季節が変わるとウキウキしたり、何となくふさぎ込んだり。季節と共に気分の変化を経験した人は少なくないだろう。しかしどうやら、変わるのは気分だけではないらしい。脳の活動も変化しているようだ。
この可能性を指摘しているのは、2月8日に学術誌「米国科学アカデミー紀要」に掲載されたベルギーの研究だ。同じ課題に取り組む場合でも、季節に応じて脳の活動が変わる可能性を示している。
「季節に応じた変化は、生き物にとって重要なものです。人間の気分と免疫システムが、季節ごとに変化することはよく知られていますが、脳の機能の中にも、季節によって変化するものがあるようです」と、研究に携わったベルギー・リエージュ大学の神経科学者ジル・ヴァンデワレ博士は述べている。
研究では、28人の成人男女に、春・夏・秋・冬の4回、それぞれ4日半を研究室で過ごしてもらった。その間は外に出ることも、日光に当たることも全くせず、季節と完全に切り離された状態を保った。その後「長時間の集中力を必要とする課題」と「記憶力を必要とする課題」に取り組んでもらい、脳を調べた。
その結果、参加者の課題の得点は変わらなかったが、脳にかかる負荷が違うことが観察された。まず、集中力を必要とする課題では、脳は夏に最も活発に活動したが、冬は活動量が大幅に減った。また、記憶力を必要とする課題では、脳の活動は秋にピークに達し、春に低くなっていた。
つまり、集中力を必要とする課題では夏、記憶力を必要とする課題では秋に、脳はより活発に活動していたのだ。
なぜ、季節で脳の活動が変わるのだろう? それはより効率的に働くために、季節にあわせて働き方を変えているからではないかと、ヴァンデワレ博士は指摘する。
「より活発に働くというのは、課題を容易にこなすだけの能力が脳にあることを意味していると思われます。一方、活動量が減る冬は、効率的に働けないのでしょう」と、ヴァンデワレ博士は説明している。
なぜ脳が季節で変化するのかはまだわかっていない。しかし、脳だけではなく、様々な体の機能が季節ごとに変化することがこれまでの研究からわかっている。
気分や新陳代謝は季節ごとに変化するし(例えば、冬は体重が増えやすい)、人間の遺伝子や免疫システムの活動も変わる。2015年の研究では、夏と冬では色を違って知覚する可能性が指摘されている。
しかし今回研究者たちは、脳の集中力と記憶力が季節に応じて変化する可能性を初めて明らかにした。研究に携わっていない、スイス・バーゼル大学の時間生物学者アンナ・ウィルツ=ジャスティス教授は、結果に興奮を隠さない。
「人工的な光に囲まれた私たちは、もはや季節的な光のサイクルとは関係ない暮らしをしています。それにも関わらず、私たちの脳は季節に反応するようプログラムされているのです」と、彼女は科学誌「サイエンティフィック・アメリカン」で語っている。
ハフポストUS版に掲載された記事を翻訳しました。
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