3月13日、サッカー日本代表の新監督に就任したヴァイッド・ハリルホジッチ氏(62)が来日。都内のホテルで会見した。「負けるのが大嫌い」と話したハリルホジッチ監督は、「全員攻撃・全員守備」をコンセプトに、2018年のワールドカップ・ロシア大会を目指す。ハリルホジッチ監督が話した内容は以下のとおり。
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みなさんこんにちは。ここに来ることができて嬉しく思っております。日本ではサッカーが本当に人気があると思っています。
この2週間、日本サッカー協会から接触があり、ディスカッションをしてきました。そして会長初め協会の方々からのありがたい言葉を頂き、ここに来ることにしました。大仁邦彌会長、霜田正浩技術委員長、そしてみなさんと日本代表で何かを成し遂げたい。ここで仕事ができることを嬉しく思っています。もちろん、大きな責任があることも感じています。私はそのために来ましたし、大きなことを成し遂げようと思っています。もう一度、会長、技術委員長初め、私を呼んでいただいたことに感謝します。
日本以外の国やクラブからもオファーがありましたが、私は日本を選びました。
その理由は、私と同じメンタリティを日本の選手は持っていると思ったからです。厳しさ、規律、尊敬すること、真面目さ、いまサッカー界において大事なものを兼ね備えていると思ったからです。
日本代表はワールドカップ・ブラジル大会のあと、少し成績を落としていますが、日本には十分なクオリティと、成し遂げる力を持っています。
数年前はもっと良い順位でしたが、今、FIFAランキングは55位です。私はアルジェリア代表監督に就任した時、52位で、3年間で17位になりました。日本代表でも同じことができると確信していますし、そのために私は来ました。
第一の目標は2018年ワールドカップ・ロシア大会への出場。さらに、参加するだけでなく上を目指し、一次予選を突破してトーナメントに進出したいと思っています。この目標に必要なクオリティがすでに日本代表にはあります。
コーチングスタッフ、メディカルチーム、協会のスタッフの方と強いチームを作りたい。日本の方々といい仕事をしたい。サポーターの皆さんと共に戦いたい。そして日本はサッカーの人気が高いですし、ジャーナリストの方々、国民の方々のためにも戦いたいと思っています。
お願いは、少し時間を頂きたいということです。初めて代表監督をやった時も同じ状況でした。すぐに成功したわけではありません。少しの我慢、時間を頂ければ良い仕事ができると思います。
皆さんとお会いするのも今日が初めてです。ジャーナリストの皆さんとも良い関係、プロフェッショナルな関係を築きたい。お互いリスペクトしたいと思っています。代表がうまく行かなければ批判が出るのは当たり前。しかしそんな状況になったとしても、皆さんと共に戦うということが大事です。日本のサッカーを国全体で盛り上げていきたいと思っています。
では皆さんからの質問があると思いますのでよろしくお願い致します。
――日本サッカーの印象と課題は? どんなサッカーをすればトップレベルと戦えるか。
この2週間、いろんなビデオを見ました。ブラジル大会、アジアカップも全試合、分析しています。必ずしも結果はよくありませんでしたが、クオリティは高いと思います。少し自信を失っているのかもしれません。簡単なことも、難しいこともあるが、いくつかは向上させることができるでしょう。
さきほどお伝えしましたが、少し時間をください。それによって良い結果をお見せすることができると思います。私は負けるということが大嫌い。これまでの仕事でも、負けると少し具合が悪くなりました。いつも一言目に口にするのが、「勝利」です。世界一のチームとやるときでも、「勝つトライをしよう」といいます。トライをしないで負けてしまうというのが最悪なことです。私がここに来ている意味、勝利に対する気持ちを植え付けたいと思っています。これから3月に2試合ありますが、これは絶対に、2つとも勝利しないといけない。私はネガティブなことを言うのは嫌いなので、彼らを復活させたいと思っています。夏にはワールドカップの予選がありますので、まず、3月の2試合を、ワールドカップ出場に向けた最高の試合にしたいと思います。
――メンバー選考の基準は? これまでの選手がベースなのか、一から選ぶのか。
まだ、それほど代表を深く知っているわけではないということです。技術委員長といろいろディスカッションしました。代表選手も試合も見ています。最初のメンバーは今までと同じようになるかもしれません。ただ、怪我をしている選手もいます。ただ、そういう選手にも会いたいと思っています。皆のことをよく知っているわけではないし、私の意見、哲学、仕事の仕方を伝えたい。早く彼らと会って話がしたいです。
明日、明後日はJリーグを何試合か見ようと思っています。何人かについてできるだけ早く、長所を見つけたいと思います。最初は少し難しい仕事になるかもしれません。ただ、それはすぐ解決するでしょう。
――3カ月しかないが、チームを構築できるのか。
時間が必要です。スタッフ含め、たくさん仕事をしなければなりません。いろんなところに行く必要もあるでしょう。今よりも力を付けなければいけないですし、こういうデリケートな状況で仕事をしてきた経験があります。できるだけ早く、自信と勝利に対する意欲を選手たちに与えたいです。
まず選手と会って話すこと、ビデオも準備しなければなりませんし、オフェンス、ディフェンスの分析もしなければならない。もちろん、多くのアイディアを持ってきています。選手がそれに対しモチベーション高くやってもらうことを望みますし、まず、どうやってプレーするかということを受け入れてもらわないといけない。日本代表は規律正しく、大きなことを成し遂げることができると思っています。そこに関しては楽観的に考えています。
――攻撃的なものを目指しているのか。まずは守備なのか。哲学は?
