東京都渋谷区が同性カップルに対し、結婚に準じる関係と認め「パートナーシップ証明」を発行する全国初の条例案が、3月31日の渋谷区議会の本会議で賛成多数で可決された。
この議決を受けて、性的マイノリティなどのLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)の生きやすい社会の実現に向けて取り組んできた有識者の声を紹介する。
■LGBTアクティビストの東小雪さん この条例が全国に広がるように
LGBTアクティビストで元タカラジェンヌの東小雪さんは、パートナーの増原裕子さんとともに4カ月前に渋谷区に移り住んできた。31日は、2人で渋谷区役所で本議会を傍聴。議決を受けて「仲間たちに感謝します」などと喜びを語った。
「仲間たちに感謝します。これまで取り組んできたみなさんに、ありがとうの気持ちでいっぱいです。今回、この条例に賛同する署名も、1万人以上集まりました。一人ひとりの友だちの顔が浮かびます。
今後は、この動きが全国に広がっていくことを願っています。先日、宝塚市長もLGBT支援の検討を表明されましたが、私は元宝塚ですし、市長にお会いしてお話させていただきたいと思います。
私たちは2人とも外見が女性なので、なかなかパートナーとしても認めてもらえておらず、入院したときなど様々な問題が生じます。家族として認められるということは本当にうれしい。区役所側の手続きが整ったら、すぐにでも証明書を発行してもらいに行きます。
異性であれ同性であれ、結婚して家族を持つということは変わりません。受け入れる社会の理解と、制度の課題がまだまだ残っているが、今後は同性のパートナーも結婚を選べるようになってほしいです」
■虹色ダイバーシティの村木真紀さん 条例はきっかけに“当事者の見える化“が進む
企業や自治体にLGBT関するコンサルティングを行うNPO法人・虹色ダイバーシティの代表、村木真紀さんは「これは国際ニュース」として、「条例がきっかけになる」などと今後の展望を語った。
「家族制度が根強く残る東アジアの国で、この条例が可決されたこと、これは国際ニュースだと思います。
これにより実際に、区役所の窓口の人や、事業者として店舗などで当事者の人たちに対応する人が、LGBTについて理解することにつながります。
2013年9月に「LGBT支援宣言」をした大阪市淀川区では、1年半の間、区の独自事業として取り組んできました。支援の宣言をしたことで、区の職員さんの意識が変わりました。当事者の存在が見えるようになって、LGBTがいることが当たり前になるんですね。淀川区では、成人式のパンフレットにも自然にLGBTの案内が入るようになっています。
今回の条例により、LGBT当事者の見える化が進み、「どう困るのか」といった課題も見える化していくでしょう。虹色ダイバーシティにも、事業者からの問合せが増えています。渋谷区の議論は、LGBTの理解につながる波及効果があったと思います。
条例は、最初は使い勝手が悪いかもしれないですが、これがきっかけになると思います」
■ グッド・エイジング・エールズ代表の松中権さん「セクシュアル・マイノリティを議論するきっかけに」
議会を傍聴していた認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表の松中権さんは、「午後半休をとって議会を傍聴しましたが、目の前で賛成の議員のみなさんが起立して条例が成立した瞬間、一瞬目の前で何が起きているのかよく理解できませんでした。でもしだいに実感が湧いてきて、条例が成立したことを噛み締めているところです」と感想を述べた。
また、松中さんは今回の条例成立には大きく3つのポイントがあると述べた。
「まず、同性カップルのパートナーシップを認める行政条例ができたことによって、病院での診療や、住居の賃貸などで、異性のカップルと同等とまではいかなくとも、同じレベルのサービスを得られることがあります。
また、あまり大きく報じられていませんが、LGBTを含むセクシュアル・マイノリティについて知ろうという、渋谷区民の意識改革が行われたことも大きなポイントです。渋谷区が公式に条例として定めたことで、セクシュアル・マイノリティの問題が公に存在していることが明らかになりました。
さらに、世田谷区、横浜市、宝塚市など、渋谷区と同様にパートナーシップ制度の導入を検討している自治体が議論を加速させるきっかけになると思います」
松中さんは、今回の条例成立が、セクシュアル・マイノリティを議論するきっかけとなることを期待しているという。
「これまで日本ではパートナーシップどころか、セクシュアル・マイノリティの問題は表立って議論されることはありませんでした。渋谷区の条例成立は、老若男女、そしてLGBTを問わず人権問題として理解と議論がが大きく広がっていくことを期待します。同性婚を認めるかどうかという議論は憲法の解釈をどうするかという問題にもなりますし、セクシュアル・マイノリティを知り、どのように関わっていくかという意識が全国的に広がっていくようになればと願っています」
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