異人種間結婚多いフランス「多様性ゆえに国が豊か」 映画「最高の花婿」のショーヴロン監督に聞く

国際結婚をテーマに軽やかに描いたフランスのコメディ映画「最高の花婿」が、3月19日から日本で上映される。フィリップ・ドゥ・ショーヴロンさん監督がハフポスト日本版の取材に応じた。

映画『最高の花婿』より (C) 2013 LES FILMS DU 24 – TF1 DROITS AUDIOVISUELS – TF1 FILMS PRODUCTION

国際結婚がテーマのフランスのコメディ映画「最高の花婿」が、3月19日から日本で上映される。フランスで2014年に最もヒットした、笑いと涙に溢れた感動作だ。監督・脚本を務めたフィリップ・ドゥ・ショーヴロンさん(50)がハフポスト日本版の取材に応じ、「多様性があるがゆえに国が豊かであることを伝えたかった」と話した。

現在、難民問題に直面しているヨーロッパ。そしてパリでは2015年11月に同時多発テロが発生した。パリっ子のショーヴロンさんは「人生、楽しむということを続けなければいけないとも感じました。それが、テロリストの思い通りにはさせないということなんです」とも語った。

映画のあらすじはこうだ。フランス西部のロワール地方に暮らすヴェルヌイユ夫妻は、3人の娘たちがそれぞれアラブ人、ユダヤ人、中国人と国際結婚したため、異なった宗教儀式から食事のルールまで、異文化への驚きと気遣いに疲れ果てていた。そんな時、末娘はカトリック教徒の男性と婚約。しかし、喜んだ夫妻の前に現れたのは、アフリカのコートジボワール出身の黒人青年だった。しかも、フランス人嫌いの彼の父親が結婚に大反対。果たして、この家族に愛と平和は訪れるだろうか。

フィリップ・ドゥ・ショーヴロン パリ生まれ。代々続く貴族の家柄で、パリ高等映画学校(ESEC)に学び、1995年に「ボクサー/最後の挑戦」で 脚本家として本格デビュー。99年には自身の監督デビュー作“Les Parasites”を撮り、 コメディ映画監督の礎を築く。2011年に“L’Élève Ducobu”でスマッシュヒットを記録し、翌12年には続編となる“Les Vacances de Ducobu”でもヒットを飛ばして一躍その名を知られることとなった。

インタビューに答えるフィリップ・ドゥ・ショーヴロンさん=東京・渋谷

――この作品をつくったきっかけは何ですか。

フランスでは4人に1人が異なった人種間で結婚をしていて、世界でとても多いという記事を読んだことがきっかけです。僕には4人のきょうだいがいるのですが、異人種の人と結婚をした人もいて、それも影響しています。今回、作品で異なった人種のコミュニティーを描くことで、そういった多様性があるがゆえに国が豊かであることを伝えたいと思いました。ポジティブに描きたかったんです。

――フランスでの作品の反応はどうでしたか。

公開と同時に多くのお客さんが押し寄せました。庶民もブルジョアも、地区も関係ありません。パリだけなく地方でも多くの人が見てくれて、人口6600万人のフランスで計1200万人以上の動員がありました。ちょっとした社会現象になりました。

――その後、世界145カ国でも上映されました。評判は。

フランス的なテーマだと思っていたので、世界中でヒットしてとても驚きました。それで、実はユニバーサルな問題を扱っているのだと実感しました。ドイツやイタリア、ベルギーなど移民が多い国で受け入れられるならまだしも、チリなど移民とあまり関係ない国でも好評でした。唯一、客がまったく入らなかったのがロシアだったんですが、それがなぜかは分かりません。

映画『最高の花婿』より(C) 2013 LES FILMS DU 24 – TF1 DROITS AUDIOVISUELS – TF1 FILMS PRODUCTION

――プライベートな話になりますが、ショーヴロンさんのフィアンセもアフリカ系の人だと聞きました。作品にも影響していますか。

無意識にですが、あるのでしょうね。今回、アフリカに関係するシーンは彼女にチェックしてもらいました。

――難民や移民は最近、世界中で増加していて課題となっています。そういった状況は作品に関係していますか。

フランスは、移民は多いですが、難民は周辺の国と比べてそんなに多くはありません。だから直接は関係していません。ただ、2015年11月13日のパリ同時多発テロほどの大きなテロが起こるとは思っていませんでした。その後も世界でテロが相次いでいます。テロの直後、フランスの人々の希望が崩れて、みな不安を持ちました。

――ショーヴロンさんはパリ出身ですよね。

11月15日が誕生日なのですが、14日に予定していた私の誕生日パーティーはキャンセルになりました。悲しみにうちひしがれ、誰もが心を痛めました。犠牲者にはみな、何かしら関係ある人がいましたから。

しばらくは戦争状態でした。被害者はコンサートに行っていたり、バーでワインを飲んでいたりたした普通の人々でした。一部の狂信的な人たちによる、まったくもって無差別な殺人で、フランスだけでなく世界を標的としています。

でも、私たちは連帯感を強めないといけないと思ったし、これまで通りワインを飲んで、人生、楽しむところは楽しむということを続けなければいけないとも感じました。それが、テロリストの思い通りにはさせないということなんです。最近、フランスへの日本人観光客が減っているようですが、フランスに来て頂くことがテロに対抗することなんです。

――フランスでは、前向きに明るいコメディーを見ようという雰囲気は変わらないのですね。

全然変わっていません。確かに、同時テロ後の2カ月くらいはレストランに行く人が減るなどしましたが、いまは戻っています。生き方を変えることはないんです。

――日本ではまだ、移民・難民がそこらかしこにいるという状況ではないです。今回、上映にあたり、日本人にはどんな点をアピールしますか。

フランス社会の、ご存じない一面を知ることは楽しい経験となるでしょう。人種間差別は確かにありますが、でも寛容に受け入れるという二面性もあるのです。愉快で、喜劇として面白く、リズム感のある映画です。ちょっととげがある会話のやりとりは、日本人には爽快感があるかもしれませんね。

――続編をつくる予定はありますか。

やりたいと思っています。今回の作品の最後で、主人公が世界一周の旅をすると宣言しました。だから続編では、婿のそれぞれの実家を訪ねてクルージングをする感じですかね。

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『最高の花婿』

【出演】クリスチャン・クラヴィエ、シャンタル・ロビー、メディ・サドゥアン、アリ・アビタン、フレデリック・チョウ、ヌーム・ディアワラ、エロディー・フォンタンほか

2016年3月19日からYEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて順次公開

配給:セテラ・インターナショナル

(C) 2013 LES FILMS DU 24 – TF1 DROITS AUDIOVISUELS – TF1 FILMS PRODUCTION

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