[ハルサ(イラク) 11日 ロイター] - イラク南部の砂漠地帯には、過去の戦争で使われた兵器の廃棄場がある。そうした古い兵器は過去何年も捨て置かれたままスクラップにされるのを待っていたが、最近では、過激派組織「イスラム国」との戦いで使われるべく息を吹き返している。
イスラム国は昨年6月、イラク北西部の広い範囲を電撃的に制圧。イラク軍は混乱に陥り、米国から供与されていた兵器の多くもイスラム国に奪われた。
イラク政府はイスラム国の進撃を食い止めるべく、国際社会に兵器などの増援を要請してきた。しかし、退役したイラク軍の元機械工であるマディ・スカイニさんにとって、その答えは自宅の近くにあった。
「自分が住んでいる場所の近くに、数多くの軍装備品が捨てられているスクラップ場がある。それはイランとの長い戦争を常に思い出させるものだった」というスカイニさん。イラクがイランと戦争していたのは1980─88年だ。
「そこを通り過ぎた時、ある考えが頭にひらめいた。捨てられた装甲車を修理すれば、ダーイシュ(イスラム国)との戦いに役立てられないか」
兵器廃棄場には、1990年のイラクによるクウェート侵攻とそれに続く湾岸戦争、2003年のイラク戦争で使われた銃や戦車も捨てられている。
フセイン政権時に軍に在籍していたスカイニさんは現在65歳。息子たちと一緒に旧式装甲車を修復し、シーア派民兵組織に提供する仕事に取りかかった。シーア派民兵組織は現在、フセイン元大統領の出身地であるティクリートをイスラム国から奪還すべく戦っている。
<スクラップ場から最前線へ>
スカイニさんの仕事場は、イラク南端の港湾都市バスラから約10キロ離れたハルサにある。「ティクリートとサマラの最前線では、(シーア派民兵組織である)ハシド・シャービの戦闘員の多くが装甲車不足のせいで命を落としていると聞き、このアイデアを思い付いた」と語る。ハシド・シャービは「人員動員」を意味する。
イラク軍とともにイスラム国との戦闘に参加するシーア派民兵組織は、寄せ集められるだけの武器や装備で最前線に立っている。そうした武器などの多くは、シーア派の隣国イランから供与されたものだ。
鉄をたたく音が鳴り響くスカイニさんの仕事場で修理チームを率いるのは、31歳になる息子のハイサムさん。父親の長年の経験が、車両の修理だけでなく、独自の改良を加えることも可能にしているという。
「兵員輸送装甲車に23ミリ機銃を取り付けて攻撃車両に変えた。いつでもティクリート近郊の最前線で使える」と語った。
翌日、車両はシーア派民兵組織の1つ「アリアクバル旅団」が活動するサマラ近郊に送られた。修理チームは現在、さらに3台の作業に取りかかっている。
(Aref Mohammed記者、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)