国債などを取引する東京債券市場で2月9日、住宅ローンや企業向け融資の目安で長期金利の代表的な指標になっている満期まで10年の国債の利回りが過去最低を更新し、一時、初めて0%を割り込んでマイナス0.005%まで低下した。NHKニュースなどが報じた。
日銀が追加金融緩和策としてマイナス金利の導入を決めたことと、世界経済の先行きに対する懸念から比較的安全な資産とされる国債を買う動きが強まり、投資家が少しでも高い利回りの国債購入を加速させたためで、価格が上昇して利回りが急低下した。
長期金利とは、償還期限が1年以上の負債や債権などの金融資産に適用される金利のことで、1年未満の場合は短期金利という。狭義には、残存期間が10年にもっとも近い国債の金利を意味する。
産経ニュースは、長期金利が急低下したことについて次のように伝えた。
最も安全な運用資産とされてきた国債だが、0%の利回りで購入して満期まで保有しても利益は出ない。仮に0%を下回るマイナスとなればスイスに次いで2例目。長期金利がマイナスになれば、お金の借り手が利息をもらえるという異常事態に突入する。年金や保険などの運用で一段の環境悪化が避けられない状況となってきた。(中略)
10年国債の利回りが0%になったことで住宅ローンや企業向け融資の金利は一層の低下が見込まれ、設備投資や個人消費を活性化させる効果が期待できる。ただ、貸出金利はすでに過去最低水準のうえ、企業の手元資金が潤沢にある中で景気をどこまで押し上げられるかは見通しにくい。
(長期金利、初の0% 日銀マイナス金利で急低下 国債利益なし - 産経ニュースより 2016/02/09 10:33)
日銀は1月29日、金融機関が日銀に預ける当座預金の一部の金利を2月16日からマイナス0.1%に引き下げることを決めた。日銀は、このマイナス金利政策を導入することで企業や家計の投資や消費を活性化し、景気の底上げをすることを狙っているのだが、導入を決定して以降、円高、株安、債券高と、投資家がリスクを避ける動きを加速させている。
■金融機関の収益が悪化する懸念も
長期金利が一時、0%になった理由について、NHKニュースは「原油価格の下落で産油国の経済が打撃を受け、エネルギー関連の企業の業績も悪くなるとみて、世界経済の先行きへの懸念が強まっていることや、日銀が金融機関から預かっている当座預金の資金の一部にマイナス金利を導入すると決めたことで、今後も国債が買われるという見方が出ているため」と伝えた。
長期金利が低下すると、住宅ローンや企業向け融資の金利も低下する傾向があり、家計や企業にとってはプラスに働く。一方、銀行や生命保険会社は資産を国債などで運用しており、金融機関の収益が悪化する懸念がある。毎日新聞は次のように伝えた。
長期金利の低下に伴い、金融機関は国債運用による安定的な収益確保が難しくなる。このため、すでに三菱東京UFJ、みずほ、三井住友の3メガバンクが定期預金金利を、ゆうちょ銀行も普通預金と定期預金金利を引き下げた。また、資産運用会社が国債などで運用する投資信託「MMF(マネー・マネジメント・ファンド)」の販売停止に踏み切るなどの影響が広がっている。
(長期金利:一時史上初めての0%に - 毎日新聞より 2016/02/09 11:40)
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