アメリカで新しく刊行された絵本に、王子様が16歳の誕生日にお姫様に変身し、自分らしい人生を生きはじめるという物語がある。「ザ・ロイヤル・ハート」と題されたこの本は、性的アイデンティティを伝えるだけでなく、思春期の少女が自分自身をありのまま受け入れ、リーダーになるまでを紹介している。
著者のグレッグ・マクグーンさんは、この作品をはじめとした童話シリーズで、LGBT(レスビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーなどの性的マイノリティ)のキャラクターたちの生きかたを描きたいという。
「(この作品では)愛や受け入れることの大切さ、そしてリーダーシップについて描きました」とマクグーン氏はハフポストUS版にコメントした。
「トランスジェンダーの登場人物にスポットを当てています。子供たちに、受け入れることの大切さを教えるのに、早過ぎるということはありません。私たちはみんな、同じ人間なのです。ほんとうの意味で幸せに生きていくためには、人生の神秘や、自分の感じることを大切にできるようにならなければいけません」
「恐怖や嫌悪を乗り越えて、自分が受け入れてほしいと願っていることを、気づけるようにならなければなりません。もし子供たちが、互いを受け入れ、受け入れられることを恐れるのであれば、その社会は健全ではありません」
マクグーンさんは、ハフポストUS版のインタビューに応じ、なぜ童話に性的マイノリティーを登場させることが大切なのかを教えてくれた。
――なぜ社会がこのストーリーを必要としており、それが重要なことだと思ったのですか?
すでに何作か子供向けの本を書いた後に、童話にも挑戦してみたいと思いました。子供の頃からおとぎ話が大好きだったからです。でも、これまでの童話にはLGBTのキャラクターがいませんでした。私は、すべての人に「むかしむかし、あるところに……」と、夢見るように物語に入り込んでほしかったのです。
「ザ・ロイヤル・ハート」は、性的アイデンティティだけの話ではありません。お姫様になった王子様の話、以上の意味を持っています。若者が、本当の自分を見いだす話、そしてリーダーシップの話です。互いを受け入れ、受け入れられることの大切さを語りかける本です。童話だからこそ、より広くの人たちにメッセージを届けることにつながれば良いと思っています。
私は、ゲイの王子様の物語を書きはじめました。一旦書きはじめると、どんどん話が膨らんでしまうので、一旦置いておくことにしました。考えすぎていたのです。昔話を作ろうと、「むかしむかしあるところに……」の基本の形に沿って書いてみることにしました。自分がどのように書き進められるか試してみたんです。
自己の尊重と表現は、これまでに書いたすべての作品のテーマです。童話には、よく変身するシーンが出てきます。貧乏から立派になったり、尾ヒレが足に変わったり。そう考えていたら、ひらめいたのです。変身を、人の成長と気づきとするのはどうだろう……と。心と身体と魂が一体となり、その美しさに気づくのです。今は「ロイヤル・ハート」シリーズを書き進めています。物語はそれぞれ異なりますが、そのすべてでLGBTのキャラクターを描いています。
——なぜ子供たちにとって、自分の感じることを大切にする、と教える本が大切なのでしょうか?
子供たちは、自分が主人公でもそうでなくても、物語を楽しむことができます。トランスジェンダーではない子供たちにとっても、いつか人生でそんな人たちに出会うときのために、物語を読み、(トランスジェンダーの人の気持ちを)体験することは、価値のあることになるでしょう。必要であれば、この物語をきっかけにLGBTについて話すのもいいでしょう。
――子供たちに、この物語から何を感じ取ってほしいですか?
「本当の自分から逃げ出さず、目をそらさず、心の声を殺してはいけない」というのが、私がこの本に込めたメッセージです。そして「周りの人々を、ありのままに愛しなさい」と。
本当の自分をさらけ出せず、悩み苦しむ人であれば、誰でもストーリーに共感できます。本のなかに描かれた、うっとりするような変身の瞬間に、自己否定から自分自身を解き放つことは、非常に大きな意味を持ちます。
最も大切なのは、自分自身をさらけ出したときの周りの反応です。本当の魔法は、そのとき起こるのです。大好きな人たちに自分自身を、さらけ出したときに「そんなあなたが大好きだよ、よく頑張ってね」といってもらえたら。どんな人にとっても、素晴らしいことだと思うのです。
——トランスジェンダー当事者、もしくは、まだセクシュアリティを受け入れられていない子供たちの親に、何か伝えたいことはありますか?
トランスジェンダーや、まだ自分のセクシュアリティを受け入れられていない子供たちの親に伝えたいことは、「あなたが子供に贈る最高のギフトは、愛情と心からの支え」ということです。子供の声をかき消してしまわぬように、ケアしてあげてください。
子供にとって、自分を導き、心の声を受け止めてくれる人がいる安心感は、とても大切です。愛情と信頼が強固なものになったとき、親子として、お互いに学び合い、ともに成長することができるのです。ゲイ、レズビアン、それ以外のどんなアイデンティティを持つ子供の親にも、私は伝えたいのです。
「ザ・ロイヤル・ハート」の詳細はこちら(英語)。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
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