サッカーには2つのシーンがある。ボールを持っている時と、持っていない時。
ボールがないときは全員でブロックを組んで守備します。高い位置、中くらいの位置、低い位置とありますが、全員が関わらなければならない。一人でも欠けてはいけません。ボールを持っている状態でも同じで、ビルドアップに関しても全員が関わらなければいけない。
私はもともとフォワードでした。全選手に期待したいのは効果的な選手であること。私はオフェンスが好きだしビルドアップの時も前に出てほしい。たくさんの人数を攻撃に関わって欲しい。スピードアップも大事ですし、ボールタッチ数もワンタッチ、ツータッチと制限していきたい。最後、相手のペナルティエリアでは、3人、4人と関われるようにしたい。
日本代表にはそういうクオリティがあるので、今持っているものよりさらに高いレベルに行けるでしょう。個人のクオリティもチームに影響するので、選手にはこういうことを話していきたい。
バルセロナやブラジルのようなサッカーをしたいと思う指導者がいるかもしれないが、我々は日本なので、日本代表としての戦い方をしたいと思います。
現代サッカーではフィジカル、テクニック、戦術、メンタル面で高いレベルが求められます。そこに到達しなければなりませんし、それに関しては楽観的に思っています。
とにかく、勝利することが大事。皆さんに勝利という言葉を届けたいと思っています。この考え方に関して、貢献する選手が必要です。チームがスターだと思っています。もちろん、個人的な能力をダメにしてはいけない。スター選手でも、チームのために仕事をしてもらわないといけない。どうやって組織的に戦うか、攻撃面も守備面も選手と個別に話したい。
これから、メンバーは毎回変わるかもしれない。今のところ、確定した選手もいなければ、スターティングメンバーも決まっていません。それは国内組、海外組関わらずです。まずはJリーグをしっかり見たい。能力の高い若い選手がいると聞いています。できるだけたくさんの選手に可能性を与えたいと思います。日本代表というのはすべての人のためのものです。ただ、そこに入る能力があるものが入る、ということだと思います。
――韓国、日本と過去対戦したが、アジアの印象は。どのくらいのランキングまで行く可能性があると思っているか。
アジアは各国、レベルが上がっています。ただ、サッカー強国と言われるヨーロッパや南米までは達していない。ここに来る以前にも日本のことは知っていました。今はすでに2週間、日本のために働いてきましたからもっと知っています。日本はもっと上のレベルに行けます。ただ、攻撃に関しても、守備に関しても、いくつかの点で向上させなければならない点がある。日本は数年前、FIFAランキングは20位くらいまで行きましたが、そのくらいは行きたいです。
ただ、そのためには時間と皆さんの我慢が必要です。全員の、たくさんの仕事が必要です。会長にもそれはお願いしました。スタッフがファミリーになることが大事。良い仕事をするために、良い雰囲気を作って欲しいと。良い関係づくりが良い結果をグランドにもたらすでしょう。
今よりも高いレベルにすることはできます。やるべきことをこのノートに書いています。今日は詳しい部分には入りませんが。本当に良い選手がいます。テクニックを持った選手がいます。たくさんのことができないけど、あることができるという選手もいます。そういう選手にもっと良いプレーができることを教えたい。どんな相手に対して、どんなスピードで戦ったらいいか。早く攻撃するだけでも駄目ですし、ポジショニングとか、リズムの変化、フェイント、そういう細かいことを教えていきたい。もともとフォワードだったので、経験を踏まえて向上させていきたいなと思います。
――チームの愛称は?
