大阪府に住む44歳の女性が2015年5月、あらかじめ凍結保存しておいた自分の卵子を使って、女児を出産していたことがわかった。卵子の凍結は、がん治療などの医学的理由で卵子を凍結する例はあったが、健康な女性が凍結卵子で出産するのは国内初のケースとみられる。2月2日、共同通信などが報じた。
卵子を凍結したクリニック「オーク住吉産婦人科」(大阪市)によると、女性は独身だった12年から、自分の卵子を複数回にわたり凍結。結婚後の14年に卵子を解凍、夫の精子を使って体外受精を行い女児を出産した。女性は仕事が多忙で、結婚の予定もなかったが将来の出産を希望していた。
(健康女性、凍結卵子で出産 - 共同通信 47NEWSより 2016/02/02 12:21)
凍結卵子は、採取した卵子をマイナス196度の液体窒素タンクで保存する。使用する際は解凍し、精子を注入して子宮内へ戻す。日本生殖医学会の公式サイトによると、化学変化がほとんど起こらないため、食品を冷凍庫で保存する場合と異なり、何十年も状態を変化させずに保存できるという。
自身の卵巣機能を保存する『卵活』をめぐっては、これまでも議論が行われてきた。日本生殖医学会は2013年、「40歳以上の採取は推奨しない」などの条件付きで、卵子凍結保存を容認した。しかし、高齢妊娠になれば若いときの卵子を使っても母体や胎児のリスクが高まることもあり、「45歳以上で凍結した卵子を使って不妊治療を行うことは推奨できない」としている。
朝日新聞デジタルによると、この産婦人科では、健康な女性の卵子凍結を2010年から開始。2015年末までに計229人の卵子を凍結保存し、17人で体外受精を実施したが、出産できたのは今回の女性だけだった。同クリニックの船曳美也子医師は、「仕事などの理由で高齢になってから出産せざるをえない女性にとって、少しでも選択肢が広がることには意味があるのではないか」と話した。
ただし、卵子の凍結に健康保険は適用されないため全額自己負担となる。今回の女性の場合では、総額数百万円、1回の施術で50万円かかることもあったという。
海外ではFacebookやAppleなどの企業が、福利厚生の充実の一環として女性従業員が卵子を凍結保存する際にかかる費用を最大で2万ドル(約230万円)を補助しており、女性のIT業界への進出を後押ししている。また、アメリカ軍も現役軍人の精子・卵子の凍結保存に保険を適用するなど、福利厚生策を発表した。
日本でも千葉県の浦安市が、卵子凍結の費用を公費で助成している。
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