子どもの貧困問題を解決しようと、学習支援を続けている全国の民間団体による協議会「全国子どもの貧困・教育支援団体協議会」が5月30日に設立された。親の経済状態が子供の世代に続く「貧困の連鎖」を食い止める活動が広がっているが、同日開催された設立記念フォーラムでのリレートークでは実際に事業を行っている団体が抱える「学生ボランティアの確保」や「本当の困難家庭の子供に情報を届けるには」といった課題が浮き彫りとなった。これらの課題も今後の協議会での活動を通じて解決が模索される。
「全国子どもの貧困・教育支援団体協議会」設立記念フォーラム(2016年5月30日、東京都港区の日本財団ビルで)
協議会は、団体間の情報交換や共同での政策提言・調査・イベント開催などを通じて「日本に生きるすべての子どもが夢や希望を持つことができる社会を実現すること」を目的にしている。学習支援をしているNPO法人キッズドアや、さいたまユースサポートネットなど7団体の代表が世話人、22団体が会員となった。
リレートークで話し手として登壇したのは以下の4人。それぞれの事業を紹介した後に、現在感じている課題についても話し合った。
・学校外教育バウチャーで教育支援をする公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンの今井悠介さん
・東日本大震災の被災地などで教育支援をするNPO法人アスイクの大橋雄介さん
・虐待などで保護された子たちへの教育支援をするNPO法人3Keysの森山誉恵さん
・都内や大阪などで学習支援を行うLearning for Allの李炯植さん
共通の課題として浮かび上がったのは、主に、本当に支援が必要な家庭に情報が届きづらいことと、学生ボランティアやパート職員を集めるのが難しいという点だ。
前者について、今井さんは「貧困でも親子共に学習意欲のある家庭はたくさんある」一方で「意欲が十分ではない家庭の方がより困難な状況にある」「普通の告知だけでなく周囲の人のアドバイスや後押しが必要で、ソーシャルワーカーのようなサポートや福祉部門とのネットワークが大事」と話した。李さんも「福祉部局との連携で連合体としてやるという意識が必要」と話した。
また、学習支援団体の多くでは実際の学習サポートなどを大学生らのボランティアが担っているが、継続してボランティアに参加してもらうことに苦心しているという。森山さんは「ボランティアの大学生には、奨学金を受けている学生も多く『人のことを思う余裕がない』というのも無理もない。実際に活動できるのは『幼稚園から私立に通ってました』という子が多い」。ボランティアだけでなく職員についても、大橋さんは「パート職員募集の広告を毎週求人誌に載せていても集めるのが難しい」と話した。これに対し、来場者で同じく支援活動をしている男性からは「ボランティアの学生が主体的に活動できる場づくりも大事なのでは」との提案が寄せられた。
貧困家庭の子どもへの学習支援は2015年施行の生活困窮者自立支援法に盛り込まれた。これにより、生活保護世帯などの子どもたちを対象に、全国で300の自治体(33%)が国から補助金を受け、NPOに事業委託するなどして学習を支援している。
内閣府の「親と子の生活意識に関する調査」(2011年度)によると、貧困家庭の子どもは、学校での成績は下の方に偏る傾向があり、授業の理解度が低く、学校外での学習時間も短いことが明らかになっている。貧困家庭では習い事に通う率が比較的低く、学校での学習を補完しづらいことが影響している可能性が指摘されている。
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