汚染された場所の写真をアーティストが撮り、土地を汚染している化学物質にその写真を浸すと何が起こるのか? この通り。
ブランドン・セイドラーはニュージャージー州の「海と山が出会う」場所で生まれた。不完全さの中にある美しさを、その場所は教えてくれた。子供の頃に見た不完全さは今、セイドラーの写真家としてのキャリアの中心的なテーマとなっている。彼の幻覚的なシリーズ、「Impure(不純)」は、古いSF映画からそのまま切り抜いたかのように見える風景や、気味が悪いほど見覚えがあると同時に、異質なものを混ぜ合わせた色と形を特徴とする。
しかしこれはSFではない。セイドラーは実際にある場所を記録する。その多くが歴史的にさまざまな化学汚染物質に汚染されてきたニュージャージー州やその周辺の陸地とハドソン河だ。次に、撮った写真のネガを、撮影した水や陸地を汚していると認められる化学物質と全く同じ物質に浸す。その結果は、アメリカの汚染された、自然の安息地の現実を明かす試みだ。
「ニュージャージー州のラマポ大学で最終学年の時にこのプロジェクトを始めました」とセイドラーはハフポストに説明した。「最初はただ写真を撮ってカメラやフィルムを化学物質で変化させる方法を探していました。何度か批評を受けた後、自分のイメージに意味を与えるために、何かを加える必要があると判断しました。地域の化学物質の流出を調査して、フィルムのネガを組み合わせることに決めたのはその時です」。
海洋生物学者の姉と化学エンジニアの祖父の影響で、セイドラーは大学に行く前からすでに、化学や彼の故郷の州が抱えるさまざまな環境問題に興味を持ち始めていた。「Impure」は興味と芸術を融合する良い方法だと知り、情熱的な試行と失敗のプロセスに取り掛む機会をもたらした。山と海の写真を撮った後、まず使い捨てカメラを使用し、次にニコンF100で海や山の写真を撮った後、さまざまな場所にある化学物質をネガに取り込んだ。混合、スプレー、浸し、塗り、どのように作用するのかはわからなかった。
「まずネガを化学物質に浸します」。彼は詳しく説明する。「化学物質が泡立つようネガに吹き付けたり、塗ったり、化学物質とフィルムを密封容器の中で混ぜたりしました」。美しさのため、彼は非対称性、ユニークな組み合わせ、強烈な色彩を探していた。
「私が一番引きつけられるイメージは、より強烈で鮮やかなイメージです」と彼は付け加えた。「環境から際立つ目を奪うような色が好きです。最終結果が予測不可能に見えるのが気に入っています。多くの対照的な色がネガに残って、面白い組み合わせになるものも気に入っています。対称性の破れによって引き立つイメージも大好きです……私にとって、それはミスマッチと予測できないイメージであり、予想を超えた、新しいものなんです」。
しかし広い意味で言うと、視覚を越えて、写真を見る人たちがこのような疑問を持つことを彼は願っていた。「化学物質がフィルムに影響を及ぼすなら、自然に対してはどんな影響を及ぼすだろう?」
2014年以降の環境保護庁(EPA)の調査によれば、汚染物質がニュージャージー州の水を汚染した事例は、1770ある。ポリ塩化ビフェニル(PCB)、ヒ素、リン、そして低濃度溶存酸素が最も多い汚染原因の1つだ。人が生み出した毒素が海岸に及ぼす損害を、原油の大量流出による黒い汚染を除いて、我々は必ずしも物理的に評価することができない。しかし、セイドラーの写真は、肥料の流出や化学物質の流出がどのように自然地帯に染み込んでいるかを視覚化し、私たちにわからせてくれる。ゆっくりと徐々に、しかし常に強いインパクトを持って。
セイドラーはこれまでソーシャルメディアを使って自分の写真が与える影響を評価してきた。そして最終的に彼の最も「いいね!」された画像を、研究とアートを満載した本に仕上げることを願ってKickstarterに向かおうとしている。「別のプロジェクトも構想中です」と彼は私たちに言った。「風景からポートレートに移行し、被写体に普段どんな製品を使っているかインタビューしたいんです。私たちが毎日体につけている化学物質について探るのは楽しいだろうと思います」。
セイドラーの作品は、彼のFacebookとInstagramアカウント、または以下の「Impure」のプレビューで見ることができる。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
【関連記事】
ハフィントンポスト日本版はTwitterでも情報発信しています。@HuffPostJapan をフォロー