世界銀行の調査報告によると、モンゴルでは現在国民の25%が遊牧民であり、いまでも広大な土地を移動する生活を送っている。しかし最近は、気候変動の影響によって環境が変化しており、従来の遊牧生活を維持していくことが困難になっているという。
モンゴルでは、過去30年の間に国土の25%が砂漠化し、約850の湖と2000本の川が枯渇したとされており、このペースのまま環境変動が続けば、何千年も続いてきたモンゴルの伝統的な生活は途絶えてしまうだろう。
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そんなモンゴルに迫る砂漠化と、自然環境の変化が住民たちに与える脅威をテーマにした写真集『未来の考古学(Futuristic Archaeology)』を韓国生まれの写真家イ・テソン氏が制作した。
この写真集の制作は、パリのある博物館を訪れたことがきっかけだった、とイ氏は説明してくれた。彼はその博物館に展示されていた、これまでに破壊された過去の文明にまつわる収集品を時系列に並べた「破壊と保存」という奇妙な組み合わせの「パラドックス」を目にし、衝撃を受けたという。
イ氏は、次のように説明している。「展示されていた収集品は、かつて属していた文明や社会を失うことで、本来の意味や機能を失っていました。モンゴルの遊牧生活も、人類によって引き起こされる気候変動により将来同じ運命をたどると思います」
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イ氏の作品では、砂漠化の危機にさらされた現代のモンゴルの大地の風景の中に、古い伝統的な生活をのぞき込むことができるような「展示物」が注意深く配置されている。
現実のモンゴルの砂漠の中に立てられた看板には、印刷された画像が貼り付けられていて、博物館の展示品やジオラマのような効果を与えている。いわば自然史博物館に展示されているマンモスのようなものだ。イ氏は、未加工の風景の写真と、博物館の展示品のような看板を並べて置くことで、衰退の危機にさらされているモンゴルの遊牧民の生活の不安定な状況を記録しているのだ。
「わたしたち一人一人が、地球温暖化の影響に対する責任の一端を担っています。現状を変えるための努力を怠ると、わたしたちは将来、その代償を支払うことになるでしょう」。科学的な事実とシュールレアリズム、そして過去と未来の風景をあわせて平面にしたイ氏の写真は、空想的な光景でありながらも、将来現実になる可能性が非常に高い世界を描写している。
イ氏の作品集には、ほかにも地球温暖化がもたらす影響を描いたものがある。『消え行くゴラマラ島の岸辺にて(On The Shore of a Vanishing Island, Ghoramara)』という作品集では、海面上昇によって25年間で島の半分が消失したゴラマラ島に現在も生活する人々が、残された故郷の島と並んでポーズをとる様子が収められている。
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文末の写真スライドショーでは、現代の大量消費・大量廃棄をテーマにしたクリス・ジョーダンの作品を紹介している。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
[日本語版:丸山佳伸、合原弘子/ガリレオ]
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