ジャーナリストの池上彰さん(64)は2月1日、過激派組織「イスラム国」が後藤健二さん(47)を殺害したとみられる動画を公開したことについて、「後藤さんの不存在は、日本のジャーナリズム界にとっても損失なのです」などと述べた。ハフポスト日本版の取材に応じた。後藤さんと海外で取材をした経験のある池上さんは、ショックを隠さなかった。
以下、池上さんのコメントを紹介する。
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後藤さんの悲報に言葉もありません。それなのにコメント取材を受けなければならない。辛い。でも、自分も現役の記者だったら、おそらく同じようなコメント取材を命じられていただろうと思うと、記者たちの取材を拒否するわけにもいきません。
私にとって、後藤さんは、紛争地取材の大先輩でした。ジャーナリスト歴だけで言えば、私の方が先輩なのでしょうが、戦場取材、紛争取材では彼の方が大ベテラン。リビアやレバノンでの取材でご一緒したとき、彼は、「リスクを冒すにはあまりに危険な取材」と、「リスクを冒す価値のある、そこそこ危険な取材」を峻別する力を持っていました。そんな彼がなぜ……という思いが付きまといます。
今回、朝日新聞記者が、外務省の勧告を無視してシリアに取材に入ったと、読売新聞と産経新聞が批判的に報じています。大新聞の記者が、「危険だから取材に入らない」という態度であったなら、誰が報じるのでしょう。だからこそ、後藤さんの不存在は、日本のジャーナリズム界にとっても損失なのです。
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池上 彰(いけがみ・あきら) 1950年、長野県松本市生まれ。慶応義塾大学卒業後、NHKに記者として入局。1994年から2005年まで「週刊こどもニュース」に、ニュースに詳しいお父さん役として出演。2005年に独立。2012年より東京工業大学教授。『伝える力』(PHPビジネス新書)、『おとなの教養――私たちはどこから来て、どこへ行くのか?』(NHKブックス)など著書多数。
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