Facebook社のニューヨークオフィスは、食に恵まれた職場だ。2014年に「Desimone's(デシモーネズ)」という広々としたカフェテリアをオープンし、社員たちは毎日おいしい食事を食べることができるのだ。
ここでシェフを務めるのは、「Blue Smoke」や「Eleven Madison Park」といったニューヨークの最高級レストランで働いてきた経歴をもつナサニエル・エクハウス氏。高級レストランの猛烈に忙しい厨房で働いてきた彼が、今はデシモーネズで、週5日、朝食・昼食・夕食を提供している。
「ホットフード」セクションで、行列を作って待つ社員たち。
このデシモーネズを筆者は2015年3月に訪ねた。目の前で肉を切り分けるサービスや、紅茶キノコが飲めるドリンクサーバーも印象的だったが、最も驚いたのは、最新のテクノロジーがほとんど取り入れられていないことだった。
エクハウス氏によれば、この社員食堂は意識的に「高校のカフェテリアのように」つくられているという。その理由は、社員同士の結びつきを高めるためだ。座席は学校のカフェテリアと同じように配置されていて、スタッフ同士がスマホを通してではなく、実際に顔を向き合わせて会話をしやすいようになっている。「デシモーネズでは、社員たちは仕事を忘れて一緒に美味しい食事をとり、交流をはかることができます」とエクハウス氏は語る。
こうした場所をつくることは、企業にとっても良い投資となることがわかっている。研究によれば、同じオフィスで働く人間同士の結びつきが強化されると、従業員たちの仕事の成果があがり、仕事に対する情熱も高まるという。デシモーネズはニューヨークのFacebook社の社員たちを、同僚から友人に変える手助けをしているのだ。
金曜日の夜遅くまで働いているときは、こういうスナックが恋しくなる。もちろん、平日の朝食でも大歓迎だ。
また、就業時間中に定期的な休憩をとることで創造性や集中力が養われるということや、リラックスしている時にはひらめきが起こる、ということも研究で示されている。ストレス解消の手段を会社のインフラとして組み込んでいることは、Facebookが成功している理由のひとつかもしれない。
さらに、カフェテリア形式であることの利点は、食べる人たちが立ち上がって歩き回ることだ。たとえそれがホットフードのセクションからワッフルのステーションに行くだけの距離であっても、ずっと座りっぱなしで仕事をする人にとって、少しでも歩くことは健康を維持するために大切なことなのだ。
ハーバード大学の研究によると、福利厚生のプログラムに1ドル投じることで、医療経費が3ドル27セント減り、欠勤の減少によって2ドル73セント相当の収益増加が見込めることが明らかになったという。
朝食の「肉」セクション
エクハウス氏によると、デシモーネズのメニューは6カ月前から準備されており、毎日変わるそうだ。社員を世界中から採用するFacebook社のオフィスはまさに「人種のるつぼ」だが、「食は感情や記憶と強い結びつきを持つ」という考えから、世界各国の料理もメニューに取り入れられていて、時にエクハウス氏は社員が故郷を思い出せるような料理を作る。たとえば、彼はフィリピン人のエンジニアを思い浮かべながら、豚肉とご飯を組み合わせたフィリピン料理を作るのだ。
筆者が訪れた日には、「ギリシャ」をテーマにした料理が提供されていた。皿の上にあるのは、タコのグリルとスパナコピタ(伝統的なほうれん草のパイ)。キッチンからはギリシャ音楽も流れていた。
また、さまざまな食の好みや主義への配慮もなされている。筆者が訪れた日には、ホットサンドイッチ・メーカーのパニーニ・プレスが幾つも並ぶ隣に菜食主義者用の「パストラミ」サンドイッチが置かれていた。このパストラミはビートで赤く染められた豆腐を原材料にしたものだ。それにサラダバーには地元で栽培された野菜が満載で、一日中補充されていた。
夢のようなサラダバー
ほとんどの料理はセルフサービスだが、これは「ニューヨーカーたちは、生活のあらゆる部分を自分でコントロールするのを好む」からだ、とエクハウス氏は説明する。
サルシファイ(西洋ゴボウ)や、エルサレム・アーティチョークなどの季節の野菜を組み合わせたサラダに、牛の肩ばら肉を加え、それにクッキー生地をトッピングしたソフトクリームを加えるなど、何でも自分の好きな組み合わせを選ぶことができる。
目の前で肉を切り分けてくれる。
それに、濃い緑の葉野菜などの野菜や果物、脂肪分の少ないタンパク質食品など、「脳の働きをよくする食品」も準備されている。研究によると、こういった食品を適切に摂取することで、仕事により集中できるようになるという。
ドーナツにしようか、それとも健康ドリンクにしようかと悩む必要はない。どちらも選ぶことができるから。
このFacebook社のカフェテリアから恩恵をうけているのはエンジニアだけではない。ここはシェフにも優しい場所なのだ。エクハウス氏は、この社員食堂のシェフになったことで嬉しいライフスタイルの変化があったと述べる。オリジナルのメニューを考えるのも楽しいが、なにより高級レストランで働いていたときは遅くまで働かなければいけなかったが、いまでは定時に帰って子供たちに会うことができる。
「毎晩子供と会えるのがうれしい」と、エクハウス氏はにっこり微笑む。
全ての企業が、このような贅沢な社員食堂を提供できるわけではないだろう。しかしもう少し小さな規模であれば、実現可能ではないだろうか。社員たちが働きバチとしてではなく、人間として知り合えるような楽しい空間を提供することは、どんな会社にとっても賢い投資だ。そこにちょっとつまめるようなスナックがあれば、さらに素敵な場所になる。
「どんな会社も、生産性を向上させ、最高の人材を雇い、そして社員たちが大きく満足できるような福利厚生を提供する方法を探しています」と、エクハウス氏は言う。「その3つの目標を全部まとめてしまうのはどうでしょう? それがこうした食堂なのです」
文末のスライドショーでも、Facebookのカフェテリアの写真を紹介している。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
[日本語版:丸山佳伸、合原弘子/ガリレオ]
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