「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」で描かれた2015年10月21日が到来 映画と現実の違いは?

1989年に公開された『バック・トゥ・ザ・フューチャー 2』で、主人公マーティがタイム・トリップした30年後のその日が、ようやくやってきた。2015年10月21日。マーティがタイムスリップした「2015年の世界」を、現実と比べてみよう。

1989年に公開された『バック・トゥ・ザ・フューチャー 2』で、主人公マーティがタイム・トリップした30年後のその日が、ようやくやってきた。2015年10月21日。マーティがタイムスリップした「2015年の世界」を、現実と比べてみよう。

ゴミで動くデロリアン

愛車「デロリアンDMC-12」を改造したタイムマシンで未来から戻った科学者“ドク”。彼が投入した燃料はバナナの皮やジュースの飲み残しだった。

ごみを燃料とする技術は、バイオ燃料という形で実現済みだ。リサイクル会社の日本環境設計はメモリアルデーとなる21日、使用されなくなった古着をバイオ燃料にリサイクルし、それで「デロリアン」を動かすイベントを開催する予定だ。

日本環境設計が開発した古着のリサイクル燃料で走るデロリアン
日本環境設計が開発した古着のリサイクル燃料で走るデロリアン
日本環境設計が開発した古着のリサイクル燃料で走るデロリアン
日本環境設計が開発した古着のリサイクル燃料で走るデロリアン

日本環境設計は、Tシャツなどの綿製品の古着からバイオ燃料の一種であるバイオエタノールにリサイクルすることに、世界で初めて成功した企業で、タオルの名産地である愛媛県今治市に工場を構えている。これまでタオルの生産過程で出た綿繊維くずは、焼却処分されることがほとんどだったが、同社の工場でバイオエタノールに変えられるようになった

空中道路

21日の午後4時29分。未来へタイムスリップしたマーティたちが到着したのは、カリフォルニアの空中高速道路「スカイウェイ」の真ん中だった。浮かんでいる交通標識には、フェニックス、ボストン、ロンドンの文字があり、スカイウェイは世界各国につながっていることを予感させた。

残念ながら、現実世界ではスカイウェイまでは実現されていないが、空を飛べる自動車は、スロバキアのエアロモービル社が開発中で、2017年には発売される予定だ。翼を格納できる飛行機で、自動車としても道路を走ることができる。ただし、映画のように垂直離陸はまだできない。

秒単位の天気予報

デロリアンから降りるとき、ドクは腕時計を見ながら「あと5秒後に雨が止む」と断言。実際にその通りになった。

現実世界でみると、2004年に運用が始まった気象庁の「降水ナウキャスト」が、1時間先までの5分ごとの降水の強さを予報している。

自動で紐を締める靴・自動で体型にフィットする福

未来に降り立ったマーティは、目立たないように服を着替える。映画の中の2015年の服は、ボタンを押すと着ているものが自動的に体にフィットしたり、濡れていたのに乾いたりするようになっていた。靴も、足を入れただけで自動で紐が絞まる。

Nikeは自動紐結び機能付きスニーカー「Nike Mag」を開発中で、2015年中に発売すると明らかにした

Nikeが初めてテレビ広告を出した時の広告代理店「ワイデン・アンド・ケネディ」に務めるアートディレクター、マックス・アーデンバーガーさんは9月、Nike Magを手にする自身の写真を、「2015年10月21日」とのコメント付きでTwitterに投稿した。

一方、カナダの起業家も「POWERLACE」という名前の自動靴紐結び機能付きスニーカーを開発中だ

レーザーディスクの行方

一緒に未来にやってきたジェニファー(マーティのガールフレンド)は、知りすぎだとして催眠装置により眠らされてしまう。少しの間、ジェニファーをその場に残しておくことにしたマーティたちが、ジェニファーを運んだシーンに映っていたのは、ゴミ捨て場に捨てられた大量のレーザーディスクだった。

