これまで国際的な学力調査で上位を保ってきたフィンランドは、教育の専門家たちの関心を集め、多くの国々から手本とされてきた。
そのフィンランドが現在、教育制度を改革し自国の教育を大きく変えようとしている。一体どのような改革なのだろうか?
フィンランドの学校では今後、数学や歴史といった個々の科目にかける時間減らしていく。代わりに取り入れるのが、広範囲の異なる分野にまたがったテーマを学ぶ方法だ。技術が発展し、グローバル化する社会で生きていくために必要なスキルを子どもたちに学ばせるのが狙いだという。
フィンランドの教育改革の3つのポイントをまとめた。
1.「実例に基づいた教育」制度を導入する
フィンランドの教育改革がスタートするのは2016年9月から。新しい国の教育課程の枠組みに基づいて授業の再編成を行う。首都ヘルシンキではすでに新教育課程を取り入れているクラスもある、とイギリスのインディペンデント紙は伝えている。
新教育課程は、1年間のうち少なくとも数週間は「実例に基づいた教育」を実施するよう義務づけている。「実例に基づいた教育」では、1つの科目ではなく、広範囲の異なる分野にまたがったテーマに焦点を当てて学ぶ。
インディペンデント紙が伝えるところによると、教師は歴史や経済を単一で教えるのではなく、例えばEUを授業で取り上げて、そこにEUにまつわる歴史や経済などを盛り込んで教える。教え方に関しては、学校や地域にある程度の自由裁量が与えられるそうだ。
この新教育課程の責任者のイルメリ・ハリネン氏は、技術化とグローバル化が進み、持続可能性の問題に直面する社会に対応する能力を生徒たちは身につけなければいけないと、フィンランド教育省のウェブサイトで述べている。
「世界で一番と言われるフィンランドの教育制度をなぜ変える必要があるのか、と聞かれることもありますが、教育を取り巻く環境も、社会が必要としている能力も急速に変化しています。その変化にあわせて教育も変えていかなければなりません」
またハリネン氏は、変化する世界についていくためには、特定の科目にだけ優れているだけでは不十分であり、生徒たちはあらゆる状況で自らのスキルや知識を活かせるようにならなければいけない、と説明している。
「数学や音楽に優れた才能を持っているのは素晴らしいことですが、それだけではもはや十分ではないのです」
2.生徒自身がともに授業を計画する
フィンランドの生徒たちは、新教育制度の計画作りに自らも携わり、そして自分の成果を評価をする。
これについては賛否両論があるようだ。3月26日付のワシントン・ポスト紙は「この改革が、教える側にとっても学ぶ側にとっても効果的でなく、フィンランドの教育を脅かすものだと見る教師もいる。しかし一方で、個々の科目を重視し、教師が一方的に指導するあり方を変えることは、教育に大きな変化をもたらすチャンスだと考える教師もいる」という、フィンランドの教育専門家パシ・ザールベルグ氏のブログを紹介している。
3.共同作業に重点が置かれる
新教育課程では、教室での生徒たちの座り方も変わる。これまでは教師が前に立ち、生徒たちはその前に並べられた席に座って授業を受けていた。しかし新教育課程では、生徒たちはいくつかのグループに分かれて授業を受ける。グループで座ることでコミュニケーション能力の向上をはかる、とインディペンデント紙は伝えている。
また、新教育課程では「学ぶことの楽しさ」が重視されている、とフィンランド教育庁のプレスリリースは伝える。
「新教育課程の柱となっているのは、肯定的な感情を生み出す経験、共同作業、他人との交流、そして創作的な活動を向上させる学習です」
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
[日本語版:遠藤康子/ガリレオ]
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