就職難や低所得に悩む若い世代に現金を直接支給する制度を、韓国の首都・ソウル市が試行した。韓国政府はこれに猛反発している。
ソウル市は8月3日、「青年活動支援費」として、計2831人に1人あたり50万ウォン(約4万5000円)を支給した。聯合ニュースによると、ソウル市に住む満19~29歳のうち、勤務時間が30時間に満たない人に、最長6カ月間、学費や交通費、食費などの補助として、月50万ウォンを支給する制度。2016年度は3000人を対象にモデル事業として実施し、将来的に拡大する計画だ。
野党系で、社会福祉や所得分配を重視する朴元淳(パク・ウォンスン)市長の肝いり事業として2015年11月、定職につかない若者を市役所でインターンとして雇用したり、シェアハウスを提供したりするなどの施策とともに発表した。
朴元淳ソウル市長
この計画が発表されると、政府の保健福祉省は「若者への現金支給は、失業の根本的な解決策ではなく、モラルの低下など副作用を引き起こす」と強く反対してきた。ソウル市には保健福祉省と協議して了解を求めてきたが、政府は反対姿勢を崩さず、ソウル市が見切り発車した形だ。8月3日、政府は「若者手当」を即時中断するようソウル市に是正命令を出した。従わなければ強制的に取り消し措置も辞さないとする政府に対し、ソウル市は裁判で争う構えだ。
韓国では15~29歳の若年層の失業率が2015年で9.2%に達している。全年齢の失業率3.6%に比べて高く、大きな社会問題になっている。
ソウル市の南に隣接するベッドタウン、京畿道城南(ソンナム)市も2016年から、満24歳で3年以上居住する計約1万1300人に対し、4半期ごとに年間計50万ウォンを支給する制度を始めている。京畿道も、18~34歳の低所得者が3年間勤続して毎月10万ウォン貯金すれば、道の予算などで25万ウォンを援助し、最終的に1000万ウォン(約90万円)を貯蓄できる独自の積立制度を始めた。
財政状況の比較的良好な自治体が、独自で現金を直接支給する福祉施策を始める動きが広がっており、政府は「ポピュリズム」と警戒。自治体独自の福祉事業を国との協議事項と定めるなど、引き締めに乗り出している。
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