大塚家具「お家騒動」、プロキシファイトってなに? 父と娘の争い本格化

創業者で父の大塚勝久会長と長女の久美子社長が経営権を巡り争っている大塚家具の騒動。双方が、株主総会に向けて委任状争奪戦(プロキシファイト)を繰り広げている。
時事通信社

家具販売大手の大塚家具で、創業者で父の大塚勝久会長(71)と長女の久美子社長(47)が互いの退任を求めて争っている。双方が株主総会で役員人事案を出しており、3月27日に開かれる株主総会に向けて熾烈な委任状争奪戦(プロキシファイト)を繰り広げている。株主の賛成をより多く集めた陣営が経営権を握る見通しだ。

■プロキシファイト、過去には「村上ファンド」で注目される

今回の大塚家具の「お家騒動」で耳にする機会が増えた「プロキシファイト」という言葉。コトバンクは次の通り説明している。

経営陣などが株主総会に提案した議案の賛否について、他の株主に支持を訴えて議決権行使の委任状を集め、多数派工作をすること。日本での委任状争奪戦では、02年にアパレル大手の東京スタイルに、大株主の村上ファンドが大幅増配を提案したが、敗れた例などがある。銀行や取引先などとの株の持ち合いが減る一方、ファンドなど「モノ言う株主」が増えているため、今後も経営陣の提案に株主が異を唱え、委任状争奪戦に発展する例が増えるとみられる。

(2007-02-22 朝日新聞 夕刊 1総合)

委任状争奪戦=プロキシファイトとは - コトバンク

■株主総会の見通しは?

それでは、どちらが有利なのか。産経ニュースは、大株主のうち機関投資家は会社寄りとされ「久美子氏有利」との下馬評もある、と報じている。

現時点で久美子氏を支持するとみられるのは、前回の社長在任中から投資家向けの情報開示活動などを通じて親しい米投資ファンド「ブランデス・インベストメント・パートナーズ」。これに加え、創業家の資産管理会社「ききょう企画」も、久美子氏や「姉を母親のように慕う」(関係者)妹らが役員をつとめる。両者を合わせると、持ち株比率は約20%に達する。

一方、勝久氏の「基礎票」は、自身の約18%に妻や弟の保有分を加えた約22%で、久美子氏に匹敵する。しかし、残る大株主である生命保険などの存在が「久美子氏有利」の根拠となっている。日本の機関投資家は会社側につく傾向が強く、金融機関の一部から「久美子氏に理がある」との声も出ているからだ。

【大塚家具】株主委任状争奪戦が本格化 形勢逆転狙う会長側 - 産経ニュース 2015/03/07 10:01)

さらに大塚家具は10日、このブランデス・インベストメント・パートナーズから「株主総会で社長側を支持する」との書面を受け取った、と発表している

記者会見する大塚家具の大塚久美子社長(右手前)=26日、東京都千代田区 撮影日:2015年02月26日

■経営路線の違いが背景に

この泥沼化する「お家騒動」、根底には勝久会長と久美子社長との経営路線の違いがあり、双方のトップ交代劇はこれまで3度も繰り返されてきた。勝久会長は会員制を導入して接客を重視してきたが、一方の久美子社長は路線の転換を図り、カジュアルで気軽に入れる店作りを進めてきた。

2009年に社長に就任した長女・久美子氏は、購買スタイルの変化から「接客に客が抵抗を感じている」として、勝久氏の「従業員が付き添ってまとめ買いを促す」などこれまでの販売手法を批判。去年7月、その久美子氏に代わって、勝久氏が会長兼社長に就任したことで対立が表面化します。

ところが、2014年度の決算が4年ぶりに営業赤字に転じます。そこで、先月、再び久美子氏の社長復帰が取締役会で決定。これに勝久氏側は「突然のクーデターとも言える行動」と批判し、株主総会で久美子氏の退任を求める株主提案を提出するとしています。

骨肉相食む…大塚家具の“お家騒動” その背景は? テレ朝news 2014/02/26 16:35)

■父と娘、「水と油」の2人

ところでこの父と娘、異質でとけ合わないとの声もあるという。

別の関係者は「2人は、そもそも肌が合わない」と語る。勝久氏は、一介のタンス職人からのたたき上げで、大塚家具を上場企業に育て上げた立志伝中の人物。久美子氏は、旧富士銀行(現みずほ銀行)勤務や、経営コンサルタントを務めた経験もある才媛で、「頭で考えるタイプ」(同)。

【経済インサイド】大塚家具“泥沼内紛”招いた「父=職人気質」と「娘=現代才女」の水と油 - 産経ニュース 2015/02/20 07:00)

家具業界では、安くて品質の良い商品を提供するニトリホールディングスや、スウェーデンの家具販売大手「IKEA(イケア)」など、ライバルの新興勢力が着々と力を伸ばし、大塚家具の経営をめぐる環境は厳しさを増している。早期に健全な経営体制を確立しなければ、顧客離れが進むことにもなりかねないと指摘されている。

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