5月8日に行われた「東京レインボープライド2016」のパレード。快晴の下、約4500人が参加した
LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)をはじめとするセクシュアル・マイノリティへの理解を深める祭典「東京レインボープライド2016 パレード&フェスタ」が5月7日、8日、東京・代々木公園で開催された。2015年に渋谷区や世田谷区などで同性パートナーシップの取り組みが始まるなど、LGBTに世間の関心が高まったこともあり、2016年は2日間で7万500人が来場、4500人がパレードに参加。過去最高の規模となった。
今年の東京レインボープライド(TRP)のテーマは「BEYOND -ブームを超えて-」。ブームを超えて、自分らしく、生きていく。現在のLGBTの状況に新たな未来を見出そうとするものだ。
ハフポスト日本版は、来場したLGBT当事者とアライ(LGBTの支援者)に、将来の夢を語ってもらった。個人の夢や、それを実現するために、どんな社会を実現させたいかなど、その内容は様々。一人ひとりの言葉から、LGBTとそれを支えるアライの人たちの思いが見えてきた――。
キヨさん(写真左)、ゴローさん(写真右)
キヨさん:僕とゴローは、いとこ(従兄弟)なんです。おじいちゃんおばあちゃんありがとう! 10年くらい前に僕がカミングアウトしたときには、ゴローはまだ女の子と付き合ってたんだけど。
ゴローさん:キヨにゲイバーに連れて行ってもらったときに、他のお客さんに言い寄られた(笑)。その時はキヨが“この子はノンケ(ストレート)だから”って説明してくれたんだけど、自分の中で“あれ、もしかしたら僕、ゲイかも!?”って感じてた。それから少しずつ自分自身に気がつきはじめて、彼女と別れることになったのを機にカミングアウトしました。僕は、結婚という形にはこだわらないですが、パートナーと一緒に人生を歩んでいきたいですね。
キヨさん:僕はLGBTの団体で活動していて、故郷である岡山県津山市で講座を開催したりしています。地方だと、カミングアウトしてもなかなか受け入れてもらえない現状がある。僕の活動も実家の家族や親族には大反対されています。でも小学校の同級生たちは応援してくれているんです。子供の頃に僕のことをいじめていた子が、Facebookに応援のメッセージをくれたんです。カミングアウトしてよかったと思いました。
椿さん(写真左)と梓さん(写真右)
椿さん:個人的な将来の夢は東京ディズニーランドでウェディングをして、2人の家を持つことです! 私は昨年、自分がバイセクシュアルであることをカミングアウトしました。勇気がいることでしたが今は本当によかったと思っています。自分が変われば世界も変わるのだと実感しました。アライの皆さんの存在は心強いです。でも、いつかはLGBTとアライではなく、ただ人と人が思いやって支え合う社会になればいいですね。
梓さん:僕はトランスジェンダーで、椿とは幼馴染。3歳の頃から一緒にいます! 僕はもっと2人の先々のことを考えています。2人でゆっくり老後を過ごしたい(笑)。自給自足のような生活が理想です。
サムソン高橋さん
同性婚? お金持ちでイメケンがいたらしたいですね! どんな形であれ早く制度を導入して、不備があればそれを変えていくというやり方がいいのでは。単身者は既婚者より短命だという調査結果があって、だからゲイもストレートと比べて短命なんだと思います。ゲイの寿命の問題から言っても同性婚を実現すべき。
最近のTRPは軽いノリになっていると思います。昔はすごく頑張ってるきっついドラァグクイーンや活動家だけが来るみたいな雰囲気だったけど、今はノンケもイケメンもブスも気軽に来てる。それから昔は活動家はブス呼ばわりされたけど、今はむしろシャイニーでイケメン。マイノリティのゲイに光が当たるのは嬉しいけど、シャイニーやイケメンじゃないゲイにももっと光を当ててほしい。
Azさん
誰もがゆったりのんびり自分らしく、なにかに怯えたりいじめられたりすることなく、それぞれの個性を大事にしながら生きていける社会になればいいなと思います。
顔にLとかG、B、Tとか書いてある人はいません。でも、それを隠していなければならないというのはおかしいと思います。私はトランスジェンダーですが、そのことを、自分が左利きだとか、こんな趣味を持っているとか、どこに住んでいるとか、そんな属性と同じように、なにげなく自然に語れるようになるといいですね。
