イギリスの覆面芸術家バンクシーが企画した期間限定のテーマパーク「ディズマランド」が8月22日にウェストン・スーパー・メアにある海沿いのリゾート地でオープンする。ハフポストUK版が、いち早くそのテーマパークを見て回った。
ウェストンの海沿いの散歩道の真ん中に座ってみると、ほぼ一晩で出現したディズマランドの不気味な造りに目を奪われる。
約3000坪の海沿いにあるテーマパークには、おとぎ話のお城、亡命希望者で溢れるボートが浮かぶ池、バレエを踊る2人のジャガーノート(インドの古代神、あるいは絶対的な権力者)、バス停の広告掲示板の壊し方の授業を行う無政府主義者のトレーニング・キャンプが用意されている。
ダッジム(小型のバンパー・カー)に乗る死神
踊るジャガーノート
チケット
バンクシーは、「このテーマパークは、アルトン・タワーズ(イギリスの人気テーマパーク)の方が良いと思う99%の人たちのためのアートショーだ」と話した。
ディズニーランドのように、ウォルト・ディズニー社のシンボルであるシンデレラ城に酷似したロゴ付きのリストバンドがゲストたちに配られる。
しかし、似ているのはこれだけだ。ここにあるものは全て、殺風景な色合いが目立つ。黒、茶色、汚いグレー、そして所々に鮮やかな赤が使われている。スタッフですら、このような色合いだ。
アトラクションの中に入ると、みずぼらしいなりをした守衛たちが偽のセキュリティエリアであなたを待っている。辺り一面に、バンクシー的なアート作品、偽物の小道具、偽物のX線スキャナーがある。
全てが味気なく、殺風景で、色を吸い取られている。
中に入って最初に目にする風景
かつてメインのアトラクションはウェストン・スーパー・メアの保養地だったが、今は、朽ちかけて野ざらしになったシンデレラ城がそびえ立っている。
左側にはディズニーのアリエルが身をよじって、インターネットから何かをダウンロードできずに困っているように見える。
川の向こうには警察車両が沈んでいる。元々は北アイルランドで使われていた車両だが、今は砲塔ではなく噴水の側に置かれている。
殺風景というのは、控えめな表現だ
シンデレラ城の中には、おそらく最も精神的にきつい展示が置かれている。
訪れた人が緑のスクリーンを背に写真を撮ると、暗闇の中でつまづき、横転した馬車があることに気づく。
クラシックなディズニーのスタイルで作られた馬の死体が、その側に横たわっている。馬車の中にはシンデレラが横たわっていて、半分外に身を乗り出しているが、明らかに死んでいる。
悲劇の様子を隅から隅まで捉えようとカメラのフラッシュをたく6人のパパラッチたちに、ためらう様子はない。
パリで亡くなったダイアナ妃を、残忍でショッキングに表現している
真ん中の池にある看板にはこう書かれている。 「無料のホットドッグです。ホットドッグの中にどんな動物が入っているか想像できる人は、無料でお持ちください」
そして、アトラクションは家族連れに優しい――ある程度は。
「ポケットマネー・ローン」という展示では、5歳までの子どもがクレジットでおもちゃを買うことができる。トランポリンにのってジャンプしないと、その法外な金利は目に入らない。
会場全体に広がる巨大なギャラリーには、ダミアン・ハースト、ジェニー・ホルツァー、ジェフ・ギレット、そしてもちろんバンクシー自身の作品が展示されている。
バンクシーは会場中に彼自身の10の作品を置いている。シンデレラ城が最も大きく、特注のダッジム・コースターが最もユーモアがあり、死神が小さな車の中で大忙しに跳ね回っている様子を描写している。
断続的に流れるアナウンスでは、会場中に子どもの声が響く。「覚えておいて。野心は自己満足と同じくらい危険なの」と、その声は言う。
今回の内覧会は世界のメディア限定だったが、22日には地元の住民に無料チケットが配られ、ディズマランドを体験する予定だ。
従来のバンクシーのやり方では、地元紙「ウェスタン・マーキュリー」が初めてこのイベントの独占記事を書くことができ、地元住民はテーマパークに入るために新聞を買わなくてはならない。
事前にバンクシーの計画の全詳細を知っていたのは、4人の地元議員だけだった。
I'm inside #Banksy's sinister Dismaland opening to the public on Saturday
#Dismalandhttp://t.co/SqWzyxU9Hapic.twitter.com/4Oyh5hzK9w
— George Bowden (@georgebowden) August 20, 2015
22日に正式オープンするバンクシーの不気味なディズマランドの中にいます
バンクシーはさらに、「私は、会場にミッキーマウスのイメージを持ち込むことを禁止する。2人には断られたが、私が思いつく限り最高のアーティストたちの作品が並んでいる」と語った。
ウェストンの地元住民や観光客は、かつてトロピカーナと呼ばれた、今は寂れた海沿いの観光地にねじ曲がったシンデレラ城が建てられていくのを見て、プロジェクトのサイズと規模を知ることになった。
「映画のセットよりも素晴らしいと思いました」と、エントランスの外に立つ地元住民のイーリン・バスは話した。「地元議員が6カ月間以上このテーマパークの準備にとりかかっていましたが、今その理由がわかりました」
「これは素晴らしいです。これはバンクシーの、この町へのお返しなのです。彼は地元の男なので、トロピカーナで何が起きているか知っているのです」
ディズマランドへの入り口
他の多くの人たちは、何が起きていたのか知る手がかりがなかった。会場の外に立つ気難しそうな警備員たちに尋ねるのをあきらめた。警備員たちは、最初から惨めな気分を高めるために配置されている。
トロピカーナは、14年間放置された。ここ最近では、町の海岸堤防計画のための一時的な物置場として使用された。
バンクシーの作品が数多くあり、プロジェクト全体は秘密と娯楽で飾られている。地元住民たちは、ハリウッドの映画会社のバックロットとして使われていると聞かされていた。
スライドショーで他のアトラクションを見てみよう。
このプロジェクトのポイントが、私たちが余暇を過ごすときに選ぶ場所がいかに虚しい所かを強調することだとすれば、トロピカーナは完璧な場所に思える。ヨーロッパ中どこでも、この類を見ない景色を最後まで残すことはできないだろう。
バンクシーがウォルト・ディズニーを標的にしたのは今回が初めてではない。2005年には、カリフォルニアのディズニーランドにあるサンダーマウンテンに、オレンジのジャンプスーツを着た人形を置いたことがある。
2011年には、グリーンピースのために「ジャングルブック」のキャラクターが処刑されるポスターを制作した。
そしてバンクシーは、過去のディズニーの広告に落書きしたのではと考えられている。
アトラクションの位置を示すイラストマップ
このテーマパークには現代美術アーティストの作品が陳列された3つのギャラリーが置かれる。ウェブサイトには、「これまで北サマセットの港町に集められた中で最高の現代美術」と書かれている。
5週間の会期中、毎週金曜夜にはライブイベントも行われる。ラン・ザ・ジュエルズ、スリーフォード・モッズ、マッシブ・アタック、プッシー・ライオット、そしてコメディアンのキャサリン・ライアンらが出演する。
他にも手作りの模型の村や、バスが取り付けられた美術館、野外映画館があり、園内全体にバンクシーがデザインした「巨大な回転ピン」が装備されるという。
ディズマランドは9月27日までの期間限定オープン。チケットは大人3ポンドで、5歳以下は無料。
この記事はハフポストUK版に掲載されたものを翻訳しました。
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