ヒラリー・クリントン陣営は団結を求めた。しかし、バーニー・サンダース支持者の反発は止まらない【民主党大会】

「サンダース氏が主役なのではありません」

民主党全国大会の会場外でバーニー・サンダース氏の支持を訴える抗議デモ集団  REUTERS/Dominick Reuter

アメリカ・ペンシルバニア州フィラデルフィアで開かれた民主党全国大会(DNC)の初日となる25日夜は、党の団結を示すはずだった。それは民主党の大統領候補ヒラリー・クリントン氏とライバルだったバーニー・サンダース上院議員が、共和党の候補者ドナルド・トランプ氏を破るために自分たちの支持者を一つにするチャンスだった。「我々の党大会は先週行われた共和党の党大会とはまったく違います」。クリントン陣営の選挙マネージャーであるロビー・ムック氏は25日の朝、共和党全国大会で、大統領候補者となったドナルド・トランプ氏を支持しない声が高まったことを指摘した。「対立候補だったテッド・クルーズは、ドナルド・トランプを支持しませんでした!」

しかしDNCの初日、団結している様子は見えなかった。フィラデルフィアのウェルズ・ファーゴ・センター内やストリートにいたサンダース氏の支持者たちは怒りや不満を抱え、ヒラリー・クリントン氏を非難し、彼女を絶対に支持しないと固く誓った。 サンダース氏はクリントン氏を支持しており、25日の午後、自分を支持する議員たちに、大会会場で抗議しないよう促した。実際は、大会の冒頭からサンダース氏を支持する議員のうち、特にクリントン氏に反発するカリフォルニア州選出の議員たちがサンダース氏の名前を連呼し、クリントン氏の名前が出るとブーイングを起こした。民主党の政策綱領を正式採択するときにも大きく「No」の声が上がった。 イライジャ・カミングス議員(メリーランド州選出)が「Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)」や亡くなった父の話をしている間も、議員の中には、サンダース氏が主張する「TPP(環太平洋連携協定)反対」を叫んでいた。

「バーニー、バーニー、バーニー!」という合唱、そしてブーイングが、民主党全国大会の開会前に行われる祈りの時間でさえも起きていた。

カリフォルニア議員団による25日午前の朝食会で、ナンシー・ペロシ下院院内総務、マイク・ホンダ、バーバラ・リー下院議員といった進歩的な民主党支持者たちが、クリントン氏やその副大統領候補ティム・ケイン上院議員の名前を挙げる度に、サンダース氏の名前が叫ばれ、ブーイングによってかき消された

このような混乱は、党大会が行われるフィラデルフィアでは当たり前のように起きると、サンダース氏を支持する代議員たちは予測していた。そして現在までのところ、サンダース氏自身でさえ、この反対者たちをクリントン陣営に連れ戻すことが出来ていない。サンダース氏が代議員団の会議で、大統領選ではクリントン氏に投票するように促した時、彼らは同氏にブーイングをした

クリントン氏に加担するメールを送っていたデビー・ワッサーマンシュルツ上院議員は、民主党全国委員長の辞任に追い込まれた後、25日の党大会が正式に始まる前にフィラデルフィアを去った。ワッサーマンシュルツ氏はこれまでもサンダース氏の支持者の間で非常に評判が悪く、中立であるべき党全国委員長としての言動を問われ、サンダース氏自身が同委員長の辞職を要求していた。ウィキリークスが民主党全国委員会(DNC)内部のメールを公表すると、混乱に一層拍車がかかった。このメールから、党の幹部や職員が、サンダース氏が不利になるように画策していたことが明らかになった。

党内関係者の間ではこの辞職で幕引きを図ろうとしたが、DWS全国委員長の追放くらいでは、サンダース支持者たちの不満は収まらなかった。マルシア・ファッジ下院議員が2016年の全国大会の委員長に指名された時、同氏のスピーチはブーイングと、「バーニー!バーニー!」の合唱で圧倒された。

「いいですか、いいですか」。ファッジ下院議員は25日の民主党大会で繰り返し語りかけ、騒々しいアリーナを鎮めようとした。「ちょっと言わせてもらってもいいですか。この会場の中で、みなさんの多くが、私のことを知りません。私はみなさんに言いたい。私は公正でいたいと。私は皆さんに敬意を払いたいと思っています。みなさんにも私に敬意を払っていただきたいのです。私たちは全員民主党員なのだから、私たちはそのように振る舞うべきなのです」

