文字通り、「見て見ぬふりをできない問題」に誰かが対応しなければいけなかった。
アジアゾウのモシャは6年前、生後7カ月の時にタイとミャンマーの国境で地雷を踏み、右前脚を失ってしまった。それ以来、義足を付けていたモシャは、次第に体重が支えきれなくなったため、6月29日、新しい義足を作ってもらい何とか命にかかわるような事態を回避した。
「モシャの歩き方はバランスが悪く、このままでは脊椎も曲がってしまいかねませんでした」と、モシャの義足の設計をした整形外科医のテルドチャイ・ジヴァカーテさんがロイターに話した。「このままではモシャの命に危険が及んだことでしょう」
ジヴァカーテさんがモシャの最初の義足を作ったのは6年前のこと。負傷したゾウのリハビリを行う団体「フレンズ・オブ・ザ・アジアン・エレファント・ファウンデーション」でジヴァカーテさんはモシャと出会った。その時モシャは2歳6カ月だった。当時は1300ポンド(約590キロ)だったモシャの体重が現在4000ポンド(約1815キロ)になり、増え続ける体重を支えるために義足も新しく再設計する必要があった。ジヴァカーテさんは最初の年に3つの義足を作ったと、ニュースメディア「Vice」が運営する、未来のテクノロジーやカルチャーを紹介するサイト「マザーボード」が伝えている。
しかし、最初の義足はジヴァカーテさんにとっても、モシャにとっても困難を伴うものだった。
ジヴァカーテさんのチームはまず、モシャの足がスムーズにスライドして入るようなソケットを作らなければならず、そしてモシャが適切な形で歩行できるよう、ソケットの軸とモシャの足の軸を寸分違うことなく一直線上にする必要があった。
「もし義足を使うことで脚が痛くなったら、モシャは義足を使ってくれないだろうということは分かっていました」とジヴァカーテさんはマザーボードに語った。「最初、モシャは自分の足に取り付けられた義足に非常に興味を持って、鼻を使って外そうとしていましたが、私たちは義足を取れないようにしっかりとモシャの脚に付けました」
12時間練習を重ねた後、モシャは義足の使い方のコツをつかんだ。それ以来、モシャは体重が増えるたび、ずっと新しい義足を作り続けてもらっている。
フレンズ・オブ・ザ・アジアン・エレファント・ファウンデーションがゾウの義足を作ったのは、モシャが最初だった。しかし、義足を作ってもらっているゾウはモシャだけではない。ニューヨーク・タイムズによると、1999年にモシャと同じくミャンマーとの国境で地雷を踏んで前脚を失ったゾウのモトラも、同じく義足を作ってもらった。
ここ数十年、反乱グループとミャンマー政府軍との戦闘により国境付近に設置された地雷が原因で、多くのゾウが負傷している。
ジヴァカーテさんは、こうしたゾウの痛みをなんとか軽減しようと活動を続けている。
「動物自身が義足を作ってほしい、と言うわけではありませんが、私たちはモシャに義足を作ってあげたかったのです」とジヴァカーテさんは語る。「モシャは私が義足を作る人間だと分かっているようで、私が病院にくるとモシャは必ず鼻を高く上げて私に小さく敬礼してくれるんです」
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
関連記事