デフォルト(債務不履行)の危機が迫るギリシャで、EUからの金融支援が6月末で打ち切られて経済破綻の恐れが強まる中、アレクシス・チプラス首相は6月28日、ギリシャ国内の銀行と株式市場を29日休業すると発表した。ギリシャ政府は国民に対して、金融機関から引き出しや交換ができる1日の現金の上限を60ユーロ(約8000円)にする資本規制を導入すると決定した。
チプラス首相の声明は、ヨーロッパ中央銀行(ECB)が、ギリシャの銀行に対する緊急流動性支援(ELA)枠の引き上げを見送り、緊急融資を拡大させない意向を表明した後に発表された。チプラス首相は、「ギリシャの銀行から、残された資産を流出させないための手段を取らざるを得ないようにした」と、ECBを激しく非難した。
ATM(現金自動預払機)が設置されている場所でどのような資本規制のコントロールや制限がかかっているかは不明だが、すでに現金を引き出そうとする人々の長蛇の列ができている。AFP通信によると、26日以来、すでに10億ユーロ以上の現金がギリシャの銀行システムから引き出されている。
「今日とにかく現金を引き出そうと思っていました。今はこれからの数日間安心していられるくらいの現金を引き出すつもりです。ATMには現金がなくなると思います。すでにいくつかの場所でそうなっているみたいですし」。ATMの列に並んでいた男性はハフポストギリシャ版に対してこう答えた。
もう一人の女性は、「そう、私は銀行の倒産が怖いんです。EUから離脱してしまったら、ギリシャは孤立して強引な通貨の切り下げだって起きるかもしれませんから」と語った。
ようやく飛行機から降りてきたら、すでにATMにも長い列が。
28日の出来事は、現在進行中のギリシャの金融危機が深まるのではという警戒すべき事態だ。ギリシャの左翼政党Syriza(急進左派連合)とトロイカと呼ばれる、債権団の欧州委員会、ECB、国際通貨基金(IMF)のいわゆる「トロイカ」が緊迫した交渉を行っている中でこうした危機は深まるばかりだ。
チプラス首相は28日、Twitterで国民が安心するよう呼びかけ、「国民の銀行の貯蓄は完全に保証される」と述べた。
また、チプラス首相は27日、金融支援の期限とトロイカに金融支援プログラムの延長を問う国民投票を行うと宣言した。国民投票は7月5日に行われる予定だ。
ユーロ圏の財務相会合では国民投票案を拒否した。これによってギリシャはデフォルトに陥り、ユーロ圏から離脱する可能性が非常に高くなった。
ギリシャのアレクシス・チプラス首相が6月27日、アテネの国会で政府が国民投票の実施を提案する緊急議会に参加した (AP Photo/Petros Karadjias)
ギリシャのIMFに対する16億ドルの返済期限は30日に迫っている。金融支援の延長と、今後支払わなければならない債務のためにギリシャに72億ユーロの支援をめぐるギリシャと債権団との協議は数カ月間に及んだ。トロイカはギリシャに対し、公的支出の削減や経済改革など厳しい緊縮財政を求めたがギリシャは拒否、その結果、協議は断続的に中断した。
仮にギリシャが30日の支払期限に間に合わずデフォルトに陥った場合、ギリシャ経済に壊滅的な影響を与え、ユーロ圏離脱という道筋ができてしまう。
ギリシャとEUの旗がアテネの建物の上でなびいている。(ANGELOS TZORTZINIS/AFP/Getty Images)
ロイターによると、アメリカのバラク・オバマ大統領とギリシャのアンジェラ・メルケル首相は28日、ギリシャ危機に関する協議を行った。ホワイトハウスによると、両者は、ギリシャがユーロにとどまることが「極めて重要だ」との意見で一致した。
欧州委員会のジャン・クロード・ユンケル委員長は、29日にギリシャ金融危機に関する記者会見を行うと表明したが、トロイカのある高官は、期限前の返済合意は依然として可能だと述べた。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
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