私は、イギリスの歌手アデルの新曲「Hello」を、少なくとも20回は聴いている。そして今のところ止めようという気もない。
曲を聴き終えて、もっと明るい曲に変える準備ができたと思っても、何かが私を(悲しい曲に)引き戻すのだ。失恋したわけでも、ついてない一日でもない、というのは関係ない。そして歌詞に浸りながら、もう一度聴かずにはいられなくなってしまうのだ。もう一回、そしてさらに、もう一回……。
あなたにもこういった経験はないだろうか? 多くの人は身に覚えがあるはずだ。少なくとも科学的な見地からすると、私たちはマゾヒストというわけではないのだ。音楽は、私たちの感情に強い影響を与える。下にあるのは、なぜ悲しい曲ほどくり返して聴いてしまうのかについて、研究に基づく理由だ。
■悲しい曲は、気持ちを落ち着かせる
気持ちが落ち込んでいるときに、いつも悲しいバラードを聴いてしまうのには理由があるのだ。2014年にジャーナル誌「PLOS One」に掲載された論文で、悲しい曲を聴くことは実際に気持ちが落ち着くなど、ポジティブな感情を生み出すという報告がされた。論文によると、悲しい曲を聴いた人は、悲しい出来事が自分の身に起こっていないのはわかりながら、アーティストの悲しみに共感できるので、より感情移入できたそうだ。このことから、なぜ悲しい出来事の後に、悲しい音楽に引き寄せられるか説明できるのかもしれない。
■音楽を聴いて泣くことは、癒しになる
時に音楽を聴いて、涙が出てくることもあるだろう。この気持ちの高ぶりは人間行動のメカニズムに由来するもので、また強い浄化作用を持つものなのだ。最近の研究では、泣くことで気持ちを高めることが報告されている。研究グループによると、実験の被験者が泣いた90分後には、泣く前よりも気持ちが楽になったという。
■私たちの脳が、愛着を生み出す
私たちは気に入ったものと関係を深める。それはおそらく音楽も例外ではない。このことを脳科学に当てはめると、「愛着」と「くり返し」と強い繋がりがあることとわかるだろう。
「くり返し音楽を聴くことで、次に何が来るかをイメージしたり、歌ったりするようになるのです」と、最近出版された「On Repeat: How Music Plays the Mind」の著者エリザベス・マーギュリスが語った。「音楽によって、自分の考えを共有したという気持ちが生まれます。音楽で最も印象に残る体験を話すとき、私たちは音楽と自分の間の境界がなくなったかのように話すものです」
別の言い方をすると、私たちの脳が“関連付け”を行うので、再生ボタンを押し、もう一度聴いてしまうのだ。私たちの脳がそうせざるを得ないのだ。
そう、だから私は、堂々と21回目の「Hello」を再生するのだ。
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