ドーナツやインスタント食品など美味しくてやめられない食べ物の「中毒」になった、という言い方をよく耳にするが、本当に特定の食べ物の「依存症」になるかどうかは、研究者の間でも意見が分かれるところだ。
しかし、ピザやチョコレート、ポテトチップス、クッキーなど脂肪や砂糖を多く含む三次加工食品(冷凍食品,調理済食品,製菓,嗜好飲料など)が様々な問題を起こす証拠が揃ってきている。
ニューヨーク州マウントサイナイ医科大学のニコール・アビーナ博士らが行った「食品依存」の最新研究によると、特定の食品に対する執着ぶりが、依存症の症状によく似ているという。この研究は、2015年2月に科学論文公開サイト「PLOS One」に掲載された。
研究では「イェール食物依存症スケール」を使って、504人の被験者たちにどんな食品が自分にとって「問題」になるのかを尋ねた。イェール食物依存症スケールで被験者は、「体調がおかしいと感じるまで食べ続けてしまう」とか「食べすぎによるだるさや疲労を感じる時間が長い」といった症状に自分がどれくらい当てはまるかを回答する。そして回答からその人にとって最大の問題となる食品は何かを探っていく。
研究グループは、集まった回答から様々な食品の得点の平均値を算出し、依存症に似た行動を「最も起こしやすい」食品から「最も起こしにくい」食品までの順位をつけた。結果は下の図の通りだ。
依存性が高い食べ物(左列)と、低い食べ物(右列)。評価は、1点の「まったく問題なし」から、7点の「きわめて大きな問題がある」まで。「依存性が高い食べ物」は、1位から、ピザ(4.01)、チョコレート(3.73)、ポテトチップ(3.73)。「依存性が低い食べ物」は、1位から、ディップなしのきゅうり(1.53)、にんじん(1.60)、ソースなしの豆(1.63)。
この図からも分かるように、精神的な苦痛や身体の不快感を最も引き起こす原因となったのは、高度に処理され、脂肪や砂糖を多く含む食品だった。これは血糖値を上げる程度を表す「グリセミック負荷」のレベルが最も高い食品でもある。
この結果は偶然の一致ではない、とアビーナ博士は言う。「高度に処理され、口あたりがよい食品は、薬物やアルコールの依存症と同じ様な行動を引き起こし、脳内の変化を起こしうることを示す研究結果がいくつかあります」
現在「食品依存」は、依存症の1つとしてまだ正式に認められていない。アメリカ精神医学会が出版する「精神障害の診断と統計マニュアル」の中で、これに最も近い概念は「摂食障害」だ。
アビーナ博士は15年以上にわたって食品への依存性を研究してきたが、特定の食品の食べ方と、その食品の特性(脂肪や砂糖が添加されているか、あるいは高度に処理されているかなど)の関係を調べた臨床研究は、彼女自身の研究が初めだという。アビーナ博士は、研究結果が肥満に悩む人々に新たな減量方法をがどのように減量の仕方を見直すきっかけとなることを望んでいる。
「この研究によって、肥満治療を改善することができるかもしれない」と、アビーナ博士は研究のリリースで述べている。「ただ単に特定の種類の食べ物の摂取を減らす方法ではなく、摂取を減らすために喫煙や飲酒、薬物使用を抑制する方法を採用すべきなのかもしれません」
今回の研究結果は、当たり前の結果に思えるかもしれないが、アビーナ博士は「依存してしまうのは特定の食品だけだ」と認識することは、重要な第一歩だと考えている。
「誰かがある食品に依存していると感じたとしても、現在はその症状に病名はありません。この研究によって、そうした症状を治療するのための情報を増やし、依存症に似た摂食障害を抱えた人々を助ける可能性があります」
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳(一部加筆修正)しました。
[日本語版:水書健司、合原弘子/ガリレオ]
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