出するための過酷な旅の途中、船が転覆した。

写真は拡散され、いくつかアクションがとられた。

事故を調査する準憲兵隊員。この後、3歳のアイラン・クルディ君の遺体は海岸から運ばれた。場所はトルコ・ボドルムのリゾートビーチ。2015年9月2日(水)早朝。

この写真が公表された直後、地中海で「航海に不適切な」船に乗る難民を救済している団体「マイグラント・オフショア・エイド・ステーション(沖合移民救護所)」への寄付が急激に増加した。

24時間以内に18万ポンド(約2360万円)以上の寄付金が集まった。

しかし、この問題への関心は、急激に注目が集まったスピードと同じくらい、急速に薄れた。

オムラン君の場合も、忘れてはいけないのは、アレッポで重傷を負った子供を間近に見てショックを受けたのは初めてではないということだ。

2014年、スウェーデンの戦争写真家ニクラス・ハマーストロムが、シリアの傷ついた少女の写真を撮影し、ユニセフの「フォト・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。

ダニアという11歳の少女のスナップ写真だ。彼女はアレッポの道で遊んでいるときに、爆弾の破片で負傷した。兄が腕に抱きかかえると、彼女は驚いた表情を見せたが、オムラン君と同じように、運命を受け入れているようだった。

スウェーデンの戦争写真家ニクラス・ハマーストロムと、アレポで遊んでいるときに爆弾によって負傷した11歳の少女ダニア。

この話はハフポストUS版に投稿され、Facebookで1万以上の「いいね」を集めた。

多くの「いいね」や「シェア」とほど遠いのは、アレッポの子供たちが日々直面している劣悪な環境だ。

先週、アレッポ全域で4日間水が供給されなかった。ユニセフによると、子供たちの命は「深刻な危険」にさらされたという。下痢やA型肝炎が蔓延するリスクが増加したからだ。しかし、流行にはならなかった。

2015年夏にも同様の状況があったが、そのときも大事には至らなかった。

もうすぐ、Facebookのオムラン君の写真も、歯を出して笑う近所の子供や新品のバックパックの写真にとって代わるだろう。

しかしシリアでは、5万人の子供が殺されている。夏休み明けの学校の写真はほとんどないだろう。

内戦が悪化する前の2011年3月、シリアでは97%の子供が学校へ通い、識字率は周辺国の平均を超えていた。現在では、400万人の子供が学校から締め出されている。専門家の意見では、こうした状況は終わりの見えない戦争をさらに長引かせるかもしれないという。

オムラン君の写真を漫然と見つめてシェアするだけではなく、行動をとるきっかけや動機となるようにしよう。画像をシェアすることに加え、次のようなことも可能だ。

オムラン君に治療を施す組織をサポートする

シリア・アメリカ医療学会基金(SAMS)はオムラン君の治療を行っている。2015年は260万人以上のシリア人を治療した。SAMAは医療行為、医療従事者のサポート、医療制度の再建に力を入れている。SAMAの詳細と活動はこちら

シリアの子供たちの通学をサポートする

セーブ・ザ・チルドレンは、攻撃で施設が破壊されたシリアで苦しむ160万人の子供たちに食料や避難所、学習機会を提供し続けている。セーブ・ザ・チルドレンの活動と詳細はこちら

水と生活必需品を供給する

ユニセフが地元のパートナーと共に活動し、緊急事態の対応を強化して市民に飲料水を供給している。ユニセフの活動と詳細はこちら

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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