火星にある2つの衛星、フォボスとダイモスは、約40億年前に巨大天体が衝突したことで誕生したという研究結果を、東京工業大などの国際共同研究チームが発表した。7月4日付のイギリス科学誌「ネイチャー・ジオ・サイエンス」電子版に掲載された。
■フォボスとダイモスとは?
フォボスとダイモスは、ギリシア神話の恐怖の神、ポボスとデイモスにちなんで名付けられた。ジャガイモのような形をした小さな衛星で、長径はフォボスが約27km、ダイモスが約16km。JR東京〜横浜間(32km)よりも短い。
直径約6800kmの火星に比べて非常に小さいため、起源が謎に包まれていた。もともと小惑星だったが火星の引力で捕獲されて衛星になったという説と、火星に天体が衝突してできたという説の2つがあった。
火星の衛星「フォボス」(左)とダイモス
■火星の質量の数%の天体が衝突か
時事ドットコムによると、東工大の玄田英典特任准教授らは、火星の北半球にあるクレーターをもとに、約40億年前に火星の質量の数%に当たる巨大天体が衝突したと推定。破片が軌道上に円盤状にばらまかれる様子をコンピューターのシミュレーションで再現した。
さらに計算した結果、火星に近い破片が重力で急速に集まり、数千年後には現在のフォボスの1000倍近い大きさの巨大衛星になった。この巨大衛星の重力が外側の破片に影響を与え、フォボスとダイモスになる2つの小さな衛星を形成。巨大衛星は数百万年後に火星に落下し、フォボスとダイモスが現在の軌道に残ったと推定した。
■日本の火星探査計画に影響も
このため火星の衛星は、火星から飛散した物質を多量に含んでいる可能性が高い。
日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)は火星の衛星に着陸して、砂や氷などを採取して地球に持ち帰る無人探査機を2021年度をめどに打ち上げる計画を立てている。フォボスとダイモスのどちらに着陸するかは未定だ。
東工大地球生命研究所は、今回の調査結果のリリースの中で、日本の探査機が「火星衛星から火星物質を地球に持ち帰る可能性が高いことを意味する」と期待を込めている。
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