安倍晋三首相は11月24日に開催した経済財政諮問会議で、最低賃金を2016年以降、毎年3%程度ずつ引き上げて、時給1000円を目指すと表明した。最低賃金を引き上げることで消費が生まれ、名目国内総生産(GDP)600兆円を達成することが目的だ。企業が賃上げを実現できるよう、関係省庁に環境整備を指示するという。
現在の最低賃金は、全国平均で798円。毎年3%の賃上げが行われれば、単純計算で2023年度に最低賃金は1000円に到達することになる。
ただし、都道府県別で最低賃金をみると、東京は907円であるのに対し、鳥取・高知・宮崎・沖縄は693円と開きがある。単純に各地一律3%ずつ毎年賃上げが行われるとして計算すると、東京は2019年度に1000円を超えるが、鳥取などでは2023年になっても1000円にはならない。
■なぜ賃上げをするの?
安倍首相は9月、名目GDPを600兆円にするという新たな目標を掲げた。内閣府が1月16日に発表した2015年7〜9月期のGDP速報値では約500兆円。しかし、実質GDPでは前の3カ月に比べて年率換算で実質-0.8%と、2四半期連続のマイナス成長となり、FNNニュースは、GDP全体の約6割を占める個人消費の回復が鈍く、景気の足踏み状態が続いていると分析した。
名目GDP600兆円の達成には、過去20年以上実現したことのない、年率3%以上のペースの成長が必要になる。経済財政諮問会議の民間議員は、名目成長率3%を上回る賃上げを続けることで、個人消費を60兆円程度拡大できると提言した。
毎日新聞によると、政府内からも「内部留保をもっと賃上げに使うべきだ」という発言が相次いでいたという。企業収益が過去最高水準になっている一方で賃上げの伸びは小さく、企業の内部留保や手持ちの現金・預金が増える傾向にあったことも、理由のひとつだという。
■賃上げを懸念する声も
しかし、最低賃金の引き上げについては、中小企業を中心に負担が大きく、「高収益の大企業は耐えられても、収益率の小さい中小企業や零細企業では難しい」との声も上がる。そのため安倍首相は、中小企業などの支援策を検討するよう指示するとともに、産業界に対しても取り引き価格の適正化に協力を要請した。
■ネットからの意見
一連のニュースに対し、ネットからは次のような意見が出ている。
《好意的の意見》
「僕は支持します」
「早くそうしてもらいたいものだ」
「かつて民主党が同じ政策を唱えていた」
「現実感はないけどやっぱりもらえるなら時給1000円欲しい」
《その他の意見》
「最低賃金が都道府県によって最大200円以上離れてる」
「最低賃金693円の高知にも言えるのかな?」
「人の能力とは関係なく、最低賃金はあがっていくという不思議」
「ギャラ上げたって雇用が安定しなきゃ無意味」
「一律で上げると地方がモリモリ沈んでいって、東京一極集中が高まるのでは?」
「1000円になったら小売と外食は死ぬ」
「参院選対策では」
「この景気後退局面で最低賃金を引き上げれば、失業者が増え、さらに景気は後退するだろう」
「最低賃金を1000円目指すなら、103万の壁もとっぱらって欲しい」
「賃上げは有難いけど、要求される労働力・責任も大きく重くなりそう」
「時給が数十円あがるより正規雇用につながるような仕組みを考えて欲しい」
「所得税がより多く引かれる人や、交通費出なくなる会社が多くなるかも」
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