アメリカの元大統領エイブラハム・リンカーンと女優エマ・ワトソンには共通点がある。大統領エレノア・ルーズベルトとシンガーソングライターのクリスティーナ・アギレラもそうだ。彼らは、全人口の3分の1から2分の1を占めるといわれている内向的な人たちだ。
外向的な人は、他人と関わりがエネルギーになるが、内向的な人はひとりでいるときにエネルギーを充電する。外部からの刺激の強い場では、かえって消耗してしまう。スポットライトの栄光を浴びるのは外向的な人たちと考えられることが多いが、しかし、実は昔も今も多くの有名な人物は内向的な人たちなのだ。
内向的な人は、恥ずかしがり屋で、誰にも相手にされない“壁の花”ではない。誰もが実績のあるリーダーであり、素晴らしいスピーチができる。信じられないって? ならば、下の13人の内向的な有名人たちのリストを見てほしい。下のリストは氷山の一角で、元バスケットボール選手のマイケル・ジョーダンや、女優グウィネス・パルトロー、俳優のハリソン・フォードなど、他にもたくさん内向的な著名人はいる。
■J・K・ローリング
ロバート・ガルブレイスというペンネームで「カッコウの呼び声」という作品を発表していた、「ハリー・ポッター」の作者J・K・ローリング。彼女は内向的な人とされている。内向的な人は、ひとりで考えごとをしているときが、一番創作的になれるといわれている。実際にローリングが1990年に初めに、「ハリー・ポッター」のアイデアを思いついたのは、マンチェスターからロンドンへ向かう電車にひとりで乗っていたときだった。
「6歳のときから小説を書いていますが、そのときほど自分のアイデアに興奮したことはありません。ストレスだったのは、ペンのインクが切れても、自分があまりにシャイで、周りの人にペンを貸して下さい、と頼めなかったことです……」とローリングは書いている。「書けるペンはありませんでしたが、いいことだったと思います。遅れた電車の中で、4時間座って考えていたときに、痩せて黒髪でメガネをかけた、自分が魔法使いであると知らない男の子の具体的なアイデアが、頭の中に湧いてきたんです」
■ビル・ゲイツ
作家で内向性研究の専門家であるスーザン・ケインは、マイクロソフトの共同創立者であるビル・ゲイツを内向的な人物だと述べた。彼女は著書の『Quiet』(邦題:内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力)で、「個性を引きのばすことはできますが、限界があります」と書いた。「ビル・ゲイツは、いくら社交スキルを磨いてもビル・クリントンにはなれません。ビル・クリントンも、どれだけパソコンの前でひとり過ごしても、ビル・ゲイツにはなれません」
また「ビル・ゲイツは、シャイではない内向的な人の典型でもある」と、ケインは自身のブログに書いている。「ビル・ゲイツはもの静かで読書家ですが、他人の意見に動じることはありません。内向的ではあるけれどシャイというわけではないのです」このケインの言葉は、ビジネス界の重鎮の心を捉えたようだ。ゲイツは、ケインをTEDトークを13のお気に入りのひとつに挙げている。
■エイブラハム・リンカーン
「アメリカ合衆国が始まったばかりのとき、内向的な人物の方が尊敬を得やすかったのです」とケインがAmazon.com.のQ&Aで話している。「かつてアメリカは内面的な強さ、品格、誰も見ていないときに良い行いをすることに価値を置く、歴史家のウォレン・サスマンのいう『個性の文化』を体現してきました。静かでいること、控えめであること、品があることで良い印象を与えることができたのです。エイブラハム・リンカーンはエマーソンがいう『自分の優位性で人を不快にすることが決してない』人物として崇められたのです」
■クリスティーナ・アギレラ
ポップスターであり、リアリティ番組にも出演するクリスティーナ・アギレラは、ステージの上では外向的にみえるかもしれないが、実際は全く逆だといわれている。「もし髪がブロンドでなかったら、彼女だと分からなかったでしょう」と、記者のゲイビー・ウッドは2010年に発行された雑誌「マリ・クレール」インタビューのなかで書いている。「彼女は小柄で、しかもシャイに見えるからです。彼女はこれまでずっと『“ものすごく”内向的だった』といっています」
■エレノア・ルーズベルト
歴史上最も長くファースト・レディを務めたエレノア・ルーズベルトは、多くの公務に出席し、カンファレンスに出席したり、講義を行ったりした。さらに大統領だった夫フランクリン・ルーズベルトが亡くなってからも、国連でアメリカのスポークスマンを務めたことで有名だが、彼女も内向的な人物であったと考えられている。ホワイトハウスの公式サイトに書かれている経歴では、「シャイで不器用な子供で、認められることと愛情に飢えていました。その後すべての宗教、人種、国の恵まれない人たちのことを考える女性になり、彼女の優しく誠実な人柄は、国家元首や第2次世界大戦中の海外の訪問先の軍人まで、多くの人に慕われました」と書かれている。
