5月25日午前0時を少し回ったころ、20歳のミシェル・ブラシル・ダ・シルバが30秒の動画を、以下のコメントとともにTwitterに投稿した。
「奴らはこの子をメチャクチャにした。俺の言ってることが分かるか? それとも分からないか?(笑)」
その動画では、裸で意識を失った女性がむき出しのマットレスに寝そべっている。2人の男が写っているが、彼らはどちらもちゃんと服を着ている。彼らは順番に彼女を乱暴に動かしたり嘲ったりしている。
「この女は30人の男にヤラれたところだ」とそのうちの1人が言う。
「この女の有様を見ろ。血が出てる」と、明らかに傷ついている性器にカメラを向けながら、もう1人が言う。途中でその男はぴくりとも動かない彼女の臀部の横に自分の頭を置き、舌を出してセルフィーを撮った。
この映像はSNS上で大きな波紋を呼んだ。週末のリオデジャネイロで起きた16歳の少女に対する33人もの男による集団強姦は、全国の注目を集めた。SNSのユーザーたちが一斉に通報するまで警察はこの犯罪に気づいていなかった。
ブラジルのニュースサイト「G1」によると、この短い動画とセルフィーがネットに投稿されてから数時間のうちにリオデジャネイロの検察庁には約800の情報が寄せられた。25日の夜に検察庁は調査を開始し、被害者を特定したと発表した。ブラジルの雑誌「Veja」が入手した被害者の警察への説明によると、この少女は、3年間つきあっていたクラスメートでルーカス・ペルドモ・デュアルテロ・サントス容疑者(19)と、彼の家で5月21日午前1時ごろ会った。被害者によると、2人きりだったという。
彼女によると、次に覚えているのは翌22日に目が覚めたときだという。彼女は裸で意識がもうろうとしていて、33人の武器を持った男に囲まれていた。そこは彼女の知らない家だったという。
動画に記録されたこの事件は、もう1件の10代の少女に対する集団強姦事件(こちらもブラジルで大きなニュースとなった)の翌日に起きた。こちらの集団強姦事件は、北東部ピアウイ州で17歳の少女が、知り合いの10代少年、5人から被害を受けたとされる。
リオデジャネイロの容疑者たちが厚かましくこの出来事を自慢し、有罪の証拠を記録するだけでなく、ネット拡散させたことで、女性に対する性差別と性的暴力、そして刑事責任について激しい議論が巻き起こっている。
2011年6月18日にブラジリアであった抗議活動「Marcha das Vagabundas」(スラットウォーク)に参加する女性たちの資料写真。若い女性に対する集団強姦を映した映像は、ブラジルで女性に対する性差別と性的暴力、それについて処罰を受けないことに関する激しい議論を呼んでいる。
「今回の事件にブラジル国民は怒っています」と首都ブラジリアを拠点とするフェミニスト協会「Anis」の研究員、バネッサ・ディオスさんは語った。また、議論の余地のないほど目に見える証拠があるから、「これが本当に起こったとは思わない」とか「この女の子が大げさに言っているんだろう」などというような、聞き覚えのある反応が蔓延するのを防いでいると言い足した。
「それでも、被害者が自ら招いた災難だとして、その映像を正当化するような反応をする人が数多くいるのです」とディオスさんは語った。「女性の体には何をやったって許されるというような身勝手な考え方が、一般的にブラジルでは根強く存在しています。ここまでは許容される行動だという解釈が絶えずあるのです。男たちの間では、女の体を許可なく触ったりつかんだりしていいという考えが根強く残っています」
集団強姦の様子を動画で投稿したシルバのTwitterアカウントが停止されるまでの間に、彼は自分が投稿した動画への大量のリプライをリツイートしていた。こんなリプライもあった。「彼らはこの女の体をメチャクチャにした hahahahahahahahaha、大勢にヤラれてこの女はズタズタだ」。動画を削除しろと言った人に対してシルバはこう書いた。「みんなこの☓☓☓で最悪のものを目にしても、文句を言うな。ただ俺はこの女の映像を投稿して、奴らがくだらない話をしたいだけだ。☓☓☓ ... この映像は消さない。不快なら俺をフォローするな」
