カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が指定管理者となっている佐賀県の武雄市図書館で、図書1万冊をCCCの関連ネット古書大手「ネットオフ」から購入、その中に古い実用書などが多数含まれていた選書問題で、武雄市教育委員会の浦郷究教育長と当時の責任者だった樋渡啓祐前市長が9月11日、それぞれ釈明文を公表した。
浦郷教育長は武雄市の公式サイトで、「書架の高い部分には本の落下防止として柵を新たに設置したこと」など、利用者の安全対策が緊急に必要となり、古書を購入することでコストを抑えたと釈明。樋渡前市長は、この決定について市教委に委ねており、「詳細まで関知していなかった」と自身のブログで説明。「行政手続として問題はなかったにしても、プロセスについて説明を怠っていたこと」について、「私の責任は重い」として謝罪している。
■「20万冊の開架」実現のために書架を高層化した結果……
この問題は、武雄市図書館がリニューアル時に蔵書を強化するため、1万冊の図書を購入したが、ネットオフから購入した上、10年以上前に刊行された実用書などが多数含まれており、その選書に批判が集まっていたもの。
武雄市図書館は2013年4月、「20万冊の開架」をうたい文句にリニューアルオープンしたが、浦郷教育長によると、その際に書架を高層化したため、本の落下防止対策が緊急で必要になったと説明。2階部分の「キャットウォーク」(通路)にも高層の書架を設けており、壁側に荷重がかかるような対策も講じなければならなくなり、その経費1224万円をCCCへの業務委託料の範囲内で調整したという。そのため、図書購入費として2056万円の予算を確保していたが、古書1万冊を756万円で購入してコストカットを実施。また、この決定については、「教育委員会の判断」だったとしている。
以下、浦郷教育長のコメント全文。
カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社を指定管理者として運営している武雄市図書館について、一部メディア等で指摘されておりますリニューアルオープン時の蔵書購入について、下記のとおりご説明します。
・リニューアルオープン時の蔵書購入については、「新図書館サービス環境整備業務委託」としてカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)を受託事業者とした委託業務の一部で実施したものであります。
・当該図書の選書についてはCCCが行い、市が確認して整備を行いました。
・委託業務を進める上で、利用者の安全対策に対応した整備等が緊急に発生したため、教育委員会の判断により委託料の範囲内で調整を図り、中古本(756万円)を購入することで当初予定額(2056万円)を抑え、安全対策を講じることとしました。
・ここでいう安全対策とは、書架の高い部分には本の落下防止として柵を新たに設置したこと、また、キャットウォーク上の書架については壁側に荷重がかかるような対策等(1224万円)を講じたものであります。
・今回の「新図書館サービス環境整備業務委託」については、双方協議の上、仕様書に基づき行われたものですが、市議会をはじめ、関係各位に対して十分にご説明を果たせなかったことに関して、教育委員会としてお詫びいたします。
・なお、CCCからの寄贈の申し出については、より精度を高めた蔵書を導入したいというCCCの姿勢は受け入れる方向で協議してまいります。
・今後とも指定管理者であるCCCと連携し、更により良い武雄市図書館づくりに努めてまいります。
・最後になりますが、現在係争中であるために、本件につきましての説明が遅くなりましたことをお詫びいたします。
■樋渡前市長「プロセスについて説明を怠っていた」
また、当時の責任者だった樋渡前市長も同日、自身のブログでこの問題について、以下のように説明している。
この決定プロセスについては、教育委員会及び現場に委ねており、当時の行政の最高責任者である私が詳細まで関知していなかったことについて、反省の上、お詫び申し上げます。
確かに、行政手続として問題はなかったにしても、プロセスについて説明を怠っていたことは所管の武雄市教育委員会、そして、予算編成権を有する市長であった私の責任は重い。(抜粋)
しかし、一方で、武雄市図書館のリニューアルの準備期間が1年に満たなかったことに言及、「無名の地方の一市町村である武雄市が、スピードを持って価値を形にしなければ、埋没してしまう」という危機感から、「とにかく早く形にして、魅力ある図書館をつくって、市の財産として皆さんと共に育てていきたい」と思い、スピード重視によるしわ寄せがあったことなどを釈明している。
また、佐賀地裁で9月11日、武雄市の住民グループが武雄市図書館のCCCとの契約は違法だとして、小松政市長を相手取り訴えた訴訟の第一回口頭弁論が開かれた。朝日新聞佐賀総局のツイートによると、武雄市は争う姿勢という。
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