まだ日本に着いたばかりなので、日本で過去何があったのかはよくわかりません。ただ、早く仕事がしたい、そういう気持ちでいっぱいです。すでに会長と技術委員長は信頼してもらっていますし、代表の監督として、みなさんと仕事がしたい。みなさんの助けが必要です。
イビチャ・オシムさんと仕事をしたことも知っています。彼は私に、サッカーへの情熱を教えてくれました。日本の皆さんが仕事熱心でサッカーに情熱があることも知っています。私は幸せですし、ここでなにかを成し遂げられたらさらに幸せです。
一番嬉しいのは、「ありがとう」と言われること。ブラジル・ワールドカップのあとにアルジェリアに帰った時、アルジェリアの人がとてもリスペクトしてくれたんです。日本と比べるわけではないですが、アルジェリアは日本ほど結果を残したことがなかったので。日本でも同じようななことが起こって欲しい。
――出身地であるボスニア・ヘルツェゴヴィナは90年代、ユーゴスラビア内戦があった。どういう影響を受けたか。人生の哲学はあるか。
ボスニアにはデリケートな時代がありました。先日、妻が日本の歴史の本を買ってくれて、それ読みましたが、日本もやはり、難しい時代を送ったことを知りました。私個人も、困難な時代がありました。戦争のときに私はそこにいましたし、戦争で怪我をしました。国を守るために、たくさんの方が亡くなった。私の自分の仕事に関して、信頼を持ってやっていました。そのなかでサッカーを大好きになって、政治も宗教も話しませんが、ただサッカーのおかげで人生が素晴らしいものになりました。選手としても、監督としても、いろんなタイトルを取ることができました。私が集中しているのは日本代表監督としてより良い状態に持って行くことです。これに関しては熱意に満ち溢れていますし、向上心を持っていますし、何かを成し遂げたいと思っています。サッカーは魔法のようなもの。サッカーの情熱が、いろんなものに影響します。私の全てはサッカーに捧げています。
――日本の文化への印象、楽しみにしていることは。
日本食のレストランがパリにあるので、日本の文化を少しは知っていす。私の家族は私より寿司が大好きです。おそらく今晩は会長と委員長と日本の食事を取るでしょう。日本の皆さんが口にしているものを私も口にして、慣れていきたいなと思います。皆さんの文化、料理に関してもリスペクトしていきたい。それによって私の生活もうまくいくでしょう。多くの人が、日本について素晴らしい、と言っています。家族と一緒にいられない時間も長いので、難しい時期もあるでしょうが、離れているのでたくさん仕事ができます。日本のスペシャルな食事も試したいなと思っています。
――選手が自信を失っている、という話があった。どうやって取り戻すか。
まずは個人的に、そしてチーム全体に話をすること。
選手の何人かは、自分自身に対しての自信を失っています。勇気づけることが必要でしょう。私の仕事の多くは勇気づけ、自信づけ、喜びを持つこと、すでに良いプレーをしたということを忘れないように思い出させること。その経験はあります。選手は個人的な問題を抱えている場合はもあります。私のやり方を話して向上させたい。対話によって建設的な関係を築ければ、選手がもっと努力できるようになるでしょう。
――同じボスニア・ヘルツェゴヴィナ出身のイビチャ・オシムさんとはどんな関係か。会話や教えてもらったことがあれば。
オシムさんは今、健康を害しています。1年前も会っているし、アルジェリア代表監督をしている時にボスニア・ヘルツェゴヴィナと試合をしました。そのときにたくさん話をしました。ボスニア・ヘルツェゴヴィナではサッカーだけでなく、政治的にも素晴らしい仕事をしています。親友です。彼や彼の友人とコンタクトして、健康状態について聞いたりはしているが、最近は会っていない。
協会がオシムさんとコンタクトを取ったかどうかは知りません。いつか日本に来て、試合を見てほしいなと思っています。彼も見に来たい、と思っているのではないでしょうか。オシムさんは日本のことが大好きで、日本の話をよくしてくれましたから。
アリガトウ!
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