私はシルバに電話で何度か接触を試みたが、応答はなかった。手分けしてこの犯行の情報をつかもうとするSNSのユーザーたちが、彼のアカウントと考えているFacebookのプロフィールはオフラインとなっている。
26日、ブラジルのサイバー犯罪捜査を担当するアレッサンドロ・ティエール長官は、4人の容疑者の逮捕の司法要求を申し立てたとブラジルの週刊誌「Veja」が報じた。この雑誌によると、その4人は動画を投稿した20歳のシルバ、同様にこの犯罪映像を広めた18歳のマルセロ・ミランダ・ダ・クルーズ・コレア、映像に登場し被害者の体と一緒にセルフィーを撮ったとされる41歳のラファエル・アシス・デュアルテ・ベロ、それから被害者の恋愛対象で、警察が集団強姦に直接関係していると見ているサントスだ。
「ブラジルには性差別と性的暴力がごった混ぜになった文化があります」とリオデジャネイロ人権委員会の委員長で国会議員のマルセロ・フレイショ氏は電話インタビューで語った。フレイショ氏によると、リオデジャネイロでは2014年に4725件、1日平均13件の強姦事件の被害届が出されている。「これほどの性的暴力の発生率なんて、とてもじゃないが民主主義の国に暮らしているなんて言えません」とフレイショ氏は語った。「これはオリンピックを開催しようとしている都市の話なのです」
25日、フレイショ氏は被害者が襲撃後、被害者が初めて病院の検査を受けるのに付き添った。彼はその後、委員会は調査を監視し、被害者が心理的サポートを確実に受けられるようにすると声明を出した。
「これは国全体の問題です。ある1つの経済的階層や、別の階層に限られた話ではありません」。国中で起きている強姦事件について、彼は語った。「そして、ヘイトスピーチで国会議員に選出される政治家がいるのだ」
フレイショ氏は名指しこそしなかったが、リオデジャネイロ選出の国会議員ジャイル・バルソナロ氏は、公然とアンチフェミニスト、アンチLGBTの発言を繰り返すことで人気を高めている。2014年、バルソナロ氏は同僚の議員である女性に対して、「彼女はレイプするに値しないので、彼女をレイプすることはない」と発言した。4月、彼は現在停職中のジルマ・ルセフ大統領の弾劾に賛成票を投じ、独裁政権下のブラジルで彼女が若い活動家だったころに受けた拷問を監督した大佐 "ブギーマン"を讃えた。バルソナロ氏は、2014年の選挙でリオデジャネイロで最多得票を集めた立候補者だ。
10代少女が集団強姦されたと報じられた同じ週末に、北東部ピアウイ州のボムヘススという街で17歳の少女が縛られ、口を塞がれた状態で見つかった。被害者と容疑者となった5人の10代少年は知り合いで、襲撃の夜に集まっていた。ピアウィ州では、そのちょうど1年前にも同様の悲劇が起きて、州内に衝撃が走った。その事件では、4人の10代の少女が集団強姦され、殴られて崖から投げ捨てられた。そのうち1人は亡くなった。
リオとピアウイで起きた犯罪のニュースは26日、SNS上で大きな反響を巻き起こした。Twitterでは、#EstuproNuncaMais (ポルトガル語で「#二度とレイプするな」)のハッシュタグが世界中でトレンドとなった。Facebookでは、サンパウロのアーティスト、ルシアナ・フェルナンデスとベアトリス・ルゼンデ がフェミニストグループを動員し、巨大な抗議グループ「Por Todas Elas」 (ポルトガル語で「すべての女性のために」)を結成し、5つの都市でデモが計画されている。
26日夜、リオデジャネイロの暴行事件の被害者のものとメディアで報じられているFacebookページで、彼女はこう書いた。「みなさんのサポートに感謝します。正直に言うと、私は厳しく非難されると思っていました」
▼画像集が開きます▼
この記事はワールドポストに掲載されたものを翻訳しました。