「記憶のポータル」震災で失われた場所が、Ingress→ポケモンGOで生き続ける

東日本震災前の記憶が、生き続けている。

大人気のスマホゲーム「ポケモンGO」のポケスポットに、東日本大震災によって失われてしまった場所が登録されていると話題だ。社会学者の古市憲寿氏が7月30日、石巻市に震災前まで存在していた映画館「岡田劇場」跡地がポケストップになっているとツイート。31日午後3時現在で、5000回以上リツイートされた。

岡田劇場の公式サイトによると、同映画館は江戸時代末期に建てられた「千葉座」が前身。東日本大震災の津波で流され、跡形もなくなってしまった。すでに存在しない映画館が、ポケモンGOに登場したのはなぜか? それは、前進ゲーム的存在ともいわれる「Ingress」で、岡田劇場が「ポータル」と呼ばれるスポットとして登録されているためだ。

IngressはポケモンGOを開発したナイアンティック社による位置情報ゲーム。ポケモンGOのように、実際に存在する場所に行くことを必要とする。ポケモンGOのポケストップの場所は、Ingressのポータルの位置が引き継がれている。

岡田劇場は2014年、石巻市で世界各国からIngressユーザーを集めたイベントが行われた際に、特別にポータル登録された120カ所のポータルのひとつだ。同イベントは、被災地に足を運んでもらい、現状の復興はどうなっているのか、昔はどんな場所だったのかに思いを馳せてもらうなど、現地の人とのコミュニケーションしてもらうことが主な目的だった。ナイアンティック社のジョン・ハンケCEOもイベントに出席した。

イベントを開催した団体のひとつ、一般社団法人「ISHINOMAKI 2.0」代表理事の松村豪太さんは、イベント報告動画の中で「もうなくなっているものを、あえてポータルに設定しました。ここにはこういったものがあったんだと、ゲームを通して知れる」などと話した。

この時登録されたポータル情報を、ポケモンGOでも知ることができる。今回の古市氏のツイートに、あるTwitterユーザーは、実態のないポケストップは「記憶のポータル」と呼ぶのだと紹介。この説明に、ネットからは「素敵だ」などの感想が寄せられた。

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