インディアナ州では、スコット郡を中心にHIV(エイズウイルス)感染者が急激に増えている。スコット郡ではかつて、性教育や生殖の健康促進に携わるNPO「家族計画連盟」が運営するクリニックがHIV検査を行っていたが、2013年にこのクリニックが閉鎖されて以来、HIV検査を受けられる施設がない。
このクリニック以外にも、2011年以降インディアナ州では4つの家族計画連盟の施設が閉鎖に追い込まれている。いずれもHIV検査を行っていた施設だ。閉鎖の主な理由は、州からの資金援助が削減されたために運営が立ち行かなくなったこと。当時、アメリカ国内やインディアナ州内では、中絶手術を行っているという理由で、家族計画連盟に対する抗議運動が繰り広げられていた。
ただ、閉鎖に追い込まれた5つの診療所はいずれもHIV検査は行っていたが、中絶手術は行っていなかった。現在インディアナ州は、かつてない規模でのHIVの流行に対処するために、診療所を慌てて立ち上げている。
「数週間前までスコット郡に検査施設がなかったということは、予防や検査への資金援助を打ち切ることが、深刻な公共衛生問題を引き起こすということをはっきりと示しています」と、家族計画連盟インディアナ州支部とケンタッキー州支部の副代表を務めるパティ・ストファー氏は述べている。
2011年に共和党主導のインディアナ州議会は、一部施設で中絶サービスが行われていることを理由に家族計画連盟への資金援助を止める法案を可決。この法案は後に連邦裁判所判事によって却下されたが、その後も州は家族計画連盟への財政支援を大幅に削減し続けた。
2005年は計3000万ドルあった家族計画連盟インディアナ支部への補助金は、2014年には1900万ドルにまで下がった。こうした資金援助の削減の結果、スコッツバーグ、マディソン、リッチモンド、ベッドフォード、ワルシャワの5都市にある診療所は、必要な医療技術を維持し続けるための費用をまかないきれなくなってしまったのだ。
5つの診療所が閉鎖になった一方で、家族計画連盟が行うHIV検査の件数は毎年増え続けている。インディアナ州とケンタッキー州に残る25の診療所で2014年に行われたHIV検査の数は8000件。前年に比べて1000件以上も増加している。もし、5つの診療所が閉鎖されていなかったら、もっと多くの検査が行われていただろう。
ストファー氏は、州南西部のスコッツバーグとマディソンの施設が運営を続けることができていれば、HIVの大流行を予防する重要な役割を果たしていただろう、と話す。
「現在、HIVの流行に対して、州の公衆衛生局は素晴らしい対応ができていると思います。しかし、今後インディアナ州の人々をHIVやその他の病気から守っていくために、州議会には公的健康への取り組みに適切な資金援助をして欲しいと思っています」
今回のHIVの感染拡大は静脈麻薬の使用が原因と見られており、感染拡大を受けてインディアナ州マイク・ペンス知事(共和党)は、非常事態宣言を発表した。そして感染拡大を抑えるためにこれまでは認めてこなかった「注射針交換プログラム」を一時的に実施することも決定している。
「注射針交換プログラム」とは、静脈注射で使った注射針を使い回してHIVなどの病気が感染しないよう、使用済みの針を交換してくれるプログラムだ。しかし、このプログラムは「麻薬を公認することになる」という反対の声もあり、ペンス知事は反ドラッグの立場からこの政策をこれまで認めてこなかった。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
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