[東京 1日 ロイター] - 任天堂がスマートフォン(スマホ)向けゲームに参入する。
提携相手のディー・エヌ・エー (DeNA)の守安功社長は1日、ロイターのインタビューに応じ「マリオ」など任天堂のキャラクターの強みを生かし、世界で数億人のユーザーが遊ぶヒットゲームを連打していく考えを示した。
また、現行のスマホゲームのヒットタイトルは、くじ引き方式の「ガチャ」に代表されるように、特定のユーザーから多くのお金を徴収するモデルが多い。ただ、守安社長は、任天堂と共同開発するスマホゲームは、地域や年齢層を限定せずに幅広いユーザーに受け入れられるものになる可能性が高いため、新しい課金モデルの構築にもつながるとの見方を示した。
<月商30億円超のヒットを>
――任天堂と共同開発するスマホゲームで、どの程度のヒットをねらうか。
「マリオなどは世界中にファンがいるので、世界で数億人が遊ぶゲームを目指す。なにか有力な1本の成功というよりは、任天堂には多くのキャラクターIP(知的財産)があるので複数のヒットタイトルを作りたい。そうした話は岩田さんとしている」
「売り上げベースでヒットとは月商10億円が1つの目安。まだ岩田社長と共通認識があるわけではないが、私の考えとしては、DeNAで最も大きなヒットは『怪盗ロワイヤル』の月商30億円。それは日本が中心だった。でも、任天堂のIPは世界で戦える。だから、それを超えるものは出していきたい」
―― ヒットはどのくらいのペースで出していきたいか。
「すべてのゲームに入魂するが、ぜんぶがヒットするかどうかは難しいのがスマホゲーム。だから、任天堂とは最初の1本がだめなら終わりという提携ではない。1本目からヒットしたらうれしいし、2本目、3本目と出していって、複数のヒットを出したい。最初からうまく行ったらどんどん出していくだろうし、『どうかな』と思えば、方法を変えて攻めていくこともある」
<広く・薄くの課金モデル>
――くじ引きに課金する「ガチャ」に、任天堂の岩田聡社長は否定的な見解を示した。
「ガチャについては、未成年への課金は慎重に考えなければならないし、ユーザーにサービスを誤認させてしまっては問題。ただ、青年ユーザーに納得してもらって使う分には価値のあるサービス。ガチャそのものに問題があるとは思っていない」
――ガチャを入れなければ売り上げは上がらないとの見方もある。
「日本のゲームアプリのランキング上位はガチャが入っているタイトルが多いが、北米の上位はガチャのタイトルは多くない。日本ではガチャガチャのように(くじ引きの)カルチャーが受けているが、北米をねらうならガチャでは多くの収入は見込めない。どんな市場に向けてゲームを出していくかを考えて最適な課金モデルを選択すればよい」
――任天堂との共同開発ゲームでは、どのような課金モデルを構築するか。
「まずはすごいと言ってもらえるゲームを作ること。そうしたゲームに合ったマネタイズの方法は何か違うものがあるかもしれないとは考えている」
「例えば『マリオ』など世界中で人気あるIPを使う場合、特定のコアユーザーにフォーカスするより、年齢層が広くて色々な地域で受け入れられるゲームが主流になる。数億人単位のヒットゲームになればマネタイズの工夫を難しく考える必要は特にはない。最初から課金の仕組みに頭を使うより、数億人に使ってもらう方法を考えるのが重要だ」
<ゲーム専用機との共存>
――任天堂が、なかなかスマホゲームに積極的になれなかったのは、キャラクターIPの価値が棄損することを恐れていたためだが、それはクリアしたのか。
「ゲーム専用機と同じゲームをそのままスマホに持っていけば操作性の違いなどで面白くなくなるかもしれないので価値を損なう。スマホゲームはスマホ用に新しく作る。岩田社長は、その整理がついたのだと思っている」
――岩田社長はゲーム専用機のこだわりを捨てていない。
「私自身、ゲーム専用機でしか感じられない体験はあると思っている。スマホは汎用機としてユーザー数が多いという利点はあるが、容量や操作性ではゲーム専用機に劣る。だから、スマホでできないことをゲーム専用機で提供すればユーザーには両方を楽しんでもらうことができるので共存できる」
――任天堂の会員サービスを共同開発する。スマホゲームのユーザーを専用機に呼び込む仕組みを入れ込むか。
「任天堂のサービスの詳細を私が言うことはできない。ただ、任天堂の構想は、ゲーム専用機だけでなく、スマホを含めた複数のデバイスで遊んでもらうメンバーサービスを作ることだと理解している。専用機の顧客がスマホで遊ぶ場合も、スマホの顧客が専用機で遊ぶ場合も、共通のIDであれば『架け橋』になる。そうしたものを実現する」
(村井令二、安藤律子)
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