【マタハラ】認知は9割に上昇、実態は6割が「変化なし」

働く女性が妊娠や出産をきっかけに、職場で嫌がらせをされたり、解雇や降格などの不当な扱いを受けたりする「マタニティ・ハラスメント」(マタハラ)の意識調査が行われた。調査は日本労働組合総連合会(東京都千代田区、連合)が実施、2013年から今年で3年目となる。今回、約9割の女性が「マタハラ」という言葉を知っており、2013年の6.1%に比べて、飛躍的に認知度が上昇していた。
Beijing,China
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BJI / Blue Jean Images via Getty Images

働く女性が妊娠や出産をきっかけに、職場で嫌がらせをされたり、解雇や降格などの不当な扱いを受けたりする「マタニティ・ハラスメント」(マタハラ)の意識調査が行われた。調査は日本労働組合総連合会(東京都千代田区、連合)が実施、2013年から今年で3年目となる。今回、約9割の女性が「マタハラ」という言葉を知っており、2013年の6.1%に比べて、飛躍的に認知度が上昇していた。

しかし一方で、女性の周辺で働く女性の妊娠出産に対する意識変化を尋ねた設問では、6割を超える人が「変化がない」と回答。最近、話題となっている「女性活用」についても、「女性だけに仕事と育児・家事の両立を求める風潮に疑問」とする人が5割を超え、「机上の空論」とする人も5割近く、働く女性の環境改善には、課題が多いことが浮き彫りとなっている。

■解雇や契約打ち切りの被害は非正規雇用が正規雇用上回る

この調査は、2015年8月12日から14日にかけて、インターネットを利用し、全国の過去5年以内の在職時に妊娠・出産の経験がある20代から40代の女性654人を対象に実施された。正規雇用者は39.9%、非正規雇用者は60.1%だった。連合がマタハラの意識調査を行うのは3回目だが、今回は来年の育児介護休業法の改正をにらみ、置き去りにされる懸念がある非正規雇用者の育児環境などに焦点をしぼった設問も聞かれたという。

まず、マタハラという言葉を知っていると回答した人は、93.6%で、2013年(6.1%)、2014年(62・3%)に比べ、飛躍的に認知度が上がっていた。マタハラ被害にあったことのある人は、28.6%と3割近かった。メディアで報道される機会が増えたことや、2014年に妊娠をきっかけに降格させられた女性が訴えた訴訟で、最高裁が男女雇用機会均等などに違反するという初の判断を下したこともあり、マタハラの認知を広めたようだ。

マタハラ被害にあった人は、非正規雇用が24.4%、正規雇用が34.9%と正規雇用が多いが、解雇や契約打ち切り、自主退職への誘導がされた人は非正規雇用が13.2%で、正規雇用の8.8 %を上回っていた。

■マタハラの原因は「男性社員の理解不足」が7割

マタハラの起こる原因について質問したところ(複数回答)、「男性社員の妊娠・出産への理解不足・協力不足」が67.3%と最多で、2014年の66.1%とほぼ同じだった。次いで、「職場の定常的な業務過多・人員不足」が44.0%、「女性社員の妊娠・出産への理解不足・協力不足」が39.1%となっている。

では、どうしたらマタハラが起こらないよう対策ができるかという質問(複数回答)では、「休業・復帰しやすくなる制度や会社にとっての負担軽減、または制度に関する会社の理解促進」と回答した人が50.3%で5割を超えた。次いで、「育児に携わった女性のマネジメント・経営陣への登用」(48.3%)、「行政による保育園や学童保育制度の改革」(46.6%)と答えた人も5割近かった。

しかし、マタハラへの認知度は9割に上がっているものの、「あなたやあなたの周囲で、働く女性の妊娠出産に関する意識変化を感じることがあったか?」という質問では、「全く変化を感じない」「ほとんど変化を感じない」と回答した人が合計で63.5%と、6割を超えていた。

