第24回参議院選挙は、6月22日公示される。7月10日の投開票に向け、18日間の選挙戦がスタートする。自民、公明の与党2党と、「おおさか維新の会」「日本のこころを大切にする党」の改憲を目指す計4党が、憲法改正に必要な3分の2(162議席)を占めるかが大きな焦点になっているが、安倍首相は街頭演説では改憲について言及しないなど、与党側は争点になるのを避けている。
■応援演説では憲法改正に触れず
6月19日、安倍晋三首相は東京・吉祥寺で参院選候補者2人の応援演説に駆けつけた。安倍首相は「この参院選で何が問われているのか。それは経済政策であります。野党は、まとまった政策がありませんから批判ばかりしています。(中略)口を開ければ『アベノミクスは失敗か』そればかりであります。自分たちが何をしようか語ろうとしない」と訴えた。
約23分間の演説の中で、安倍首相が都民に訴えたのは主に、経済政策がほとんど。保育政策に補足的に触れた程度だった。「政治に求められているのは雇用を生み出すこと」「介護離職をゼロにしていく」などとアピールしたが、憲法改正については全く触れなかった。
「ネット党首討論」で発言する安倍首相
■党首討論では「憲法改正は当たり前」と言及
一方で同日夜、東京・六本木でネット企業10社が主催して開かれた「ネット党首討論」に出演した際には、憲法改正に言及した。主催者側が決めたテーマの中に、「憲法のあり方」について9党首が語る場面があったからだ。安倍首相は秋の臨時国会から衆参の憲法審査会を再始動させる考えを示した。
「国民の幸せを守るために変えるべきものは変える。成立後70年。谷垣総裁時代に、憲法改正草案を示している。憲法改正は、選挙公約に書いてある。しかしどの条文を変えるかは、憲法審査会でも残念ながら収れんされていない。選挙結果を受けてどの条文を変え中身を考えるか議論を深めたい。国民の皆様に考えていただきたい」
この後、民進党の岡田克也代表からは「憲法改正を参院選の争点から隠しているのでは?」という質問を受けた際に、安倍首相は以下のように答え具体論を避けた。
「自民党は立党以来、憲法改正を掲げている。(改正は)当たり前であります。憲法を変えたいとは思うが、条文は決まっていない」
■重視政策に「憲法」、与党候補は0人
朝日新聞社と東京大学・谷口将紀研究室が立候補予定者に実施した共同調査によると、今回の参院選で「重視する政策」に憲法を挙げた自民、公明両党の候補はゼロだった、憲法改正に前向きだが参院選ではアピールしない与党の姿勢が鮮明になっている。
6月17日夕方までに回答のあった344人の候補を対象に分析。憲法改正への立場を「賛成」から「反対」まで5段階で聞いたところ、自民、こころは全員が賛成派だった。公明と維新も一部の中間派を除けば、賛成派が多数を占める。
これに対し、今回の選挙で共闘する民進、共産、社民、「生活の党と山本太郎となかまたち」の野党4党は、憲法改正反対派が大勢を占めた。「重視する政策」でも与党とは逆に、共産は75%、社民は71%が上位3つまでに憲法を挙げた。一方で、民進は27%とやや少なめだった。
■改憲派が当選者の6割占めれば、憲法改正の発議が可能に
参議院によると、6月20日現在は計242議席のうち、自民、公明、おおさか維新の会、「日本のこころを大切にする党」の改憲4党の議席は146議席だ。憲法改正の発議に必要な3分の2(162議席)には、16議席足りていない。
しかし今回の参院選で改選しない議席は、4党で計84議席を確保済みだ(議長を除く)。今回の参院選で改選される121議席のうち、64%を占める78議席を確保さえすれば3分の2に到達する。憲法改正の是非をめぐって、有権者の判断が問われることになりそうだ。
■参議院各会派の議席数(6月20日現在)
<改憲に前向き>=146議席(改選61議席)
自由民主党 (116)
公明党 (20)
おおさか維新の会 (7)
日本のこころを大切にする党 (3)
<改憲に否定的>=81議席(改選53議席)
民進党・新緑風会 (64)
日本共産党 (11)
社会民主党・護憲連合 (3)
生活の党と山本太郎となかまたち (3)
<不明>=15議席(改選7議席)
日本を元気にする会・無所属会 (4)
無所属クラブ (2)
新党改革・無所属の会 (2)
無所属 (7)
【UPDATE】改選ラインの議員数のデータを更新しました。(2016/06/27 08:35)
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