怒る男性は「説得力がある」と受け止められる しかし女性は...(研究結果)

怒りは男女で違って受け止められる。
circa 1955: A woman gestures with her index finger as she scolds her husband, who stands with his arms folded in front of a window with drapes. She holds one hand on her hip. (Photo by Harold M. Lambert/Lambert/Getty Images)
circa 1955: A woman gestures with her index finger as she scolds her husband, who stands with his arms folded in front of a window with drapes. She holds one hand on her hip. (Photo by Harold M. Lambert/Lambert/Getty Images)
Harold M. Lambert via Getty Images

ニュースレター「レニー・レター」で女優のジェニファー・ローレンスは、男性俳優に自分の意見を率直に伝えたときのエピソードを紹介している。その俳優はローレンスに「僕ら全員、ここでは同じチームのメンバーじゃないか」という返事をしたという。そこにはローレンスが感情的で攻撃的だという意味が込められていて、彼女を落ち着かない気持ちにさせたそうだ。「男性たちは、始終自分の考えを話しています。でも私が同じように自分の意見を述べると攻撃的だと思われるのでしょう」と、ローレンスは書いている。

似たような話はたくさんある。仕事に情熱を持って取り組むYahooの マリッサ・メイヤーCEOは「バカバカしいほど細部に目を光らせている」と陰口をたたかれた。クレア・マカスキル上院議員は、2012年の選挙活動で「女性らしい」ではなく「攻撃的」というレッテルを貼られた。最高裁のソニア・ソトマイヨール判事は、2014年にマイノリティー優遇措置を擁護した際、感情的で興奮しすぎだと批判された

こういったダブルスタンダードについて、これまでにいくつかの研究が行われてきた。ある研究は、女性は「感情的」という固定観念を持たれているだけではなく、グループ討論では影響力、能力、合理性の点で男性に劣っていると思われている、と示唆している。また、女性が主導権をとると罰せられやすいという研究結果もある。

最新の研究で、アリゾナ州立大学とイリノイ大学シカゴ校の研究者たちが、男性と女性が「怒り」を表現した場合、まわりの反応が違うかどうかを調べている。

実験方法

研究では、210人の大学生に、オンラインでの模擬裁判の陪審員になってもらった。6人の陪審員のうち、その他の5人は研究グループが用意した陪審員だったが、それは参加者たちには伏せられた。陪審員は、実際に起こった殺人事件の裁判証拠が渡された後、チャットルームでユーザーネームを作って、全員一致の評決が出るまで評議した。

この実験には事前に筋書きが用意されていた。それは、チャットルームで話し合いをする際、研究者が用意した5人の陪審員のうち、4人は参加者の評決に同意し、1人の陪審員が反対するというシナリオだ。この1人は「協調を拒む陪審員」と呼ばれる。協調を拒む陪審員は、男性 (ジェイソン)と女性(アリス)の場合があり、彼らは感情を一切表さないか、「マジでムカつく」「イラつく」といったフレーズや、大文字の文章(英語では大文字のみの文章は怒りを表す)であからさまな怒りを表現するか、のどちらかの態度をとってもらった。そして評議の途中、4人の陪審員の一人が自分の評決を変えて、協調を拒む陪審員に同意するという流れになっていた。

実験の後、参加者たちには自分が出した最終判決にどれくらい自信があるのかを報告してもらうとともに、仲間の陪審員についてどう感じたかも答えてもらった。他の陪審員がどれほど感情的だったか、怒っていたか、信頼できたか、影響力があったか、好ましい人物だったか、有能だったか、信用できたか、説得力があったか、理性的だったかという点を参加者たちは評価した。

調査結果

実験を分析した結果、女性の怒りは本人たちに不利に働く一方で、男性の怒りは相手を説得するための強力なツールになっていることを研究グループは発見した。協調を拒む陪審員が男性だった場合、多くの参加者たちが自分の意見を疑った。自分が多数派に属していた場合でも同じだった。しかし、協調を拒む陪審員が女性だった場合、参加者たちが影響を受けるケースは少なかった。なかには、女性と意見が違うことで、参加者が自分の意見にさらに自信を持つようになった人さえいた。

協調を拒む陪審員は、男性も女性もチャットでは全く同じ言葉遣いをしたため、参加者は男女のコミュニケーション方法の違いや、表情の違いを知ることはできない。それでも、怒りを表現したのが男性か女性かで違いが生じた。男性が感情的だとみなされた場合、その男性は怒ることでより信用を得た。しかし女性が感情的であると認識された場合、参加者達は自分の意見が正しいと確信を持った。例えその女性が信頼できると考えていてもだ。研究グループは次のように述べている。「女性が怒りを表すと、その女性が信頼できないと思われるだけでなく、女性の信頼性を評価することさえも重要ではないように思われます」

研究のポイント

研究グループは、「この調査結果は、社会的な影響力が『どういった感情』が『誰によって表現されたか』で、ある程度決定されることを実証している」と述べる。これは、性差による差別を理解するのに役立つだろう。たとえば、メイヤーCEOの指導力が「バカバカしいほど細部に目を光らせている」と言われる一方で、同じくらい厳密な経営スタイルで知られるスティーブ・ジョブスが「細部まで目が行き届いている」と賞賛されている

研究結果を一般化できるのかはまだ明らかではないが、この研究結果は、性別ゆえに女性が受ける偏見についての調査にをさらに深める助けになるだろう。

日々の生活で女性は、自分が過度に敏感になっているとか、被害妄想に陥っていると感じることがあるかもしれない。しかし、本当は怒っていい理由が十分にあると知っていて欲しい。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

【関連記事】

注目記事