アメリカの父親たちは、新しい「仕事と家庭のバランス」を模索しているようだ。母親が昇進や昇格とは縁が遠くなることを「マミー・トラック」というが、アメリカでは「ダディ・トラック」ができつつあるのかもしれない。
マミー・トラックの道を選ぶということは、女性が仕事と子育てを両立するために出世の道をあきらめることを意味する。ダディ・トラックも、父親たちが仕事と家庭のバランスをとるために、自分の意志で出世コースから外れることになる。
アメリカの市場調査会社「ハリス・インタラクティブ」とコンサルタント会社の「アーンスト・アンド・ヤング」が世界8カ国、9699人(そのうちアメリカ人は約1200人)の労働者を対象に行ったアンケートによると、アメリカの働く父親たちは仕事と家庭を両立させるために仕事を犠牲にする傾向が、女性よりも高かったという。
たとえば、アメリカ人男性の67%が「家庭のための時間を増やすために転職をした、あるいはそうするつもりがある」と答えたのに対し、同様に考える女性は57%だった。
また、男性の57%が「昇進をあきらめたか、あきらめてもいい」と回答したが、そう答えた女性は49%にとどまった。賃金に関しても「減給を受け入れる」と答えた男性は36%、女性は33%だった。
そして最も興味深いのは、男性の26%が「育児休暇の制度が充実した国へ移住してもよい」と答えたが、そのように答えた女性はわずか18%しかいなかったことだ。
「これは、伝統的な男女の役割が変わりつつあることを示す一例だといえます。男性と女性はより公平に役割を分担するようになっています」と、アーンスト・アンド・ヤングで多様性と包括性担当役員を務めるカーリン・トワロナイト氏はハフポストUS版に話してくれた。
また一方で、男性の方がキャリアを犠牲にしてもかまわないと考えるのは、女性より失うものが少ないからだ、ともトワロナイト氏は話す。つまり、男性は出世コースから降りても、また元に戻れるという自信があるかもしれないということだ。トワロナイト氏いわく「男性に吹く逆風の方が弱い」のだ。
父親と母親が共稼ぎをしながら子供を育てるのは、最近では普通のことになっている。アメリカ労働省の統計によると、1968年には、子供を持つ夫婦のうち共稼ぎの割合は40%で、女性が職場を離れるほうが一般的だった。しかし2014年には、共稼ぎの割合は60%になった。2000年代に入ってから成人したミレニアル世代だとその割合は78%だとアーンスト・アンド・ヤングの調査は明らかにしている。
こうした変化は父親たちが子育てや家事により多くの時間をあてるようになったことを意味する。アメリカの「2015年大統領経済報告」に引用されている経済諮問委員会のデータによると、父親たちが子供の世話や家事に費やす時間は、1965年には週に約7時間だったが、2013年には週に約16時間まで増えている。
一方で男性たちは、仕事と家族の間で心理的葛藤を抱えるようにもなっているようだ。共稼ぎ家庭の父親の60%が「仕事が家庭の妨げになったり、逆に家庭が仕事の妨げになったりして仕事と家族の間で葛藤を感じている」と大統領経済報告は伝えている。これに比べると母親たちが葛藤を感じている割合は低く、47%だ。
もっとも仕事と家庭の両立が難しい原因は、家庭だけではない。特に賃金が大きな問題となることを忘れてはならないだろう。アーンスト・アンド・ヤングの調査では、約3分の1の回答者がここ5年間で仕事と家族のバランスを取るのが一段と難しくなったと答えており、そのうち半数は賃金水準の停滞を理由に挙げている。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
[日本語版:水書健司/ガリレオ]