「野党共闘」の後押しで告示前日に立候補を表明したジャーナリストの鳥越俊太郎氏(76)。「非核都市宣言」や「憲法改正反対」を強く訴えたが、都政の論点としてはかみ合わなかった。
「準備不足もありましたし、選挙戦中には、事実無根のことを報道されて、週刊誌の選挙妨害に近い形で、そういう影響もあったと思いますけれども、基本的には私の力が及ばなかった」
7月31日午後8時すぎにメディア各社が次々に小池氏の当選確実を報じると、鳥越氏は選挙事務所の壇上で悔しさをにじませた。
「東京こそ、憲法を大事にする自治体であって、憲法を守るというメッセージを日本中に流していく立場にある」「突然、閣議で集団的自衛権行使を容認して、そして安保法制を強行採決した。都民、国民をだまし討ちにするものだ」など、護憲の立場から安倍政権を批判した。
「どうしても私の脳裏から離れない言葉があります。『Voice』という雑誌の中で小池さんが『核武装の選択肢は十分にありうる』と述べられていたことです。今でも怒りの気持ちです。『核武装ありうる』という人が都知事になっていいのか。小池さんが知事になられたあとの言動には監視をしていきたいと思っています」。31日の会見で、小池氏の過去の発言を強く批判した。
毎日新聞の情勢調査では、こうした訴えは主に50代以上の男性に支持された。選挙演説でも集まった人は年配層が目立った。
7月25日、上野駅前の鳥越氏の選挙演説に集まった人たち
一方で急に決まった立候補で、都政の選挙公約の具体化は遅れた。「住んでよし、働いてよし、環境によし」をキャッチフレーズにした、「がん検診100%」、「都立認可保育園設置」などを打ち出したが、浸透しなかった。
選挙戦中盤の21日、『週刊文春』が、鳥越氏の女性問題を報じたこともマイナスに作用した。鳥越陣営は「事実無根」として刑事告訴に出たが、野党共闘に配慮して直前に出馬を取りやめた宇都宮健児氏は「女性の人権にかかわる問題」を理由に、最後まで鳥越氏の応援演説に立たなかった。 毎日新聞の情勢調査では、序盤で小池氏に次いで厚かった40~50代女性の支持は、2回目で減少した。
こうした影響もあり、メディア各社の情勢調査では、序盤は小池氏と競り合うと報じられたが、中盤以降の情勢調査報道の順番は「小池氏が優位、増田氏、鳥越氏が追う」となるなど伸び悩んだ。「他の予定が入っている」を理由にネット討論会に出席しなかったことも、ネットユーザーから「議論を避けている」と批判された。
共産党を含む野党共闘を主導し、鳥越氏擁立を主導したと言われる民主党の岡田克也代表が、投開票日前日の30日に次期代表選に立候補しないと表明したことも、終盤に追い打ちをかけた。日刊スポーツによると、陣営関係者は「選挙妨害か」と激怒し、ボランティア女性は私たちの17日間はなんだったの」と話したという。民進党の柿沢未途・東京都連幹事長代行は、以下のように岡田氏に怒りをあらわにした。
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