安倍晋三首相が作成する戦後70年談話に関する有識者会議は6日、報告書を取りまとめた。満州事変以後の日本の行動を「侵略」と明記し、無謀な戦争で多くの被害を与えたと指摘した。中国、韓国とは和解が完全に達成されたとは言えず、東南アジア諸国には謙虚な態度で接することが重要との見方を示した。
有識者会議で座長を務める西室泰三・日本郵政社長らが同日夕、官邸で安倍首相に提出した。首相は報告書を受け、与党幹部と調整した上で、近く談話を決定する。
報告書では、「日本は、満州事変以後、大陸への侵略を拡大し、第1次大戦後の民族自決、戦争違法化、民主化、経済的発展主義という流れから逸脱して、世界の大勢を見失い、無謀な戦争でアジアを中心とする諸国に多くの被害を与えた」と明記した。
一方、脚注では「侵略」の表現に対し、複数の委員から異議があったことを表記した。国際法上、言葉の定義が定まっていないことや、日本の行為だけを侵略と断定することに抵抗があったことなどを理由として挙げた。
安倍首相が未来志向の談話を発表する意向を示していることから、有識者会議では今後、日本が取り組むべき課題について提言した。高校での近現代史の必修科目新設、政府開発援助(ODA)の増額、自衛隊の積極的な国際平和協力活動への参加など、具体的な政策に踏み込んだ。
また、防衛費の水準についても再考を促した。三木武夫内閣が提唱した防衛費を国民総生産(GNP)の1%以内とする考え方は、中国の軍事費が膨張していることを考慮すれば「妥当性の検討も必要になろう」とした。
これらを踏まえ、今後の日本は「非軍事分野を含む積極的平和主義の歩みを止めず、これを一層具現化し、国際社会の期待に応えていく必要がある」とし、米国の国力が相対的に低下するなかで、さらに大きな役割を果たすべきと強調した。
安倍首相は6日午前、広島で会見し、70年談話は歴代内閣の立場を引き継ぐことが前提と述べ「先の大戦への反省、戦後の平和国家としての歩み、今後、日本としてアジア太平洋地域や世界のためどのような貢献を果たしていくべきか、世界に発信できるものにする」と語った。[東京 6日 ロイター]
(梅川崇、伊藤純夫 編集:田巻一彦)