1985年に業務用カラオケソフトが発売開始されたレーザーディスクは、カラオケブームの到来とともに、1990年の最盛期には年間生産量が3000万枚を超えた

しかし、90年代半ばにDVDが登場すると、メーカー各社がレーザーディスク製造から撤退。2007年3月末に生産が全世界で終了した。歴代売り上げランキングが1位だったのは、1992年3月に発売された『ターミネーター2(シネスコ版)』だった。

東京は株価が上昇、アメリカの大統領は女性

マーティは未来で見た最初の新聞で、自身の息子が逮捕されるというニュースを知る。映画の中の設定では、2015年には弁護士制度が廃止されており、マーティの息子の裁判は2時間で結審するというスピード裁判のシステムになっていた。

その他、新聞の1面には「東京は株価が上昇」の見出しが左側の記事リストにあった。

映画が作られた1989年の日本はバブルのまっただ中で、日経平均株価が史上最高値の3万8957円44銭をつけた。9月にはソニーがアメリカのコロンビア映画を買収。10月には三菱地所がロックフェラーセンターを約2200億円で買収するなど、日本企業は飛ぶ鳥を落とす勢いだった。

その他、映画中の新聞には、「女王ダイアナ、ワシントンを訪問へ」「大統領は、彼女自身が同じ質問に応えるのは疲れたと述べた」などの記事もあった。イギリスのダイアナ妃は、1996年に死去。また、アメリカの女性大統領は、まだ実現していない。

犬の散歩も自動化

映画の中の2015年は機械化が進み、ガソリンスタンドや事件の取材、犬の散歩などが無人でも行えるようになっていた。

現実世界で映画に近づいたのは、犬の散歩。ドローンを使って犬の散歩を行なう人が現れている。

3Dホログラム

未来の街へ繰り出したマーティ。映画館で上映されていたのは、スティーブン・スピルバーグ・Jr監督作品の「ジョーズ 19」。映画の宣伝には飛び出す映像が使われていた。

この技術は現実世界で「3Dホログラム」という形で存在。ボーカロイドの「初音ミク」は3Dホログラム映像だけでコンサートを開けるほど進んでいる。

なお、ユニバーサルは10月5日、実在しない「ジョーズ19」の予告編を公開。19までの過去の作品を振り返ることができる内容になっていた。

宙に浮くホバーボード

追われるマーティーが、逃げるために道行く子供から“借りた”乗り物は、宙に浮くスケートボード「ホバーボード」だった。

トヨタは6月、高級ブランド「レクサス」のサイト上で、ホバーボードを開発したと発表。8月には、実物動画を公開した。

トヨタが公開した種明かし動画によると、このホバーボードは事前に設置された磁石のレールの上だけで浮くことができるしくみ。商品化には、まだまだ時間がかかりそうだ。

解凍すると大きくなるピザ

未来のマーティ一家が夜食べていたのは、冷凍ピザ。電子レンジは音声認識機能で作動。袋から出したピザを皿に乗せてセットし、「解凍レベル4」と告げるだけで、どら焼きほどの大きさに冷凍されていた食べ物が、あっという間にLサイズのピザに早変わりだ。

残念ながら、温めると膨らむような冷凍食品は未だ開発されていないが、音声認識のシステムは進化。スマートフォンなど身近な機器にも使われている。

ウェアラブルデバイス

映画の中には、身につけて使用するウェアラブルデバイスが登場する。これらは、Google Glassなどの形で実現されている。

テレビ電話とFAX

映画が作られた1989年には、まだ壁掛けテレビはなかったが、映画内の2015年には大画面の薄型テレビが登場している。大人になったマーティーがテレビ会議をする姿も紹介されていた。

しかし、テレビ会議はインターネットを使ったものとは考えられていなかったようだ。映画の中で大人のマーティが受け取る解雇通告は、電子メールではなくFaxで送られてきたのだ。

ホームユース向けファクシミリが開発されるようになるのは1990年頃。Faxが家庭に普及するのは、映画制作よりずっと後のことだ。

タブレット

一方で、タブレット端末のようなものが作られることは予測されていた。

どのようなインターフェイスで、どのようなデータを保有しているかなどは映画からははっきり分からないが、指紋を照合して身元を確認したり、寄付を行うなどが行える端末が映画の中に使われている。

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