中国の中央銀行(中国人民銀行)が追加の金融緩和策を発表したことで、26日のアジア市場では世界同時株安の連鎖がいったんは食い止められている。東京市場でも上海市場でも、これまで大きく値下がりした株式を買い戻す動きが出ている。
ジェットコースターのような乱高下を繰り返したマーケットの混乱は収まったのか。
東海大学の葉千栄教授は25日、ハフポスト日本版の電話インタビューに応じ、中国の景気減速について、「日本のメディアは騒ぎ過ぎている」と指摘。中国株の急落をめぐっては「実際の企業業績を上回る水準で株価が上昇してきたため、適正な水準に戻るのは当然」との見方を示した。
■上海株は「年初の水準に戻っただけ」
――中国を震源とした、世界同時株安が起き、マーケットを震撼させました。今回の事態について、どのようにみていますか?
きっかけは、21日に発表された、8月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)でした。約6年半ぶりの低水準となり、中国の景気減速が懸念される内容となりました。この発表を受け、マーケットでは、中国当局が週末にも景気下支えのため、追加の金融緩和策を発表するのではないか、との観測が出ました。しかし、実際には中国当局は週末には実施せず、週明けからの大幅下落の一因になりました。
――上海株も節目の3000を割り込みました。25日までの過去4日間の下落は、1996年以来最大の下げ幅となりました。急激な下げですね。
株式の割高、割安を判断する1つの尺度としてPER(株価収益率)がありますが、急落前の上海株のPERは20倍に及んでいました。金融セクターを除くと、40倍にも及んでいました。これはかなりの割高です。上海株はここ1年上昇してきました。3000割れは、年初の水準に戻った格好です。当然と言えば、当然です。日本のメディアも騒ぎ過ぎです。中国経済がスピードダウンして、6〜7%の経済成長にソフトランディングするのは決して悪いことではありません。
■政府の介入は「市場のルール違反」
――止まらない株価急落に、中国当局が再び利下げに踏み切りましたね。
市場が売り一色になり、急激な下落が始まると、中国当局が介入してきました。中国では、こうした政府の介入を「国家隊」と呼んでいます。しかし、上場企業の銘柄の売買停止や、金融・証券会社セクターへの集中的なテコ入れは本当はやってはいけないものでした。このようなやり方は市場のルール違反で、やってもあまり意味がありませんでした。
日本ではあまり報じられていませんが、こうした政府の市場介入は中国でもかなり不評です。中国国内でも「やるべきではない」という声がエコノミストの間では圧倒的です。何度も介入してきて、株安が止まらないという事実は、介入しても実効性がなかったことの証しです。自然と正常化に向かわせれば良かったということです。
また、実態経済では、製造業が鈍化し、輸出も減ってきています。民間企業の内需を回復させるために、金融支援が必要なのです。しかし、これまでも、度重なる金融緩和で流動性が高まったものの、資金は証券マーケットに流入し、株式市場の過熱につながりました。
つまり、政府介入の間違いは、1つ目にマーケットのルール違反、2つ目に実効性がない、そして、3つ目に経済の減速傾向の中で、実態経済のためにお金が使われず、証券市場に回っていることがあります。
――中国株や中国経済をみるうえでの今後のポイントはどこにありますか?
まず政府介入を控え、マーケットに任せること。そして、金融緩和によって得られる資金を必要な民間企業、特に製造業にきちんと回さないといけません。銀行や証券セクターに集中させてはいけません。企業業績にふさわしい株価水準にしなくてはいけません。
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