国民投票でEU(欧州連合)離脱を決めたイギリスで、離脱派の中心的論客として活動し、次期首相の有力候補とみられていたボリス・ジョンソン前ロンドン市長が6月30日、保守党の次期党首選に立候補しないことを明らかにした。BBCが伝えた。
イギリスでは、EU離脱の是非が問われた6月23日の国民投票で、離脱が上回った。残留を訴えていたキャメロン首相は辞意を表明し、10月の与党・保守党首選に立候補しない意向を示していた。同じ保守党ながら、離脱派のリーダー的存在だったジョンソン氏は、次期党首の最有力候補とみられていた。
しかし30日、キャメロン内閣の有力閣僚の1人で、やはり離脱派のマイケル・ゴーブ司法相が突然、党首選への立候補を表明。ゴーブ氏はこれまで、自ら首相になる意思はないと繰り返し表明し、離脱に向けたEU各国との交渉を担う次期首相候補として、ジョンソン氏を支持してきた。
しかしこの日の出馬表明でゴーブ氏は、23日以降の動きが自らに重くのしかかってきたとして「残念ながら、ボリス・ジョンソン氏は今後の課題を担うリーダーシップを発揮できないという結論に達した」と、ジョンソン氏を批判した。
ジョンソン氏とともにEU離脱のキャンペーンを進めてきたゴーブ氏の反乱は、イギリス政界で驚きを持って受け止められた。ジョンソン氏はこれを受けて記者会見し、格差の是正や機会の平等などを訴えたあと「それがこの国の次期首相に求められる課題だ。助言してくれた同僚や、議会の状況などを考え、その人物は私ではないと判断した」と述べた。次期党首選への出馬表明と思われた演説の最後で不出馬を宣言したことに、イギリスでは衝撃が走った。
イギリスのガーディアン紙は関係者の話として、ゴーブ氏がジョンソン氏の力量に失望したとの見方を伝えている。ゴーブ氏は当初、ジョンソン氏を、政治宣伝のうまい人物として評価していたが、やがて主張や行動が支離滅裂だと懸念するようになった。多くの人が、EU離脱のキャンペーンは順調ではなかったと評価しており、ゴーブ氏と支持者からみると、EU離脱のキャンペーンには必要な基盤を欠いていた。それはジョンソン氏に運動を組織する力量が足りなかったからだと考えるようになったという。