■8割が「保育園や学童保育の環境がキャリアに影響する」

女性が働き続ける上で、保育園や学童保育など子どもを預けられる環境が仕事選びやキャリア形成に影響したかという質問に対しては、「影響がある」とした人が83.1%と実に8割を超えた。

「影響があった」と回答した人にさらに、どのような影響だったかを質問したところ、「時短制度など働き方に変化があった」(50.2%)に次いで、「仕事を辞めざるをえなかった」(32.6%)と、子どもを預けられずに退職した人が目立った。

では、どうすればその影響が軽減できるかという質問に対しては、「託児施設の増設・増員」とした人が60.5%にのぼった。

■契約社員なども育休を取得できることを知らない人が7割

働く女性でも、正規雇用と非正規雇用では育児環境が異なってくる。「保育園の入園審査で、パートなどでは不利になりやすい状況についてどう感じるか」という質問に対しては、「フルタイムの勤務でなくても、入園に不利にならないようにしたほうが望ましい・するべき」と回答した人が、正規雇用の回答者では69.9%、非正規雇用の回答者では75.8%にのぼり、正規、非正規であまり違いはなかった。

また、埼玉県所沢市が第二子の育児休暇を取得した場合、第一子を保育園から退園させるルールを設けて、住民から訴訟を起こされていることに対して、意見を聞く質問もあった。「2人目を産むのを躊躇するきっかけになると思う」(59.9%)と6割近い人が回答。「2人目育休中の退園をさせるならば、必ず戻れるなどのルールをきちんと作るべき」(49.7%)と、否定的な意見が多かった。

パートや契約社員など、有期契約で働く人でも、条件をクリアすれば育休を取得できることを知っているかという質問では、「知らない」と回答した人が合計で75.3%となり、8割近い人が知らないという結果となった。

こうした育休取得条件に対して、どう思うかについては、緩和を求める人が70.7%だった。

■「働くにあたり全員が事実を知り、知識を」

この他、マタハラなどの問題がある中、話題になっている「女性活用」の議論についてどう思うかという質問に対しては、「女性だけに働くことと家事・育児の両立を求める風潮に疑問」(55.7%)、「現場の声が届いていない、机上の空論」(45.1%)、「非正規社員の女性の働き方にも目を向けてほしい」(41.6%)という声が上位を占めた。

自由回答では、以下のような意見が寄せられた。

働くにあたり全員が、今現在の事実を知る必要がある。また、少子化を問題とするならばもっと出産についての知識を身につけ、男女共に自分のことと置き換えて考えてほしいと思う。妊娠を素直に喜べない社会はおかしい。(20代・九州地方・契約社員)

男女問わずまずは非正規の雇用の問題を改善してほしい。管理職で考え方が昔のままの人もいる(結婚、妊娠、出産したら女性は家庭に入る、子育ては女性の仕事など)ので、現状を知ってほしい。(30代・東北地方・契約社員)

育児・産休などに関して各相談機関も相談に乗るだけで、全く機能していない。強制の法律でもできなければこの状況は変化しない。(30代・九州地方・契約社員)

女性活用よりも男性が家庭に入れる取り組みの方が大事だと思う。実際育児家事を経験してみないとわからな いことは多いし、やりたくても勤務が激務や職場の理解がなくできない男性も多い。経験することで自然とマタハラ等も減ると思う。結婚、出産で環境が変化するのは男性だって同じはずなのに、女性ばかりが問題視されることも 疑問。社会に出る女性が増えている現状、男性だって家庭をかえりみるべき! 制度や理想論だけでは、進まない。実際男性がやってみるべき。(20代・関東地方・公務員)

■9月17日にマタハラの無料電話相談を実施

連合では9月17日、マタハラに悩む人を対象にした無料電話相談を実施する。相談は10時から20時までで、産休・育休を経験した女性の弁護士、社労士、連合本部役職員が対応するという。

電話番号は次の通り。 0120-3919-25(フリーダイヤル)

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