「開かれた議会」の実現を掲げ、若手が中心となって少数会派の議員10人が結成した新会派「みなと政策会議」をめぐって紛糾が続いていた東京都港区議会。5月26日、27日に開かれた臨時議会で、正副議長や常任委員長などのポストが決定した。その結果、第二会派に躍進したはずの新会派の役職はゼロ。全てのポストを自民、公明、共産の既存会派が独占することになった。
これまで、新会派に対して、第一会派の自民、新会派結成により第三会派となった公明、第四会派の共産が猛反発。自民と公明は、2001年から会派の人数によって正副議長ポストを割り当ててきたドント式の慣例を覆し、選挙で決定するという異例の事態に発展していた。その上、少なくとも過去40年にわたってドント式で選出されてきた委員長ポストまで選挙を実施。区民の付託を受けた区議34人のうち約3割にあたる新会派の区議10人が、議会運営の中枢から徹底的に排除された形だ。
そもそも新会派結成の背景には、自民の議長(当時)が、区議に対してメディアの取材を受けたら報告するよう、言論統制ともとられかねない異例の通達を出すなど、少数会派や若手区議らの情報発信の是非があった(詳細はこちら)。港区議会は、有権者のあずかり知らぬところで起きている地方議会の異常事態の縮図を見るようでもある。その舞台裏を取材した。
■紛糾した代表者会議の果て、伝統のドント式を止めて正副議長選挙に
区議会の運営方針などを各会派の代表がすり合わせる代表者会議。港区議会では5月11日から5月18日まで4回にもわたって開かれたが、「自由な政治活動が保障された、開かれた議会を求めていく」ことを掲げた新会派に対して、既存会派は「ポスト欲しさの数合わせ」などと激しい批判を繰り返していた。
慣例では、第二会派が副議長ポストを得ることになり、公明が担当することが多かった。しかし、従来のドント式では新会派が副議長ポストを得ることになる。自民、公明は「新会派との信頼関係が築けない」などの理由から、選挙による正副議長の選出を強く主張。新会派と、新会派には否定的だがドント式は踏襲したい共産からは異論が出ていたが、正副議長や委員会ポストをどう決めるかの話し合いはまとまらず難航、選挙で選出するという方針に固まった。
しかし、共産は臨時議会までに、新会派に民主の4人、維新の2人、社民1人が参加していたことから、会派ではなく政党ごとにポストを配分することを提案。自民、公明、共産、民主、維新で役職を分けられるドント式を各会派に打診していた。
これに対し、「主義主張の違う政党の議員が入っていても、会派として統一した態度を取らなければならない」と代表者会議で既存会派から強く求められていた新会派は、政党の立場を優先するのではなく、会派として筋を通して行動すべきだと結論。この提案を断った。この対応に納得できない複数の議員が別の会派を立ち上げようとする動きもあり、一時は新会派の足並みが乱れたが、現在は会派内の話し合いによって当初の10人で会派を継続している。
■なぜ新会派は正副議長選で自公に投票した?
こうした紆余曲折を経て、5月26日に正副議長が選挙で決定。議長は自民のうかい雅彦区議、副議長は公明の近藤まさ子区議が選出された。実は、新会派はこの選挙で、対立していたはずの自公の正副議長に投票している。新会派の清家あい幹事長は、その理由をこう語る。
「私たちは、『各自の思想・信条・言論の自由を最大限尊重し、多様性を重んじる』ことを目標に会派を立ち上げましたが、対立したり、混乱を招いたりすることが目的ではありません。各会派と協力していかなければ、今後の議会運営は成り立たない」
新会派が正副議長の候補者を立てたとしても、多数決によって結果は変わらなかったというのがおおよその見方だ。ここで会派同士の禍根を残すよりは、今回は協力する姿勢を示した方が、今後、新会派の政策を議会で実現させるためには有効だろう。
その翌日、5月27日に開かれた5回目の代表者会議で、清家幹事長は港区議会の伝統でもあるドント式を守るために、「うちの会派にポストはいらないので、委員会ポストはドント式で決めてほしい」と訴えたが、結局は選挙で10ある正副委員長ポストは決まった。フタを開ければ、ドント式ではなかったものの、自民5、公明3、共産2がポストを独占。新会派と一人会派には「ポストゼロ」という結果になった。
新会派にとっては厳しいスタートになったが、清家幹事長は「ポストはありませんが、方政治での活動実績に贈られるマニフェスト大賞を会派として取れるぐらい、がんばろうと言っています」と話す。また、新会派では、議員間の活発な議論を促しす目的で、全国の地方議会で広まっている「議会基本条例」の提案などを目指していくという。
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