「集団的自衛権は違憲です」――6月4日の衆院憲法審査会で識者として呼ばれた憲法学者3人が、全員、集団的自衛権の行使にノーを突きつけた。この事態に菅義偉官房長官は『違憲じゃない』という憲法学者もいっぱいいる」と述べている。
この会はもともと、立憲主義について各党が推薦する有識者から意見を聞く場だったが、民主党の中川正春元文部科学相が集団的自衛権について質問したところから議論が発展した。今国会で安保関連法案の整備を進めようとしている政府にとって、与党が推薦した識者からも「違憲」とされたのは痛手だ。
3名の識者は、集団的自衛権について以下のように述べている。
自民党、公明党、次世代の党が推薦した、早稲田大学法学学術院教授の長谷部恭男氏は、「集団的自衛権の行使が許されることは、従来の政府見解の基本的論理の枠内では説明がつかず、法的安定性を大きく揺るがすもので憲法違反だ。自衛隊の海外での活動は、外国軍隊の武力行使と一体化するおそれも極めて強い」と述べました。
民主党が推薦した、慶応大学名誉教授で弁護士の小林節氏は、「仲間の国を助けるため海外に戦争に行くことは、憲法9条に明確に違反している。また、外国軍隊への後方支援というのは日本の特殊概念であり、戦場に前から参戦せずに後ろから参戦するだけの話だ」と述べました。
維新の党が推薦した、早稲田大学政治経済学術院教授の笹田栄司氏は、「内閣法制局は、自民党政権と共に安全保障法制を作成し、ガラス細工と言えなくもないが、ぎりぎりのところで保ってきていた。しかし今回の関連法案は、これまでの定義を踏み越えており、憲法違反だ」と述べました。
(憲法審査会 全参考人が「安保関連法案は違憲」 NHKニュース 2015/06/04 14:21)
3氏はいずれも、集団的自衛権に基づく後方支援にも否定的で、長谷部氏、小林氏は「(武力行使との)一体化」と表現したほか、笹田氏も「大きな疑問」としている。
また朝日新聞デジタルによれば、菅官房長官の「『違憲じゃない』という憲法学者もいっぱいいる」という発言に対し、小林氏は審査会後に「日本の憲法学者は何百人もいるが、(違憲ではないと言うのは)2、3人。(違憲とみるのが)学説上の常識であり、歴史的常識だ」と言い切ったという。
野党は5日に再開する衆院平和安全法制特別委員会での審議で、この審査会での識者による「違憲」判断を追い風に、攻勢を強める方針だという。
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