ハフポストの英文記事から、最新の時事英語や知って得するキーフレーズをピックアップしてご紹介します。
執筆者:丸橋 勇
補聴器は、今ではそう珍しいものではありませんが、普通の補聴器では不十分な人がいます。そのような人の助けとなっているのが、埋め込み型骨導補聴器です。今回題材にしている記事は、日本で初めてこの新型補聴器を装着した伊藤有紀子さんの話です。
【例文】
Yukiko Ito on How a Hearing Aid Changed Her World
[以下抜粋]
Yukiko Ito has bilateral microtia, a congenital condition which means that her ears aren't fully formed. As a teenager she became the first person in Japan to be fitted with a bone-anchored hearing aid (BAHA), and has since worked to raise awareness around both the device and microtia itself.
Microtia affects approximately 1 in 7,000 children worldwide. It can be unilateral or bilateral; the former affects one ear only, the other affects both. While people with microtia aren't usually entirely deaf, their hearing is typically significantly impeded.
<中略>
Having the aid fitted completely changed how Yukiko herself experiences the world. Overwhelmed in particular by being able to hear music clearly for the first time, she was inspired to take singing lessons.
"I always really liked to listen to music, but after I changed the hearing aid the world changed, including music. This is my motivator to play."
Together with some friends who also have microtia, Yukiko formed a band and they put on a live show to express what being able to experience music meant to them.
【今週のポイント】
entirely deaf
「完全に耳が聞こえない」の意味。
deafという単語の使い方がやや難しいので、注意してください。理由は、聴覚障がい者の英語の総称にある。一時期、聴覚障がい者はhearing-impairedと称されていたが、その時期においてdeafは不適切とされた。しかし、聴覚障がい者が、自分たちはimpaired(障害のある)ではないという反発から、1990年代には、deaf and hard of hearingという別の表現が使われるようになった。
今では、それぞれの単語は、下記のように使い分けられている。
Deaf:大文字のDで始まる場合は、社会学的な表現で医学的にろう者や難聴の人で、手話を使用するコミュニティに所属する人。
deaf:医学的な用語で、聴覚がほとんど機能しない人をいう。集合名詞(the deaf)の場合、医学的な聴覚障がい者をいうが、上記のDeaf Communityに属するとは限らない。
hard of hearing:難聴の人で、手話を使わずに口頭で会話する人。
hearing impaired:この単語は、今では聴覚障がい者に適用されていない。Hearing impairedは、医学的な状態で、決して聴覚障がい者の集合名詞として使ってはならない。
【その他のキーフレーズ】
bilateral microtia
「両耳の小耳症」の意味。
bilateral, unilateralは、しばしば国際政治や経済等で使われる用語であるが、この場合は、医学用語なので、それぞれが「両耳の」「片耳の」になります。
congenital condition
「先天性症状」の意味。
fitted
「手術を受けて装着した」の意味。
bone-anchored hearing aid (BAHA)
「埋め込み型骨導補聴器」の意味。
raise awareness
「認識を高める」の意味。
impeded
「妨げられている」の意味。
experiences the world
「世の中の感じ方」の意味。
【今回の例文の仮訳】
伊藤有紀子さんが語る、補聴器がいかに自分の世界を変えたか
伊藤有紀子さんは、先天性症状の両耳の小耳症のため、両耳の形成が不完全である。10代のころに、日本で初めて埋め込み型骨導補聴器の手術を受けて装着し、それからその装置と小耳症両方の認識を高めるための活動を行ってきた。
全世界で、約7000人に1人の子供が小耳症である。片耳と両耳の場合があり、前者は片耳だけに症状が現れて、後者では両耳に症状が出る。小耳症にかかっている人は、一般的には完全に耳が聞こえないわけではないが、聴覚はかなり妨げられている。
<中略>
補聴器を装着することによって、有紀子さんの世の中の感じ方が完全に変わった。とくに、音楽を初めてはっきり聞こえるようになったことに圧倒されて、歌のレッスンを受ける気になった。
「昔から音楽を聴くのが好きだったけれど、補聴器を変えてから音楽を含む私の世界全体が変わった。私にとって、歌う意欲を引き出してくれるものです」
同じ小耳症患者の友人と共に、有紀子さんはバンドを組んでライブショーをすることによって音楽が経験できることの意味を表現している。
執筆者
丸橋 勇(フリー通訳・翻訳業)
同時通訳者だった父親の関係で幼児期から10年間米国滞在。慶応義塾大学文学部。外資系企業等の勤務を経て、26歳で独立し以来約30年間フリーの通訳・翻訳家として活躍。主な業務内容は、ビジネス系・技術系・学術系通訳及びドキュメントの翻訳。
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