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「羊を数えてはいけない」「寝不足は太る」−−睡眠学者が教えてくれた〝眠り〟に関する6つの真実。

人生の3分の1は睡眠。できるだけ質のよい睡眠をとり、眠っている間も心地よく過ごしたい。そこで、睡眠のプロである白川博士にお話を伺ったところ、驚くべき事実がわかった。
Two tired young lambs curled up and resting together.
Getty Images/iStockphoto
Two tired young lambs curled up and resting together.

人は、今日も眠るし、明日も眠る。人生の3分の1は睡眠なのである。人間が、たとえば80歳まで生きるとした場合、26年間も眠って過ごしていることになる。だから、できるだけ質のよい睡眠をとり、眠っている間も心地よく過ごしたい。

眠りについて研究している全米睡眠財団(NSF)の国際調査によると、米国、カナダ、メキシコ、ドイツ、イギリス、日本の6カ国のうち、日本人の平均睡眠時間は最下位だった。日本人は働き者だから、あまり睡眠をとらないのだろうか。

成人の適切な睡眠時間は7〜9時間とされている。しかし日本人の場合、睡眠時間は5時間台がもっとも多く、適切な睡眠時間(7〜9時間)を確保できている人は20%以下にすぎない。日本人の多くは"上質な眠り"以前に、慢性的な寝不足なのである。

睡眠評価研究機構 代表で、医学博士の白川修一郎氏

「身近なことなのに睡眠への関心が"もっとも薄い"のが日本人」――そう話すのは、睡眠の専門家で医学博士の白川修一郎氏。この聞き慣れない"睡眠学"、先進国の中で唯一根付いていない国が日本なのだという。

白川博士は、睡眠不足による影響について、高血圧、糖尿病、がん、うつ病といった数々の健康被害を示唆している。では、睡眠不足にならないために、どんなことに気をつけたらいいのか。眠りについて興味深い6つのお話を聞くことができたので紹介したい。

1. 寝る前のスマホが不眠の原因に

メールやニュース、SNSをチェックするために、寝る直前までスマホやパソコンを手放せないという人がいるかもしれない。スマホやパソコンの画面から発光されている「ブルーライト」は、睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌を抑える"日光"に似た性質があるため、脳が目覚め、入眠を妨げてしまうのだという。なにげない行為だが、不眠症を引き起こしてしまうリスクを伴う。

ベッドに横になってスマホでゲームをしてから寝るのが日課という人は要注意。寝る前のスマホの利用は、必要最低限に止めておいたほうがよさそうだ。

2. 眠れないときに羊を数えてはいけない

羊が1匹、羊が2匹......羊が158匹......。――どうやらこれはまったく意味がないらしい。それどころか、むしろ眠れなくなるのだとか。白川教授はこう説明する。

「眠れないときに羊を数えてはいけません。諸説ありますが、羊が群れている風景に馴染みのある国で、この習慣が始まったと言われています。なぜなら、意味のないものを数えるという退屈な作業は眠くなるからです。でも、日本人は羊を飼っている農家でもない限り、そうした光景はあまり目にしませんよね? ですから羊を思い浮かべるだけで脳が働き、興奮状態になってしまいます。なにも考えずにいることが眠りへの近道です」

日本人にとっては逆効果。言われてみれば、羊を数えて眠れたことは1度もない。

3. 睡眠不足は太る

「食べてすぐ寝ると牛になるぞ」と言われたことはないだろうか。たしかに食後すぐに眠る行為は肥満のもとだ。しかし、「寝る=太る」ということではない。

白川博士によると、睡眠不足になると食欲増進ホルモン(グレリン)が分泌され、一方の食欲抑制ホルモン(レプチン)の分泌が減少する。これにより空腹感や食欲が増進することで肥満になるリスクが約2倍にまで高まるという。

また、寝ている間に分泌される――高い脂肪燃焼作用のある――成長ホルモンが不足し、太りやすくなってしまうとのこと。つまり睡眠時間が短いことで、脂肪を燃焼させるせっかくのチャンスを、みすみす逃してしまっていることになるのだ。

「ダイエットしているのに、なかなか痩せられないという人は、一度ご自身の睡眠時間を見直してみるといいかもしれません」

4.干した布団はたたいてはいけない

布団を干したあと、布団たたきで勢い良くたたいてスッキリ。この習慣を長年続けてきた人も多いだろう。しかし、これは大きな間違い。布団を強くたたくと、中綿や繊維が壊れて埃となり、それが空気中に舞っているだけなのだ。

「人は寝ている間にたくさんの汗をかきますから、布団の中は、湿度80%にも昇ります。日本はただでさえ高温多湿な気候で、とくに布団はダニにとって快適な環境なのです。布団に潜むダニは干してたたいたくらいでは死なないのでたたいても意味がありません。むしろ埃や、ダニの死骸、人間のフケなどのハウスダストが舞い、それを私たちが吸うことでアレルギーを引き起こしてしまいます。布団についたこれらのごみを取り除くには、布団クリーナーで"吸う"のが一番です」

「わたしは20年ほど前から"叩かずに掃除機で吸いなさい"と言い続けているんですけどね(笑)。最近は便利な布団クリーナーが出てきて、人気があるようなので、ようやく理解されてきてきたのかなと思っています」

5.睡眠不足(5時間未満)が2日以上続くと危険

「寝不足運転は飲酒運転よりも危険」――白川博士は警鐘を鳴らす。

寝不足で頭がボーっとしてしまうことがあるが、これは脳機能が低下している証拠。寝不足とされる睡眠5時間未満が2日以上続くと、非常に危険なのだという。これは、注意維持、集中力、判断能力の低下により事故を起こしやすくなるため。実際に、交通事故の原因は、飲酒運転よりも、不注意による操作ミスや居眠り運転のほうが圧倒的に多いのだ。

「夜更かししていると、深夜のテレビショッピングでついつい余計なものを買ってしまうことがあるかもしれないけれど、それも判断能力低下のひとつですね(笑)」

6. ショートスリーパーは0.5%以下

「短時間の睡眠でも平気」な、いわゆるショートスリーパーと呼ばれる人たち。ショートスリーパーという体質は、遺伝によるものがほとんどで、実際には0.5%以下しか存在しないのだという。もし「寝なくても平気だよ」と言っている人が周囲にいたら、それはただの"強がり"なのかもしれない。

とはいえ、忙しい現代人。十分な睡眠時間がとれない場合はどうしたらいいのだろう? 白川博士のアドバイスはこうだ。

「1日は24時間と決まっていますが、みなさん『朝起きてから1日が始まる』と思っていませんか? だから、忙しいと寝る時間が足りなくなるんですよね。そうではなく、寝るところから1日を始めてみてください。まず7時間しっかり眠ったあとに、残りの時間で仕事や家事をやり繰りするのです。そうすると自然と規則正しい生活が身に付いて、睡眠不足が解消されますよ」