2020年東京オリンピックの組織委員会は9月1日、公募で選ばれた佐野研二郎氏デザインの公式エンブレムを撤回すると正式に決めた。近く新たなデザイン案を公募し、コンペを実施するという。
組織委員会の武藤敏郎事務総長は記者会見で、経緯を説明した。
説明によると、8月28日に修正前の原案を公表後、展開案の画像流用や、「ヤン・ヒチョルト展」のロゴとの類似など、新たな疑問が指摘されたため、佐野氏と永井一正・審査委員長を呼んで9月1日の午前中に話し合った。
佐野氏は展開案については無断使用を認め「審査委の内部資料のために作った。7月24日の公式エンブレム発表の際にも使われたが、公になる前に権利者の了解を得ることを怠った。不注意だった。権利者に事後的だがどうしたらいいか話をしている」との説明があった。「ヤン・チヒョルト展」については、見にいったことは認めたが「ポスターやバナーは記憶にない。独自にあのデザインを作った」と否定したという。
その上で「模倣であるから取り下げるということでは納得できない」としながら、昼夜を問わず佐野氏や家族への誹謗中傷が続いていることや、「デザイナーとしてオリンピックに関わることが夢だったが、今や一般国民から受け入れられない、むしろオリンピックのイメージに悪影響を及んでしまう。取り下げてオリンピックを成功させてほしいという気持ちの方が強くなった」として、原作者として取り下げを提案した。
永井委員長も「デザイン界の理解としては、デザインの基本がまったく異なるのでオリジナルと認識されると思うが、ここまでいろんな形で問題になったときに、残念ながら一般国民にはわかりにくい」と述べ、取り下げに同意した。個別に連絡した8人の審査委員は、1人を除いて取り下げに同意、または永井氏に対応を一任したという。
武藤氏は、ベルギーのデザイナーからIOCに訴訟を起こされている件や、佐野氏がサントリーの景品で他者の写真の無断使用を認めた件については「まったく関係ない」と否定した。「国民の皆様の支援がないものを使い続けることが、東京大会を成功に導くという我々の考えにそぐわない」と強調した。
武藤氏によれば、コンペ1等の賞金100万円は支払わないことにした。損害賠償や発注済みのグッズなどの損害算定はまだしていないという。「国民の皆様型に大変ご心配をおかけし、関係する東京都、政府、JOC、JPC、IOC、IPCに大変申し訳ない。スポンサー各社の皆様に大変ご迷惑をおかけしました。スポンサーの皆様には文書説明のほか、個別にご報告してご理解を得たい」と陳謝した。
佐野氏は会見に同席しなかった。
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