アリーナの外では、反クリントン氏の抗議活動も盛り上がっていた。代議員たちが党大会の会場に入る時には、たくさんのサンダース支持者がフェンスの向こうから野次を浴びせ、代議員たちが入場するのに厳重な警備が必要だった。午前中には大勢の他の支持者たちがフィラデルフィアの党大会センターの外に集まり、「冗談じゃない!民主党全国委員会、私たちはヒラリーには投票しない!」とシュプレヒコールをした。

予備選中、サンダース陣営の指揮をとっていたオハイオ州のニナ・ターナー民主党上院議員は集まった人々に呼びかけた。しかしターナー氏は、集まった人々のエネルギーと意気込みを褒め称えた一方で、クリントン氏へ投票するよう呼びかけるのは思い止まった。

「私は恐ろしい雰囲気の中で投票をお願いするような民主党員になるつもりはありません」と、ターナー氏は言った。「でも私たちは自らを省みて、どんな国で暮らしたいか、そのためには現状では誰がベストかを決定しなくてはなりません。私はみなさんに指示したり命令したり、説き伏せたりすることは決してしません。なぜならみなさんの痛みが分かるからです。みなさんがどこから来ているのか私は知っています。もっと多くの民主党員がバーニー・サンダース支持者の気持ちを尊重する必要があります」

サンダース氏を追い続けたハフポストUS版のサム・スタイン記者も、サンダース氏支持者たちの怒りから逃れることはできなかった。彼がアリーナに向かおうとしてサンダース氏支持者たちのそばを通り抜けたとき、抗議デモの集団から「サム・スタイン、この汚い裏切り者!」と野次を浴びせられた。

民主党内の分裂は、党大会の最初の数時間で起きた混乱ほど深刻でないかもしれない。党大会のような重大ニュースイベントでは、目立つ意見に注目が集まりがちだ。それが大勢の意見を代表するものではない場合も多い。調査機関「ピュー・リサーチ・センター」によると、予備選でサンダース氏を支持してきた有権者の90%近くは、本選挙でトランプ氏ではなくクリントン氏を選ぶという結果が出た。

しかし他のデータ、それから混乱した25日からわかるのは、クリントン氏がサンダース氏支持者に自分へ投票させるのは困難だということだ。ニュースサイト「FiveThirtyEight」はサンダース氏支持者の3分の1はクリントン氏に投票するつもりがないと予測している。そして彼らのうち5分の1が、リバタリアン党のゲーリー・ジョンソン氏や緑の党のジル・スタイン氏など、第3の政党の候補者に投票するだろうとみている。これは、サンダース氏支持者が決して忠実な民主党員ではなかったことが理由として考えられる。FiveThirtyEightによると、「サンダース氏支持者は、2016年予備選以前は、他の2016年の有権者に比べて投票する回数が少なかった人たちだ。また彼らはクリントン氏支持者ほど確実な民主党員ではない」と報じている。

サンダース氏を支持する代議員たちは、28日に予定されているクリントン氏の指名受諾演説で退席する計画を立てている。彼らのこうした意思表示を、クリントン氏はなんとしても防ぎたい。しかしサンダース氏自身が要請したとしても退場を止めることはできないと、サンダース氏を支持していたノーマン・ソロモン議員は25日、記者会見で語った。

「もし私たちがバーニーからやめてくれと頼まれたら、他の人から頼まれた時と同じく熟慮するでしょう」と、ソロモン氏は語った。「ですが私たちはバーニーが予備選期間中に宣言していたことを真剣に受け止めています。本当に価値のある社会変革は、常に大衆から始まるものだ、ということです」

ソロモン氏と同じく記者会見で発言した他の代議員たちは、彼らの党大会での目標は団結ではなく、サンダース派の目標をさらに推し進めることだと明言した。サンダース上院議員は、すでにサンダース派の会合に参加していない。

「彼が主役なのではありません」とソロモン氏は言った。「この社会運動を仕切っているのは彼ではありません、活動家たちなのです」

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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