エレノア・ルーズベルトの言葉「一番大事なのは、自分と友達になることです。そうでないと世界中の誰とも友だちになることはできません」
■コートニー・コックス
俳優デヴィッド・アークエットとの破局の理由のひとつが「性格の違い」だったというコートニー・コックスは、2011年、ラジオ番組のインタビューで「私は家にこもりがちで、人を家に招くの好きなんですが――でもあまり社交的でないので――だからあまり大好きなわけではありません」と、コートニー・コックスは2011年のハワード・スターンのラジオ番組のインタビューで話している。「デヴィッドはもう酒は飲みません。完全にアルコールは断っているのですが、外に出かけてダンスに行くのが好きです。彼は本当に人といるのが好きな人で、とても社交的です。それと比べると私はずっと内向的ですね」
■アルバート・アインシュタイン
「相対性理論」を唱えた世界的に高明な物理学者も、内向的だったといわれている。他の内向的な人たちと同じく、アインシュタインも、ひとりで考えごとをしているときが一番仕事がはかどったようだ。よく引用されるアインシュタインの言葉「静まりかえった生活の退屈さと孤独が、創造心をかきたてる」
■エマ・ワトソン
「パーティーでパートナーのいない女の子として評判になったのは、自分の内向的な性格によるわ」と、女優エマ・ワトソンは話している。
「面白いですね。周りの人には『外に出ないで、いつも酔っぱらっていてクラブに行くなんて、すごくいいじゃない』みたいなことをよく言われるので。でも私は、もともと内向的な人間なだけで、必要があってあえてそうしているわけではありません。私は純粋に自分でいるだけなんです」とエマ・ワトソンは語った。
「スーザン・ケインの『『Quiet』(邦題:内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力)は読みましたか? ……その本でどのように 外向的な人が社会のなかでこれだけ大きな存在になったかを議論しています。もしあなたも外向的な人だったら、ちょっとおかしいと思ったほうがいいですよ。そういうことがたくさんありました。自分に自信が持てるようになりました。どうしよう、私っておかしいんだ、外に出たくないし、まわりの友だちがやりたいことも、(私は)したくないと思ってたからです」
■マハトマ・ガンディー
ガンディーの功績によって、「素晴らしいリーダーになるために外向的である必要はない」ということが証明された。かつてガンディーは「優しく穏やかなやり方で、あなたは世界を揺り動かすことができる」と語った。
■ローザ・パークス
1955年、白人男性にバスの席を譲ることを拒否した、公民権運動の伝説であるローザ・パークスも、内向的だったと考えられている。スーザン・ケインは、著書のなかでこのように書いている。
「ずっとローザ・パークスは、気性の激しい堂々とした女性で、睨みつけるバスの乗客たち立ち向かう事の出来る人物と思っていました。しかし2005年、彼女が92歳で亡くなったとき、死亡記事に書かれていたのは、物腰の柔らかい親切で小柄な女性だったということだった。「内気でシャイ」だが「ライオンの勇気」を持つ女性と書かれており、「激しい謙虚さ」「静かなる不屈」といったフレーズが多く見られた。
■オードリー・ヘプバーン
女優の仕事をしていたが、オードリー・ヘプバーンも内向的だったという。「私は内向的で……1人でいるのが好きで、外にいるのが好きで、犬と散歩をしながら木や花、空を眺めるのが好きなの」という彼女の言葉は、今なお引用されている。
■ウォーレン・バフェット
スーザン・ケインの本に、「なぜウォール街は大暴落して、ウォーレン・バフェットは成功したか?」という章がある。内向性と外向性の性格の違いを説明することで、この質問に答えている。
「ウォーレン・バフェットは伝説的な投資家で、世界で最も裕福な人物のひとりである。彼はこの章で探ってきた性質である、知的な粘り強さ、用心深い思考、そして危険なサインを見極め行動する能力によって、彼自身と彼の会社バークシャー・ハサウェイの株主に、何十億ドルという金を呼び込んだのだ。バフェットは周りの人間が気が動転しているときも、慎重に考えられる人物として知られている。かつて「投資での成功は、IQとは関係ありません」とバフェットは語った。「通常の知性があれば、あと必要なのは、投資で他の人に迷惑をかけてしまう衝動をコントロールできる気質なのです」
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
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