ユネスコの世界遺産、ベリーズ珊瑚礁保護区にあるグレート・ブルー・ホール。
マチュピチュや、オーストラリアのグレート・バリア・リーフ。ユネスコの世界遺産に登録されているのは、どれも一度は行ってみたい魅力的な場所だ。しかし、その多くの存在が危ぶまれている、という衝撃的な報告書が世界自然保護基金(WWF)によって4月6日に発表された。
世界遺産の「自然遺産」と「複合遺産」には、96カ国229の場所が登録されている。しかし、報告書によると、半数にあたる114の世界遺産が開発や違法な伐採、乱獲などが行われている。
多くの地域では、自然より産業の方が重要視されていて、なかには「今何をするべきか」と「将来のために何が必要か」を見失っている政府もあるという。
WWFラテン・アメリカとカリブ海地域のディレクターを務めるロベルト・トロヤ氏は、開発は社会、経済、環境がバランスを保つ中で行われるべきだと考えている。そして「発展のために国が目指すべきなのは、持続可能な開発です。世界遺産の半分が存続の危機に瀕している。これは、私たちへの警告です」と述べている。
世界遺産に指定されるのは、「人類にとってかけがいのない価値」を持つ場所だ。世界遺産に登録されると、緊急な保護対策が求められることも多い。しかしペルーのマチュピチュやグレート・バリア・リーフなど多くの世界遺産は、今でも開発による危機に直面している。
そのひとつがベリーズ珊瑚礁保護区だ。ベリーズでは、国民の半分以上が、サンゴ礁関連の観光業や保護活動を主な収入源にしている。それにも関わらず、サンゴ礁の40%が1998年から被害を受け続けていると報告書は伝える。
ベリーズ政府は領海の14%を占めるサンゴ礁を保護する計画を立てているが、残りの86%の海で計画されている石油掘削やガス掘削が、環境を破壊する恐れがあるとトロヤ氏は述べている。
環境開発によって、ベリーズ珊瑚礁保護区を覆う約1万2500エーカー(約5000万平方メートル)のマングローブが失われた。
その他の世界遺産の登録地域にも、世界遺産の観光業で生計を立てている人たちがたくさんいる。そのため、環境が激変すると多くの人の打撃を受ける可能性がある。WWFによると、少なくとも1100万人の人が世界遺産によって生計を立てていて、世界遺産の90%以上が雇用を創出している。
世界遺産を守るためにはどうしたらいいのだろう?
ユネスコ世界遺産センター長のメヒティルト・ レスラー氏によると、近年成果を上げているのは、産業界での意識の高まりだ。2014年には、キリバス政府が、自国のユネスコの世界遺産フェニックス諸島保護区での商業漁業禁止を決定した。
加えて報告書は、ユネスコのような各国政府が加盟する組織が保護活動の指揮を執ること、世界遺産の周囲での環境開発を禁止すること、また企業が世界遺産地域では開発をしないという公約を結ぶことが大切だと求めている。
「『世界遺産は人類にとって大切なものだ』という認識があることで、世界遺産は成り立っています。自分たちが今やっていることが、将来の子供たちに大きく影響する。私たちはそれを理解するべきです」とトロヤ氏は述べている。
ハフポストUS版に掲載された記事を翻訳しました。
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