2015年6月4、5日に、ポルトガルのリゾート地カスカイスで「世界海洋サミット」が開かれた。サミットでは、近年大きな問題となっている、海上を漂流するプラスチックゴミについての話し合いが行われたが、その中でエレン・マッカーサー財団のアンドリュー・モレット代表が、海上を漂っているプラスチックごみは「氷山の一角」にすぎないと指摘した。
これを裏付けるデータが、2015年2月に「サイエンス」誌に掲載された論文で紹介されている。この論文によると、海底に沈んでいるものも含めると、世界中の海のプラスチックごみの総量は、約1億3000万トンにもなるという。しかもその量は毎年約500~1300万トンずつ増えているというのだ。
このままだと、今後10年ほどでプラスチックごみの総量は2億5000万トンにまで近づくことになり、この量は「海にいる魚3トンにつきプラスチックごみ1トン」の割合になるとアメリカの海洋環境保護団体「オーシャン・コンサーバンシー」は伝えている。
また、サイエンス誌の論文は、もう一つ興味深い事実を明らかにしている。海に新たに流れ出るプラスチックごみのうちおよそ半分が、中国・インドネシア・フィリピン・ベトナム・スリランカの5カ国から排出されているというのだ。
オーシャン・コンサーバンシーで海洋保護政策を担当するエミリー・ウォグロム氏は、「ゴミのない海のための同盟」のメンバーと、この5カ国が出すゴミ問題の解決に向け取り組んでいる。「ゴミのない海のための同盟」は、オーシャンコンサーバーシーのプロジェクトの一つで、科学者や環境保護団体、それにコカコーラなどの企業で構成されている。
彼らはプラスチックごみの問題の原因と対処法をまとめたレポートを2015年9月に発行する計画だが、5カ国が抱える問題を解決することで、まず問題の半分に対処するという。
彼らの調査によれば、5カ国はそれぞれ異なる抱えているようだ。たとえば中国の場合、主な問題はごみ収集のインフラ不足にあるという。ウォグロム氏によれば、中国で回収・処理されているゴミの量は、全国で平均約40%で、地方では4~5%だ。これを解決するには、廃棄物を管理するシステムを整備して、プラスチックごみが海や川へ流れ込まないようにする必要がある。
一方で、フィリピンの場合はすでにごみ収集のシステムが確立されているが、ゴミを収集したトラックの多くが、ごみを河川などに捨ててしまうのが問題になっている。廃棄物処理場に運ぶと料金を支払わなければいけないからだ。また、たとえごみがごみ処理場の収集されたとしても、多くの収集所が川や海の近くにあるため、野外に集積されたゴミが川や水路へ流れ込むことになってしまうという。
「ごみ問題は地方自治体の問題ととらえられがちですが、海のごみは、ごみが地球全体の問題であることを教えてくれます」と、ウォグロム氏は語る。「まずはグローバルレベルで資源と政治力を生かす方法を考え、それからローカルな問題に目を向けていくつもりです」
環境問題に取り組むイギリスの「プリマス海洋研究所」のスティーヴン・デ・モーラ代表も、問題解決に必要なものは政治的な取り組みだと話す。
「問題を解決するための技術的な壁はないと思います。足りないのは、問題を解決しようとする政治的意志と経済的投資です」
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
[日本語版:水書健司/ガリレオ]
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