主に中東で猛威を振るっていたウイルス性感染症、中東呼吸器症候群(MERS、マーズ)の感染者が、韓国で拡大している。5月20日に初めて感染者が確認されて以来、次々と増え続け、韓国保健福祉部が30日までに確認したのは15人にのぼる。
MERSは2012年に初めて確認された、新種のコロナウイルスによるとみられる感染症。日本の厚生労働省は発熱やせき、息切れなどの症状が出て、高齢者や他の慢性疾患のある人で重症化することもあるとする。サウジアラビアでは2014年6月、死者が282人にのぼったとの報道もあった。日本の感染者は31日時点で確認されていない。
韓国で最初に感染が確認されたのは、60代の男性。これまでに確認された15人は、男性の親族と、男性が感染確認前に入院したり、治療を受けたりしていた病院の入院患者と医療関係者、見舞いに訪れた人だ。
韓国では、政府の対応を疑問視する声が上がっている。
何よりも、初期対応の失敗が最も大きい。 最初の患者が20日までどう行跡したのか綿密に追跡できず、接触者を把握できなかった防疫態勢の不備が露呈した。申告しなければ罰金を課す方式では、むしろ患者が事実を話さずに潜伏すると強調する。感染学会の関係者は「政府の初期対応は完全に失敗した」として「専門家ではない官僚の疾病管理対応策で、責任を回避するために現実に合わないマニュアル通り動き、感染の心配はないと誤って判断した結果、このような問題が生じた」と指摘した。(朝鮮日報 2015/05/30)
専門家によると、MERSは患者の家族と医療スタッフの感染症を最も注意しなければならない。しかし、現在までの状況を見ると、家族と医療スタッフだけでなく、同じ病室に滞在した人が陽性判定を受けた事例が続々と明らかになっている。隔離などの措置が適切になされていない可能性が指摘されている。
特に中国で陽性判定を受けた韓国人患者の男性は、韓国内の病室で感染者を見舞った後、症状が表れて診察を受けたにもかかわらず、保健当局は特別な措置を取らず、11日間普通に生活し、出国したことが明らかになった。
聯合ニュースによると、この男性は、感染患者の病室を訪問した3日後、発熱などの症状が発生して22日と25日に病院の救急治療室で治療を受けたが、医療スタッフにも申告しなかった。この男性は、医療スタッフの引き止めにもかかわらず、26日、香港を経由して中国・広州に出張した。
韓国政府はようやく、この男性と同じ飛行機に搭乗した乗客や乗務員、医療スタッフ、職場の同僚、空港職員らを隔離する措置に乗り出した。国会保健福祉委員会所属の与党セヌリ党キム・ミョンオン議員は28日、MBCラジオで「今回のMERS拡散を招いたのは、初動対応が問題だったということ」として「保健当局と医療機関の対応が不十分だった」と批判した。
この記事はハフポスト韓国版に掲載されたものを翻訳、加筆しました。
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