今年は一昨年、去年より大勢の人が参加しています。初めて参加した人が“来てよかった!”と言っている。来年はもっと多くの友人知人に参加を勧めようと思います。
中澤佳子さん(写真右)、永野さん(写真左)
中澤さん:私はストレートですが、今日は一番よく会ってるゲイの友達に誘われて来ました。普段は会う機会のない人たちに出会えるのがいいですね。パレードを歩いたとき、前に外国人のレズビアンのカップルがいたんです。この人たちが自然に受け入れられる社会になればいいなあと思いました。
ジェイソンさん
2日間、会場に来て思った。“日本にはこんなに大勢のゲイがいる! でも普段はいったいどこにいるの?” こういうイベントがあるから、みんな表に出てきて元気になれるのは素晴らしいこと。でも、明日、みんなが会社や学校に行って今日のことを話せないとしたらそれは残念。LGBTもストレートもみんなが話題にできるようになればいい。アメリカにいる僕の姉夫婦、弟夫婦は、毎年、子供を連れてパレードに参加してる。子供も、綺麗な衣装の人たちや、音楽、それにみんなからたくさんハグをもらえるから楽しみにしている。みんながありのままの自分を愛せるような社会になればいいと思う。
英さん(写真左)、takaさん(写真右)
英さん:今のパートナーと同性婚をしたいというのもありますが、それ以前に、LGBTの存在を社会に理解してもらいたい、というのが一番の希望です。でも、やはり結婚できないことで“遠い将来、彼が亡くなったあと自分はどうなるんだろう、逆にもし自分が先に亡くなったら彼はどうなるんだろう”という不安は時々感じます。だから、やっぱり制度もしっかりしてほしい。社会の理解と、制度は、「鶏が先か卵が先か」という問題かもしれません。どちらも進んでいくといいですね。
今日はクリスタルコミュニティという団体で、聴覚障害の人のための手話通訳のお手伝いで参加しました。LGBTで聴覚障害を持つ人たちも以前と比べるとTRPのようなイベントの場に大勢出て来るようになったと感じます。様々な障害を持つLGBTの人たちも、どんどん表に出ることが出来るような社会にしたいです。
ふくしまさん(写真左)、浅野青空さん(写真右)
ふくしまさん:今、つきあっている彼女と一緒に暮らして子育てをするのが夢です。子供は欲しいですね。体外受精という方法もありますが、それより養子を迎えるのがいいのかなと思っています。体外受精だとどちらかの遺伝子だけ受け継ぐことになりますよね。それよりは、どちらにとっても血のつながりがないほうがいいような気がするんです。
浅野青空さん:戸籍変更して結婚したい! 戸籍変更のための条件が厳しいので緩和してもらいたいです。せめて性別適合手術に健康保険が適用されるようになれば、費用の面で助かるんですが。
河野陽介さん
僕は東日本大震災を期に、ゲイであることを家族にカミングアウトしました。地元は茨城県の神栖市。被災地域です。自分のことを知らせないままで死ぬのは嫌だと思った。そして自分の中にある地元に対する愛情も自覚することが出来ました。
現在は、地元でのLGBTに対する理解を進めるための団体を立ち上げて、学校の先生向けに講演するなどの活動をしています。東京より地方のLGBTのほうが生きづらさを感じています。実は地元で性同一障害の女子高生が、バイセクシャルの後輩を刺してしまうという傷害事件がありました。LGBTに対する理解のなさが背景にあるように思えて、とても他人事とは思えず団体を作ることにしたんです。地方をもっともっとよくしていければと思います。
長田真紀子さん、智史くん(1歳2カ月)
友達にゲイやレズビアン、トランスジェンダーがいて、以前、TRPの運営をボランティアで手伝ったこともあります。今日はセクシュアル・マイノリティのイベントでしたが、それだけでなく、障害のある人、外国籍の人、仕事を失った人、貧困に苦しむ人など、すべての人たちが平等に扱われる社会が実現してほしい。そしてマイノリティ同士が対立したり、奪い合うことがない社会になってほしい。
(聞き手・文 宇田川しい)
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